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Newsletter : Issue No. 42

       翻訳トーク
2005年11月号  アーカイブ
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「翻訳トーク」 2005年11月号のごあいさつ

今月11月も先月に引き続きましてポートランドからシアトルまで車を飛ばして、Conferenceに出席してまいりました。今回のConferenceは、ATA (American Translators Association;全米翻訳者協会)の46th Annual Conferenceで、全米ならびに全世界から1,600名前後の参加者がありました

数えてみますと、今回私は5度目のATA Conferenceの参加となり、2002年にアトランタで行われましたConference以来、3年ぶりの参加になりました。会場となったシアトルはダウンタウンの真ん中にあるウェスティンホテルは、1,600名もの参加者人数を収容するにはやや小ぶりな会場で、人気の高いセッションによっては参加者が入り切れなくなるルームも出てきて、Conferenceの運営そのものには、いくつかの課題が残ったものではないかと感じました。

しかしながら、Conferenceで行われた各セッションやプレゼンテーション、ならびに翻訳関係者とのネットワークは、“Couldn’t have been better!”(最高のものだった)と未だ、その感激に浸っているところです。久しぶりにお会いした方々とお名前は何度も聞いていたのに、会うのは今回初めてという方々と、普段はもっぱらメールでのやり取りだけに終始している身にとっては、本当に人間的なぬくもりを感じるひとときでもありました

私は、時間の許す限り、ATAのJLD (Japanese Language Division:日本語部会)の会合やそのセッションに顔を出すようにいたしましたが、日本人の多く住むシアトルで今年は開かれただけありまして、例年になく多くの日本人翻訳関係者の方々がご出席されたのではないかと思いました。また、JLDのセッションならびに運営を企画し、尽力していただいた有志の方々には、この場をお借りして深く感謝申し上げたいと存じます。

かくいうこの私も、「半導体産業の概要(英語でのタイトルは、”Understanding the Semiconductor Industry and Its Supply Chain”)」というテーマでプレゼンを行いました。今回は、比較的Conferenceの期日が近づいてきたときに、お声をかけられまして、急きょお引き受けさせていただいた次第です。今回は、私のほかにNikon Research Corporation of Americaの社長でありますMr. Tom Novakが、半導体のセッションということで、半導体露光装置でありますステッパーならびにフォトリソグラフィの最先端テクノロジーをプレゼンしていただきました。

人類の歴史上、最も精密な装置であると言われておりますステッパー(日本語訳は、縮小投影型露光装置)についての微細化加工技術の開発や露光光学系構造についての鮮明な動画を使ったプレゼンには、固唾を飲む思いがいたしました。そのような方々の前で、プレゼンをした私もいつになく緊張した面持ちで始め、持ち時間の45分はあっという間に過ぎて、10分近くも時間オーバーをしたまま、何とかすべて用意したパワーポイントのスライドを終了させました。

今回は、ATA本部からの意向で、JLDとしてのセッションに認めてもらえず、Science & Technology Divisionのセッションということになり、プレゼンはすべて英語で行いました。本来であれば、半導体業界で使われる専門用語や特有の表現方法などを日本語と英語とで対比しながら説明するものなのですが、今回だけはJLDのセッションではないということで、日本語を使うことができなかったのは、歯がゆい感じが多少なりとも後に残りました。

この英語での半導体に関するパワーポイントによるプレゼンのスライドは、セッションのある日の未明までかかって作成したものです。プレゼンに載せた内容はすべて周知のことでありまして、Confidentialなことは何もありませんので、もしご関心のおありの方がいらっしゃいましたなら、メールに書いてその旨、私までお送りただければ、プレゼン資料をご参考としてお送りしたいと存じます

さて来月12月は、恒例のセミコン・ジャパンが幕張メッセにて開催されますので、毎年のことですが、この時期セミコン参加のために来日いたします。このセミコン・ジャパンでは、主催者側でありますSEMIジャパンの方から、セミナー講師のご依頼を承りまして、「技術者のための異文化交流セミナー」というタイトルで、12月9日(金)午前9時半より正午までの2時間半、幕張メッセ国際会議場301会議室にて行います。

ここのところ、プレゼンやセミナー続きでお声を頻繁にかけていただくこととなりまして、こんな光栄なことはないと栄誉に感じております。願わくば、多くの方々にご参加していただき、皆様のお仕事や業務の中で、少しでもお役に立てる知識やアイデアをご提供することができたらこれに勝る喜びはありません。何卒よろしくお願い申し上げます。

Ken Sakai
President
kenfsakai@pacificdreams.org

4 月 1 日から Pacific Dreams, Inc. の住所 ならびに電話番号・ FAX 番号が下記の通り、変更となりました。

Pacific Dreams, Inc.
25260 SW, Parkway Avenue, Suite D
Wilsonville, OR 97070, USA
TEL : 503-783-1390 FAX : 503-783-1391


 


Ken Sakai
Pacific Dreams, Inc.
President


翻訳事始め − 第 43 回「社内翻訳者と企業」

シアトルで今月開かれました第46回ATA年次総会(Annual Conference)日本語部会(Japanese Language Division)の中で、在米日系企業の中で働く「社内翻訳者」についてのプレゼンテーションがありました。プレゼンをされましたのは、Honda R & D Americasの山崎篤子さんとNikon Research Corporation of Americaのベスト圭子さんとのお二人で、いずれも社内で翻訳ならびに通訳を長年携わってこられました、エキスパートの方々です

Hondaの山崎さんは、主に社内で行われるさまざまなテクニカル・プレゼンテーションの同時通訳をするにあたって必要とされる準備の打ち合わせから資料の読みこなしなど、まさに現場感覚での同時通訳の緊張感が伝わるようなプレゼンをしてくださいました。また、Nikonのベストさんは、社内翻訳者と社外翻訳者(つまりフリーランス)との比較を行い、社内翻訳者として享受することのできるメリットの多くを語ってくださいました。

このようなプレゼンに参加するのは、私自身も初めてのことでありましたので、アメリカ国内で大きな成功をおさめている日系企業のまさにインサイド・サクセス・ストーリーを垣間見たような気がいたしまして、本ATA総会のセッション中、最も価値のあるプレゼンのひとつでありました。

私自身のその昔(10年以上前ですが)、Pacific Dreams, Inc.を創業する前は、米国三菱シリコン社(現SUMCO USA)で、技術者ならびに資材担当者であった傍ら、数人いた社内翻訳者のスーパーバイザーとして日本の本社工場から届く大量の技術文書の翻訳に携わっていた時期がありました。今回のプレゼンに参加して、その当時の様子が走馬灯のように脳裏に浮かび上がってきました。

山崎さんやベストさんが現在いらっしゃる企業と私が当時いた企業とを比べることは必ずしも適正なことではないかもしれませんが、明確に言えることは、企業のマネージメントが社内翻訳者・通訳者の重要性をしっかりと認識し、社内でも明確にそのポジションとジョブ・ディスクリプション(職務内容記述書)を確立させていたかどうかという点にあったのではなかったかと感じました。

もちろん、プレゼンをなされたお二人とも、それぞれの企業で10年以上にわたって勤務されてこられた中でこのような高いレベルまでの社内翻訳・通訳者としてのポジションを確立されてこられたわけですから、きっと大変なご苦労がそれなりにおありではなかったかと察せられます。しかしそれらの苦労や試行錯誤に対して、企業のマネージメントが正当な評価やフィードバックを行い、サポートをしてこられたかどうかを窺い知ることができまして、私としては大変に興味深かった次第です。

私の経験から申し上げますと、社内でフルタイムの正社員として翻訳者・通訳者を採用することはそれなりにコストのかかることであり、常に翻訳や通訳の仕事が社内にないような場合には、それこそ社内でのお荷物としての認識に至ってしまうことさえあります。翻訳や通訳の仕事が社内に常時ないような場合には、総務一般の仕事の手伝いをすることになり、ジョブ・ディスクリプションも曖昧になりがちとなります。

その結果として、マネージメント側の正当な認識がなされず、社内の便利屋さん的な使い方といった評価しかなされないということにえてしてなりがちです。そのために、やる気も実力もある優秀な翻訳スタッフが必然的に長く社内に留まることができずに、やめてしまうという悪循環を繰り返すことになります。私が当時三菱にいるときには、残念ながらそのような情景を見続けていたものでした。(現在のSUMCOでは組織が変わり、社内翻訳者の地位もかなりよくなっていると聞いております。)

私は、今後、アメリカで事業を拡大し、市場での成功を目指すような日系企業は、社内翻訳者のポジションを明確に規定を行い、社内で正しく処遇していく方針を企業のマネージメントとして策定しなければならないのではないかと思います。その中で、試行錯誤もあるかと思いますが、HondaさんやNikonさんのように優秀な人材を採用して育成し、長期的な雇用に結びついていけば、それは企業にとっても翻訳者にとっても“Win-Win”関係の構築ができる、すばらしい機会が持てるはずであると考えます。

私としましては、ATAの総会にトレーニングとして社内翻訳者の方々を送ってこられるような日系企業が今後増えてくることを何よりも期待しております。社内翻訳者の方々も外部からの情報が必要だと思いますし、成功している他の企業のことを知ることによって、大きなモチベーションを得られるのではないでしょうか。今回のATA総会には弊社からも初めてであったのですが、二人の社内翻訳スタッフを送り込みました。弊社でもそのような外部機関を使ってのトレーニングはまだまだ緒についたばかりのところですが、これからのスタッフの将来に向けての成長振りを心ひそかに期待したてまいりたいものです。

Ken Sakai
President
E-mail: KenFSakai@pacificdreams.org


 

「技術者のための異文化コミュニケーション・セミナー」のご案内
−文化背景の異なる人々と効果的に仕事をするためのヒント−

くどいようでございますが、下記の要項で、「技術者のための異文化コミュニケーション・セミナー」−文化背景の異なる人々と効果的に仕事をするためのヒント−を行いますので、ご関心のございます方々のご参加を募っております。

12月の超ご多忙時期であるかとは存じますが、皆様ご検討の上、何卒ご参加くださいますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

日時・12月9日(金)9:30 ? 12:00
場所・幕張メッセ国際会議場3F 301会議室
講演者・パシフィックドリームスインク社 代表取締役 酒井 謙吉
参加費用(消費税込み):11月25日(金)までのお申し込み・¥10,000-
  11月26日(土)移行のお申し込み・¥12,000-
  学校関係者(学生を含む)は、¥3,500-
(いずれもテクスト代・消費税込み)

セミナーお申し込み先: https://www.semireg.org/

半導体やIT業界など、テクノロジー分野におけるグローバル化の進展に伴い、どれだけ言語が達者に話せたにしても、海外にいる相手先の文化や慣習を十分に理解し、彼らの持つカルチャー面にも配慮した円滑なコミュニケーションを日常的にしていかなければ、海外企業との技術提携や技術交流を高度なレベルまで深めていくことはままなりません。

本セミナーでは、技術者の方々のために、特にヒントとなるような異文化コミュニケーションのノウハウとケーススタディとを盛り込み、具体的で、実践的なアイデアを数多く盛り込み、皆様方のコミュニケーション改善の道しるべとなるように、有意義な情報提供することを目的としています。

9:30 挨拶およびスピーカーの紹介
9:40 異文化コミュニケーションの定義とその意義
10:00 異文化コミュニケーションにまつわるヒントと対策
10:50 休憩
11:00 異文化コミュニケーション・ケーススタディ<技術者編>
12:00 セミナー終了

セミコンジャパンにご出展なさる方々、またはご見学にお越しになられます方々は、ぜひともお誘い合わせの上、ご出席くださいますように、何卒ご検討のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。



書評 − 「ウィニング 勝利の経営」

ジャック・ウェルチ & スージー・ウェルチ 著・斎藤 聖美 訳
日本経済新聞社 ・2005年9月12日刊・437ページ

GEの元会長兼CEOのジャック・ウェルチといえば、強烈なリーダーシップとカリスマ性とで、ときのGEを時価総額で世界ナンバーワンの企業に育て上げ、「20世紀最高の経営者」と祭りたてられた、いわば経営の神様とでもいうべき一世を風靡した名経営者です。

そのウェルチが最初の書籍として自叙伝(「ジャック・ウェルチ−わが経営」)を執筆してから、世界各地を講演活動で訪れ、その際、各地の講演会場であまねく多くのビジネスパーソンから発せられた質問やよく聞かれる質問でのやりとりをまとめていくという形で、新たな書籍の執筆が始まったというのが本書の生まれたきっかけだったということです。

本書が網羅する内容としては、ビジネスで勝つための広範囲なトピックスが盛り込まれており、経営の基本原則(使命と価値観)、リーダーシップと組織の変革、競合会社に勝つための戦略、転職や昇進におけるキャリアの伸ばし方、上司との関係、仕事と家庭とのバランスの問題など、自身の成功哲学に基づいたノウハウをざっくばらんに、いい意味で彼の人間くささが如実に表された格好になった読み物となっています。

全編を通じて、人の管理とその人事に焦点を絞ったところに本書の力点が置かれており、経営者ではない普通の読者で、新入社員の方も含めて、会社勤めをしている人たちにも大いに参考になる箇所が随所にちりばめられています。

ウェルチ自身の有名な人事管理における鉄則の中に、社員の差別化戦略があります。20%がトップ層、70%が中間層、残りの10%がボトム層(この層は、解雇の対象となる)という差別化をとることが、企業にとっても社員にとっても最もフェアなやり方なのだということを力説しています。この差別化の重要性を感じたのは、少年時代に入っていた野球チームからの教訓で学んだなど、力強い説得力を感じさせるのも彼ならの哲学だと思います。

超一流経営者としてのM & Aにみられる戦略的思考やシックス・シグマなどの高度な品質管理手法の解説などを期待して読み始めてみたのですが、組織の現場リーダーに対して、いかに部下をモチベートしていくかなどの具体的な実情に即したアドバイスや厳格な管理目標だけでは人の管理はできないというあたりの現実的な主張には、働く側一人ひとりへの暖かい配慮も感じられて、どなたにも共感を持って読めるような構成になっています。

*Pacific Dreams, Inc. では、「ウィニング 勝利の経営」(日本経済新聞社刊:$34.00 Each, Plus Shipping & Handling $6.00)を在庫しておりますので、ご希望の方は、お電話 (503-783-1390) または、E-mailで bookstore@pacificdreams.org まで、ご連絡ください。

Ken Sakai
KenFSakai@pacificdreams.org


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