新年度のスタートに向けて、最近のアメリカにおける社内評価制度について今回は書いてみたいと思います。ビジネスの流れそのものが輪をかけてショートサイクルとなりつつあるIT産業を中心としたテクノロジー業界では、今までは年に1回定期的に行っていた業績評価だけでは部下の従業員を上司はもはや適切かつ正確に評価することができないとして、年1回の評価制度をきっぱりと廃止して、上司は部下をいつでも評価することができる、「チェック・イン」と呼ばれる評価方式を採用し始めたIT企業がメディア上で話題になっていたりします。

 

そのようなニュースが流れますと、アメリカではもはや定期的な評価制度はすっかり廃れてしまって、ちょっとした企業であれば、いつでもどこでも社内で評価がなされているというような錯覚をもたれる方がいらっしゃるかもしれませんが、それはとんだ見当違いです。まず社内に今まで定期的な評価制度がなかった会社がそれを飛び越えてチェック・インを導入しようとしたところで、恐らく上手くいくはずもありません。社内にきちんとした評価制度をまずは自社で作り上げ、それを定期的に運用するところから始めなければ、上司も部下も評価に対する経験則や学習効果が生まれてくることがないからです。最初から評価制度が完璧であることはありえませんし、評価制度の運用については現実的にも試行錯誤の連続であるからです。

 

飛ぶ鳥を落とすような勢いのあるシリコンバレーにあるIT企業が始めた斬新な評価制度を含む革新的な人事制度がアメリカで主流になるというようなことはすぐには起こりませんので、このようなニュースに惑わされないことの方がはるかに重要です。そしてまずは年1回の定期的な評価制度を構築し、それを運用してみるとことから始めてみてください。その制度構築で使えそうなツールのひとつとして、「コンピテンシー」という評価のためのパフォーマンス・ファクターがあります。この場合のコンピテンシーというのは、安定した社内成績上位者が共通して持っている行動特性や思考パターンを意味しています。コンピテンシーは当然ポジションごとに違ってまいりますし、ExemptとNon-Exempt との間、さらに管理職と非管理職との間でも違いがあります。

 

それらコンピテンシーをポジションあるいは職務の階層別にクリアにして5つ前後のコンピテンシーを評価項目として抽出します。たとえば、社内セールスの場合ですと、Logical Thinking、Flexibility、Diligence、Asking Questions、Innovative といったようなところにコンピテンシーをおくわけです 。こうすることによって、そのポジションに必要とされる、そして推進されるべき強みの傾向がクリアになってきます。従業員にもシンプルに映ると思われますので、納得感も得られます。所詮、評価を受ける従業員自身が評価項目を理解あるいは納得しているのとしていないのとでは、パフォーマンス自体に大きな違いが出てきしまいますし、その評価も違ってきて当たり前です。従業員から支持を得られていないような評価制度はやはり長い目で見て失敗に終わることが多いです。

 

コンピテンシーの話を書きましたが、これ自体は1970年代にハーバート大学の社会心理学教授が提唱した概念で、決して新しい評価ツールでも何でもありません。ですが、長い年月をかけて企業の評価制度へと浸透し続け、今日では比較的シンプルで納得感も得られる優れた基本ツールのポジションを得るにまで至っています。最新の評価制度だといってIT企業から打ち出される新機軸に目を奪われるよりはまずは試してみたい身近なツールで、すでに多くの企業で導入済みにで証明済みのものはそれなりに存在しています。それらをまずは自社で試してみられて経験を積んでからでも新機軸を導入するのは遅くないと思います。コンピテンシーに関するご質問があれば、どうぞ直接、この私までご連絡いただけましたら幸甚です。

2018年12月26日

Ken Sakai

President & CEO

Pacific Dreams, Inc.

kenfsakai@pacificdreams.org

www.pacificdreams.org