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Newsletter : Issue No. 41

       翻訳トーク
2005年10月号  アーカイブ
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「翻訳トーク」 2005年10月号のごあいさつ

今月号の「翻訳トーク」発行は、とうとう10月最後の日になってしまいました。アメリカ時間で書いておりますので、日本にいらっしゃる皆様方には、11月1日到着となってしまいまして、もはや10月号の翻訳トークとはいえず、誠に申し訳ございません。

今月は、後半から、1週間の東京出張とアメリカ帰国後、間髪入れずにシアトルまでの出張が立て続けに入ったものですから、このような遅れとなってしまいました。以前は、移動の飛行機の中で「翻訳トーク」の記事をひねり出していたりしていたものですが、最近は、満席の狭いエコノミークラスの座席で、ラップトップを取り出して仕事をするというタフさも影を潜めてまいりましたので、出張中に記事を書くことがなかなかできなくなってしまいました。

さて、今月号は、戻ってきたばかりのシアトルでの出張報告を中心に、皆様に世界の翻訳業界に関しましての最新情報をお届けしたいと思います。10月25日から3日間、シアトルで ”Localization World Conference” という国際会議が催されましたので、参加してまいりました。

この国際会議は、ちょうど2年前にも同じシアトルのBell Harbor Conference Centerというシアトルの海岸に面した風光明媚で、洗練されたコンベンションセンターで開かれました。昨年サンフランシスコで開かれた会議には、参加しませんでしたので、2年ぶりの参加でありましたが、 世界各国からの出席者の増加にはまさに目を見張るものがあり、これほど国際色豊かな会議に参加したことは今までにありませんでした。

全体では500名以上の参加があったのではないかとの話を耳にしましたが、とりわけヨーロッパ各地ならびに南米からの参加者が飛躍的に増えているように思いました。しかも、チェコなど中欧諸国からの翻訳会社の出展参加が目立ち、それらの会社がビジネス上、大きな成功を収めており、いまやグローバル展開までしていることに感銘を受けました。

もともと中欧から東欧にかけましては、各国それぞれの異なった独自の言語を有しており、EUの統合発展によって製品やサービスも以前とは比べものにならないほど、EU陣内で流通するようになってくれば、当然のごとく、各国の言葉へ翻訳するというニーズが飛躍的に企業の中で増えてくるのは必然の成り行きではないかと思われます。

シアトルは、ご存知の通り、近くにマイクロソフトの本社を擁している地域ですので、数多くのソフトウエアやハードウエアのメーカーが何らかの開発拠点をシアトル周辺に置いています。その意味では、今回再びシアトルで、このLocalization Worldの会議を開いたというのは、とてもタイムリーでもあり、それだけ多くの業界関係者が世界中から集まったのではないかと感じました。

さて、このLocalizationという言葉、馴染みのない方々もきっと多いのではないかと思います。以前にも「翻訳トーク」の中でご説明したことがあるのですが、翻訳とどう違うのかと申し上げますと、翻訳は言葉そのもの、そしてそれらが書かれてある文書をオリジナルの言語(Source Languageといいます)から別の言語(Target Languageといいます)に置き換える作業と呼べるかと思いますが、このローカリゼーションは、翻訳はこのローカリゼーションの一部の作業であって、製本やサービスそのものをターゲットとなる国や地域の文化にぴったりフィットするように、現地化していくさまざまな調整作業全体のプロセスであるといえます。

とりわけ、ソフトウエアやウェブサイトに関しての現地化適合作業をローカリゼーションと今は呼ばれることが多いのですが、拡大解釈していけば、どのような製品やサービスであっても、現地化していくことはとりもなおさずローカリゼーションと呼んでも差し支えないものかと思われます。

ただし、今回のLocalization World ConferenceでいうところのLocalizationは、まさにソフトウエアについてのローカライゼーションであり、ローカリゼーション業界とは、ソフトウエアをローカライズするベンダー各社が集まり、最新技術とサービスとを通じて競争と協調とをグローバルベースで展開している、ダイナミックでまだまだ若々しい、将来性豊かな業界なのであるという定義付けをすることができるかといえます。

Ken Sakai
President
kenfsakai@pacificdreams.org

4 月 1 日から Pacific Dreams, Inc. の住所 ならびに電話番号・ FAX 番号が下記の通り、変更となりました。

Pacific Dreams, Inc.
25260 SW, Parkway Avenue, Suite D
Wilsonville, OR 97070, USA
TEL : 503-783-1390 FAX : 503-783-1391


 


Ken Sakai
Pacific Dreams, Inc.
President


翻訳事始め − 第 42 回「SLVとMLV」

今回、「翻訳トーク」の冒頭でもお伝えいたしましたが、シアトルで10月25日から開かれましたLocalization World Conferenceに参加して、翻訳業務形態に関しまして、ひとつの認識をあらたにした気がいたしましたので、今回の「翻訳事始め」で触れてみたいと思います。

その認識とは、表題にありますSLVとMLVのことです。単言語の翻訳をする翻訳者または翻訳会社を翻訳業界またはローカリゼーション業界では、Single-Language Vendor、略してSLVと呼んでおりまして、日本語に強いて訳せば、単言語翻訳者、または単言語翻訳会社ということになります。

それに対しまして、数カ国語の言語に翻訳をする翻訳者または翻訳会社をMulti-Language Vendor、略してMLVと呼んでいます。多言語翻訳者、または多言語翻訳会社ということになります。ビジネスでいえば、MLVは、複数のプロジェクトマネージャーを抱えた会社組織を構成しておりませんと現実的には、務まりませんので、多言語翻訳会社ということになります。

ソフトウエアやウェブサイトを翻訳し、ローカリゼーションを行う場合、通常でありますと、日本語だけの単言語にローカライズするというよりも、いくつかの異なった言語に同時並行的に翻訳をし、ローカライズするということがどうもソフトウエア業界での主流となってきているようなのです。このような多言語への同時並行的ローカリゼーションを業界では、グローバリゼーションと呼んでおります。

このようにグローバリゼーションの流れがソフトウエアの業界で加速してまいりますと、それを一手に引き受けることのできる会社は、MLV、つまり多言語翻訳会社ということになってまいります。現に、世界最大のソフトウエア会社であるマイクロソフト社では、MLVでなければローカリゼーション・ベンダーとして認定しないというポリシーを社外に明確に打ち出してきております。

ご存知のように、私どもは、英語と日本語との間での翻訳しか行わない、Single-Language Vendor(SLV)でありますので、マイクロソフト社などからのお仕事を直接取れる立場にはありませんが、MLVからマイクロソフト社の日本語翻訳部分だけのお仕事をいただくということは十分に可能なシナリオであります。

実際弊社でも最近では、アメリカの主要なMLVからの日本語翻訳のお仕事を頻繁に請けるようになりまして、翻訳業務自体は、おかげ様でかなり伸びてきております。このように書きますと、弊社のようなSLVは、MLVの下請け業者としての立場で今後とも生きていくような感じがあるのでありますが、日本的な下請け業者というイメージでは、MLV自体もソフトウエアメーカーであるクライアントとの間のプロジェクトで継続して成功を収めることは逆にきわめて難しいのではないかと考えています。

ローカリゼーション・プロジェクトを成功させていくためには、MLV側がSLVをチームメンバーの一員として認めて、オープンで直接的なコミュニケーションに努めていくことがなんといっても重要な要素になるものと思います。翻訳がいったん仕上がった後には、以前、この「翻訳事始め」でも触れたことがありますが、”In-Country Review”という校正作業を日本語翻訳の場合であれば、日本にいる支社や販売代理店の方で行います。そのときに、訳語の問題や用語の統一、さらに訳文のスタイルについてさまざまなコメントが赤ペンで書かれてMLVの方に戻ってきます。

このような形でのフィードバック(業界では“赤入れ”と呼ばれています)は、どうも日本だけのやり方のようでありまして、馴れていないMLVの担当者でありますと、かなり動揺をきたすような場面が出てまいります。この場合、用語集やスタイルガイドなどができておらず、それらについて事前に何も打ち合わせがなされずに、プロジェクトがキックオフしてしまったことが問題の根元としてあることがほとんどで、その辺の基本的なところからの話し合いを持ち、状況の打開をしていかなければならないのですが、SLVとしてコミュニケーションの一角に参加できるのとそうでないのとは、このような問題解決プロセスの中では、天と地の違いが発生してくるのは、火を見るよりも明らかです。

今まで、成功しているMLVとの翻訳プロジェクトの中では、SLVである弊社をMLVの中の一員として、彼らのクライアントとのコミュニケーション・ループの中に入れていただき、翻訳上で何か問題が発生すれば、電話会議などで一緒にクライアントと話をしたり、場合によっては、MLVの方と一緒にクライアント先まで出向いて、問題解決を共にはかったりしてきております。

逆に成功していないケースで言えば、MLVがSLVをあくまでも下請け業者的な扱いをし続け、SLVにはMLVのフィルターに通した情報しか与えられず、MLVのクライアントとの直接的なコミュニケーションをとるということがまったくできなかったというような場合がほとんどでありました。このようにMLVとSLVとの密着した協業体制次第で、ローカリゼーション・プロジェクトの成否が決まってくるといっても過言ではありません。弊社は、MLVの重要なパートナーになりうる、日本語翻訳に特化したSLVとして、今後とも多くのローカリゼーション・プロジェクトのチームメンバーに加えていただきたいものと願っております。

Ken Sakai
President
E-mail: KenFSakai@pacificdreams.org


 

「技術者のための異文化交流セミナー」開催のお知らせ

来る12月9日(金)午前9:30より正午12:00まで、幕張メッセ国際会議場3階にあります301会議室にて、SEMIジャパン主催によります、「技術者のための異文化交流セミナー」が開催される運びとなりました。

SEMIジャパン様から、光栄にもこのたび本セミナーの講師役を仰せつかいまして、下記の通り、セミナーをセミコンジャパンの開催期間中に行うことになりました。

日時:12月9日(金)9:30 ? 12:00
場所:幕張メッセ国際会議場3F 301会議室
講演者:パシフィックドリームスインク社 代表取締役 酒井 謙吉
参加費用(消費税込み):
  11月25日(金)までのお申し込み・\10,000-
  11月26日(土)移行のお申し込み・¥12,000-
セミナーお申し込み先: https://www.semireg.org/

テクノロジーのグローバル化進展に伴い、どれだけ英語が話せるにしても、海外にいる相手先の文化を十分に理解し、文化面を考慮に入れた円滑なコミュニケーションを日常的に行っていかなければ、海外企業との技術提携や技術交流を高いレベルまで深めていくことはままなりません。

本セミナーでは、技術者の方々のために、特にヒントとなる異文化コミュニケーションのノウハウとケーススタディとを盛り込み、具体的で、実践的なアイデアを数多く盛り込み、皆様方のコミュニケーション改善の道しるべとなるように、有意義な情報提供することを目的としています。

9:30 挨拶およびスピーカーの紹介
9:45 異文化コミュニケーションの定義とその意義
10:30 日本企業が抱えている異文化対応への諸問題
11:00 テクノロジーと異文化交流
11:30 異文化コミュニケーション・ケーススタディ<技術者編>
12:00 終了

セミコンジャパンにご出展なさる方々、またはご見学にお越しになられます方々は、ぜひともお誘い合わせの上、ご出席くださいますように、何卒ご検討のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。



書評 − 「ミリオネラの教え、僕の気づき」

河本 隆行 著
成甲書房 ・2005年10月10日刊・284ページ

先日(10月17日から1週間ほどの間)東京に行っておりました際に、いつも必ず覗くことにしている東京駅丸の内北口近くにあります、丸善本店でついタイトルに惹かれて衝動買いをし、成田からポートランドまでの帰りの飛行機の中で、一気に読み終えました書籍が今回の書評となります。

世界のミリオネラの同時通訳者として大活躍をしている河本隆行氏は、それらミリオネラである世界的に著名な啓蒙家である、ロバート・キヨサキ、アンソニー・ロビンズ、ジョン・グレイなどの自身が参加したセミナー体験記をベースにして、世界最高のメンターともいえる彼らが教えるエッセンスのすべてを実に小気味よく公開してくれているのが本書のすばらしい点であると言えます。

とりわけ、以前にこの書評欄でもご紹介をしたことのある男女間の心理学的名著で大ベストセラーを記録した「男は火星から、女は金星からやってきた(邦題は、「ベストパートナーになるために」)の著者である、ジョン・グレイの章では、最近ご結婚された著者ご本人の状況もあってか、ジョン・グレイの展開する男女間の恋愛関係や人間関係論にいっそうの説得力が帯びていたような気がいたしました。

たとえば、男性が女性にバラの花束1ダースをたった1回プレゼントするのと、1輪のバラを12回に分けてプレゼントするのとでは、女性にとりましては、前者よりも後者の方がはるかに好感度が高くなるのは間違いなしだというのです。さらに、自分は女性には決してもてる男ではないと決めつけている男性をも、女性に持てる男に変身させる4つのスキルを紹介してくれておりますので、私としても大いに参考になるような指摘が随所にちりばめられております。

最後の章で紹介をしてくれている、ジョン・フォッピ(この人だけは、名前さえも聞いたことがありませんでした)は、生まれながらに両腕のない、身体障害者として生を授かった人でありながら、数々の困難を克服し、プロの大物スポーツ選手をモチベーションさせ、いまや世界的なモチベーショナル・スピーカーとして大活躍をしているという方です。

この短くもストレートな内容の章が、全編を通して私としては最も心を打たれた箇所で、ジョン・フォッピと彼のお母さんの話には、大変月並みな表現であるかもしれませんが、とても大きな感動と困難であっても与えられた人生を力いっぱい生きていくことへの勇気と元気印とをいただいた次第です。

*Pacific Dreams, Inc. では、「ミリオネラの教え、僕の気づき」(成甲書房刊:$24.00 Each, Plus Shipping & Handling $6.00)を在庫しておりますので、ご希望の方は、お電話 (503-783-1390) または、E-mailで kenfsakai@pacificdreams.org まで、ご連絡ください。

Ken Sakai
KenFSakai@pacificdreams.org


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