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Newsletter : Issue No. 40

       翻訳トーク
2005年9月号  アーカイブ
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「翻訳トーク」 2005年9月号のごあいさつ

先月号の「翻訳トーク」では、 8 月中旬前に出張先の東京から戻り、郵政民営化の是非を国民審判に問う形で、衆議院解散を敢行し、党内の法案反対議員には、各選挙区に刺客まで仕立てて、断固徹底した選挙戦を行う小泉首相の取り組みについて意見させていただきました。

今回の選挙の大きな争点でありました、郵政民営化につきまして、アメリカの郵政公社( USPS )の実態と比較したことも書かせていただきましたが、結果としてどうも私の無知をさらけ出してしまいましたようで、大変失礼いたしました。

アメリカでも今回の日本の衆院選挙については、未曾有のハリケーンによる壊滅的な災害レポートに霞んだ感はありましたが、小泉政権の大勝利をそれなりに大々的に伝えておりました。 しかしながら、アメリカの巨大なマスメディアでさえも、この日本の郵政民営化に関しましては、本質的な報道は当地アメリカでは十分なされていない印象が色濃く残りました。

私もアメリカに長く住んでいて、忘れかけていたのですが、日本の郵便局には、そういえば、郵便貯金や保険というのがあって、今回の郵政改革は、これら郵便局が保有する金融資産(約 320 兆円)を民間ベースに還元させて、日本経済の活性化をはかる抜本的な構造改革であったわけです。

アメリカの郵政公社では、日本のような郵便貯金や保険業務はまったく行っていませんので、アメリカ人(私も含めて)から見れば、郵政改革という言葉には、いまひとつピンときていないという節がありました。これらの点を前回、日本からの親しい何人かの方々からのごていねいなご指摘をいただきまして、私のピンボケした論旨の抜けに恥じ入った次第でありました。

さらにアメリカの非効率的な郵便事業については、そのようなことは今まで聞いたことがなかったという驚きのメールも随分と日本の皆様からいただきました。しかしながら、先にも書きましたように、約 70 万人強もの職員を抱え込むアメリカの郵政公社を民営化しようだとか、構造改革しようだという声は、アメリカ国内ではほとんど耳にしたことがありません。

今回の小泉政権の郵政民営化路線をつぶさに見た中で、先進諸国の中にあって、多くの国々が官僚的で、独占形態として我が春を謳歌してきた郵政事業に対して、改革のメスを入れようとしている矢先に、どうもアメリカだけが、時代の流れに逆らうがごとく、民営化というものに足止めを食わしてしまっているような感じさえ受け取れます。

いまや重要な書類や小荷物は、 FedEx や UPS で配送され、多くの紙による手紙が電子メールに取って代わられています。企業からの請求書( Invoice )銀行からの明細書( Statement などもいずれは電子化されていくことは、もはや眼に見えています。そんな中で、アメリカの郵便局から配達されてくる郵便物の3分の2以上が、相も変わらずジャンクメールのオンパレードという状況が毎日のごとく繰り返されております。

今回のハリケーンによる大被害では、約 8 人に 1 人は貧困にあえいでいるというアメリカの貧困層の現実や州や地方自治体と連邦政府との間の指令系統上の齟齬など、はからずもアメリカの暗部が浮き彫りになってしまいましたが、世界の最先端を行くはずのアメリカで、まだまだ信じられないような時代遅れのサービスや官僚主義ならびに権威主義、そして旧態然とした組織や利権の温存というものに対して、改革の手がほとんど何もつけられていないように思われます。そのような経験をするほど、残念ながら人々が口で言うほどアメリカは世界最先端に位置するナンバーワンの国家とは、言えないのではないのでしょうか。

Ken Sakai
President
kenfsakai@pacificdreams.org

4 月 1 日から Pacific Dreams, Inc. の住所 ならびに電話番号・ FAX 番号が下記の通り、変更となりました。

Pacific Dreams, Inc.
25260 SW, Parkway Avenue, Suite D
Wilsonville, OR 97070, USA
TEL : 503-783-1390 FAX : 503-783-1391


 


Ken Sakai
Pacific Dreams, Inc.
President


翻訳事始め − 第 4 1回「弊社の翻訳トライアル」

翻訳業界では、翻訳会社や翻訳を常時依頼している企業におきましては、翻訳を依頼する、あるいは応募してこられる翻訳者の方々向けに、「翻訳トライアル」と呼ばれる翻訳のテストをお受けいただくことが業界内での一般的慣行となっております。

弊社でも社内翻訳スタッフを正社員として募集するときには、必ず、日→英ならびに英→日の翻訳トライアルを受けてもらい、日→英は、アメリカ人スタッフが、英→日は私が採点者として、評価を行い、翻訳のスコアをつけます。そしてそのスコアの結果は、直ちに応募者の方にメールで、お送りするようにしています。 Pacific Dreamsのメルマガを購読するには、ここをクリック!

弊社では、日英双方向の翻訳を社内でしなければなりませんので、双方向の翻訳がある程度できる人でないとうまく勤まりません。採用に関しての弊社の合格ラインは、両方向の翻訳でそれぞれ 5 点満点中、 3.0 以上としています。しかしながら、実際には、日英双方向で、 3.0 以上を取るということは、思っている以上に難しいことでもあります。(翻訳者は、日→英の得意な人と英→日の得意な人とに普通ははっきりと別れる傾向があるからです。)

弊社のトライアルは、きわめて常識的で一般的な内容ではありますが、応募者に対しては、翻訳をする上で、どのようなレベルであるのかをこのトライアルによって、私たちとしては、ほぼ正確に把握することができるような仕掛けになっています。意地の悪い、突飛な内容の難文奇文を寄せ集めたようなトライアルを設定しているわけでは、決してありません。

弊社でもたまにですが、他の翻訳会社からの新規の仕事に挑戦する機会がある場合ですと、その翻訳会社からのトライアルを受けることを義務付けられることがあります。そのような場合には、弊社にとりまして、他の同業他社がどのようなトライアルを課しているのかを自ら実地体験することのできる誠に興味深い機会の到来となります。

ただし、弊社のような翻訳会社は、組織として翻訳をしておりますので、純粋に個人レベルで翻訳能力をみるということにはつながりません。翻訳するスタッフがいて、校閲者(プルーフリーダー)がいて、そして何より、翻訳プロジェクトを取りまとめるプロジェクト・マネージャーがいて、それら組織内の総力を結集して、業務が遂行されておりますので、単に翻訳レベルをみるトライアルの実施だけでは、すべてを見るということはできないように思います。

それは、他の翻訳会社に仕事をアウトソースするということは、個人の翻訳者だけでは量的にも納期的にも限界のある大きな翻訳プロジェクトを委託するというところにそのメリットが通常は生まれてまいります。そのため、翻訳のスキルそのものも当然のことではありながら、さらには、プロジェクト・マネージメントの質やコミュニケーション能力という点においても翻訳プロジェクトの成果の行方が左右されることになりからです。

さすがに翻訳トライアルでは、翻訳のスキルや品質はみることができても、プロジェクト・マネージメントのそれについては、実際に翻訳の仕事をやってもらうまでは、はっきりとしたことはわかりません。しかしながら、逆説的ではあるのですが、その翻訳トライアルのコーディネーションを通じて、相手先翻訳会社のプロジェクト・マネージメントの巧拙を十分垣間見ることができます。

いままで経験したことですが、翻訳トライアルを当然ながら指定期間内に提出をし、その後、トライアルの評価やフィードバックをいくら待っても、何の連絡もしてこない翻訳会社もありました。おそらくそのような会社とは、先方から仕事を頼み込まれても決して引き受けないことにしていおります。つまり、仮に引き受けるようなことがあっても、先方の拙劣なるプロジェクト・マネージメントのために、弊社の重要なリソースが非効率極まりない仕事のやり方に振り回されることが日の目を見るより明らかだからです。

弊社では、翻訳トライアルをお受けいただいた方々には、遅くとも 3 日以内に採点を行った結果とそのフィードバック、ならびにお手本翻訳をつけて返信を必ずしております。業務で忙しいときには、正直なかなか手間のかかることなのでありますが、これは翻訳会社としては、トライアルを無償でお受けいただいた方への最低限のマナーであり、義務であると考えて誠実に実行しております。

そして、トライアルにおいて弊社が求める採点結果やフィードバックを得られなかった方々であっても、どこに翻訳上の巧拙があったのかをお手本翻訳と比較していただくことで、またとない翻訳向上のきっかけ作りの機会になってくれたらと願っている次第なのです。そして翻訳向上のヒントは、むしろ原文における正しく、深く読み込みする方にこそその基本があるということがおわかりいただけましたのなら、その方の翻訳の質向上は、それなりに今後期待が持てるのではないかと思われるのです。

Ken Sakai
President
E-mail: KenFSakai@pacificdreams.org


 

ブログ・サイトでの記事のご紹介

先にお知らせさせていただいたことがございましたが、今年の 7 月 25 日から、私自身のブログ(ウェブ上での日記)を新規に開設いたしました。アドレスは、 http://www.pacificdreams.org/pblog/index.php です。

さて今月号の「翻訳トーク」の中でも、先月号に引き続きまして 2 つほど、ブログ・サイトでの記事をご紹介したいと思います。ブログを書き続ける努力はしてはおりますが、なにぶん最近は会社経営の方に忙殺されることがほとんどで、あまり余裕がございません。それでも、ぜひまたときどき私のブログ・サイトをご閲覧になってどんなことを書いているのかみていただけましたら、ありがたいです。引き続きまして、どうぞよろしくお願い申し上げます。


ウエイト・リフティングに凝ってます
September 15, 2005

ここのところ、出張もあまりないので、週3回(日、水、金)のジム通いも地に着いてきた感じがしておりまして、夏から秋に向けてせっせと汗を流せる機会が格段に増えてまいりました。

「コートハウス」というフィットネスクラブに通っているのですが、最近特に凝っているのが、ウエイト・リフティングです。以前にもブログに書きましたが、今年の初めからパーソナルトレーナーについて、このウエイト・リフティングを仕込んでもらいました。

最初の数ヶ月かは、あまり自分では楽しんでやっているというような気はしていませんでしたが、今は、ウエイトの重さも少しずつ上げて、挑戦心を掻き立てられるような仕組みを自ら作って励んでいるせいか、かなり、「はまって」きました。

腕の筋肉などは、確かに隆々としてきまして、トレーニングした成果が自分の眼で確認できるので、これは、ちょっとした快感です。しかし、本当はもっと腹筋をつけたいと思っているのですが、こちらの方は、まだまだでありまして、あまり芳しい成果にまで至っておりません。

腹筋をつけて、たるんだおなかをへこませたいのですが、かなりこちらの方は、私に似て相当強情にできているようで、当人の考えているようにはまいりません。(どなたか、腹筋の効果的なつけ方をご存知のようでしたら、そのトレーニング方法をご伝授ください。)

ジムで、ウエイトをやっていて、ひとつ気が付いたことがあります。それは、明らかに肥満と思えるような人は誰もこのウエイトをやっていないのです。ウエイトをやっている人は、どちらかというと、アメリカ人の中ではスリムな部類に属する方々です。

そして、男性と女性とのこのウエイトをやっている比率もほぼ拮抗していまして、年齢的にもけっこう幅があり、男女老若全般という感じです。

さて、日本のジムではどうなのでしょうか。長いこと日本のジムには行ったことがないので、比較することができません。どなたか、ご自分の通っているジムについて、ご意見(観察)の交換ができたら、きわめて興味深いかと思うのですが。

とにかくアメリカでは、とてつもなく完全なプロポーションの持ち主とどうしてこのような(巨大な)体格になってしまったのだろうかと不思議でならない方と、けっこうはっきり別れます。もちろん、中間の人も大勢おりますが、そのコントラストがあまりにも鮮やかで、ときどきウエイト・リフティングの動きが止まってしまうこともしばしばです。


日本語の「少し」
September 10, 2005

アメリカの南部は、ハリケーンの影響で大変な風雨と洪水で大被害が出ているというのに、こちらアメリカ西海岸に位置するオレゴン州では、 7 月の半ばから今月初めに至るまで、一滴の雨も降っていない地域が多く、渇水気味のところでした。

「でした」と書いたのは、昨日、金曜日の午後からやっと降水量を記録することのできる雨があり、今日も午後になってからお空では、雷様がゴロゴロいい出して来たところだからです。

さて、今朝地元ローカル放送局のニュース番組を見ておりましたら、天気予報の担当官が、今日は午後に「少し」雨が降ると言いました。すかさず、美人のニュースキャスターの女性が、「少し?」と聞き返しました。

これ、どういう状況でこのような会話になっているのかお気づきでしょうか。つまり、予報官は、日本語の「少し」を天気予報の中で使ったので、思わず、その意味について女性キャスターがチェックを入れたという状況下にあった次第です。

今どきのアメリカ人同士のナウい会話のやりとりの中では、この日本語の「少し」という言い方が出てくることを私も何度か経験しておりましたが、ついにニュース番組の中でもれっきとして使われるようになったというのは、これはきわめて意味深いことであるかもしれません。

以前読んで大変面白かった「英語の冒険」という英語の発展史に関する本があったのですが、その中で、英語というのは、なりふり構わず貪欲に他の言語の言葉を吸収して自分のものにしてきたという記述がありましたが、今まさに「少し」という日本語も英語の市民権を得ようとしている段階にさしかかっているということを眼のあたりにしたわけです。

ということで、皆さんがアメリカ人と英語でお話をする機会がありましたら、この「少し」を会話の中に入れて、英会話をよりナウい味付けにされてみてはいかがでしょうか。きっと、「少し」という言葉の意味がわからず、先の女性キャスターのように聞き返しをしてくる人がまだまだ多数派だとは思いますが、そこは、言葉の解説をアメリカ人にしてあげる絶好のチャンスになります。言葉の説明をすることで、優位な立場にご自分自身を立たせることもできるのですよ。(英語のスペルは、 Skoshi と綴るようです。)



書評−「外国人に YES と言わせる話し方、接し方:成功するビジネスマナー 20 の心得」

宇佐美 公孝 著
角川書店出版 ・ 2005 年 8 月1 0 日刊・ 223 ページ

著者の宇佐美公孝氏は、 1976 年にソニーに入社して以来、ソニーの海外事業部ならびに世界各地にあるソニーの現地子会社に赴任を重ね、アメリカ、南米そしてヨーロッパ全 5 カ国での海外駐在体験さらに 60 カ国以上での海外出張をされてきた筋金入りの国際ビジネスマンであります。彼の現在のポジションは、オランダのアムステルダムで、ソニー・ヨーロッパのロジスティックス担当ディレクターとして精力的にご活躍されています。

その宇佐美さんが、ソニーの仕事で世界各地を渡り歩いてきて、その都度感じられた世界各地の商習慣や、ビジネスマナー、そして交渉術やコミュニケーション・スタイルをご自身が 2004 年から週 1 回(毎週木曜日)の割で発行されておりますメールマガジン「 あなただけに教える国際ビジネス成功秘策・実技編 」 ( http:// open.sesames.jp/kimi_consulting/ )の記事を加筆・修正して 1 冊の単行本としてまとめたのが本書の構成となっております。

ソニーという日本でも最も国際化の進んだグローバル企業にあって、多くの国々でのビジネスの最先端にいられる恩恵を存分に生かして、それぞれのお国柄とビジネスのスタイルや交渉術の比較をされていますので、実際にそのような多くの国々まで出張して仕事をすることのない我々一般人でも読み物として肩肘張らずに面白く読めてしまう内容が満載されております。

印象として残っている箇所は、第 2 章の中の「気遣いで会議をスムーズに」で、日本独特だと考えられていた「根回し」工作が、実は、アメリカのエクゼクティブたちも頻繁に同じようにして事前工作をすることを体験し、日本独特のものではないということに気づいたとあるのは、私もまったく同様な体験をしたことがあったがために、とりわけ共感を覚えました。

本書の特徴は、各国のビジネスの特徴をきわめて単純化して、そのアウトラインだけを筆者である宇佐美氏の実体験とそのエピソードを絡めてご紹介しているので、それぞれのビジネス文化やマナーに関しての記述は、やや深みにかけるところが目につきます。もしまた書籍を出されるのでしたら、最もご関係の深い国(たぶんイギリスなのではないでしょうか)のビジネス文化に的を絞ってお書きになられると歴史の深みなども併せ持ったより興味のある書籍になるように思いました。

Ken Sakai
KenFSakai@pacificdreams.org

*Pacific Dreams, Inc. では、「外国人に YES と言わせる話し方、接し方:成功するビジネスマナー 20 の心得」(角川書店刊: $14.00 Each, Plus Shipping & Handling $6.00 )を在庫しておりますので、ご希望の方は、お電話 (503-783-1390) または、E-mailで bookstore@pacificdreams.org まで、ご連絡ください。


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来月号の翻訳トークもどうぞお楽しみに!