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Newsletter : Issue No. 43

       翻訳トーク
2005年12月号  アーカイブ
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「翻訳トーク」 2005年12月号のごあいさつ

12月5日の週に、1週間、東京に行ってまいりました。思っていたよりも寒く、体調を崩し、風邪を引いてしまいました。アメリカに戻りましてからも、こちらオレゴンも大変に寒気が厳しく、おかげでまだ風邪が抜けず、外出するのも今はできるだけ控えているような状態です。

12月は、いろいろなところでクリスマスパーティなどが開かれ、毎年それらにはできるだけ私も積極的に参加していたのですが、今年は、体調不良のために残念ながらすべてキャンセルせざるを得ませんでした。

そのような中で、今回皆様にご報告しなければと思いますのは、体調不良を押して行ったセミコン・ジャパンでの「技術者のための異文化交流セミナー」のことであります。

開催者側でありますSEMIジャパンさんからは、セミナー1週間前にセミナー登録者は12名だと聞かされておりましたので、100名近く入る広さのある幕張メッセの国際会議場では、かなり肩身の狭いセミナーになるかなと気を揉んでおりましたが、おかげ様で当日は、飛び込みでこられた方も数名おられ、20名以上のご参加者がありました。

今回は、風邪で喉をすっかりやられてしまっていたものですからかすれ声で、ご参加者の方々にはさぞお聞き苦しいところがあったことだろうと思います。しかしながら、それなりに気合を入れて私といたしましても臨んだものでありますから、セミナーでお伝えしたかったことはほぼすべて、限られた時間内でお話することができたものと考えております。

セミナーの内容をかいつまんで申しますと、前半は、異文化コミュニケーションの定義や文化ごとのスタイルの違いについて、広範は、技術者編としての異文化ケース・スタディを複数取り上げ、それなりに興味深い検討をすることができたのではないかと自負しております。

参加者の中には、アメリカ人で日本の大手半導体メーカーにお勤めの博士号を持った技術者の方もいて、私の話している内容に大いなる反論意見が出ないかどうか気が気ではありませんでした。しかしながら、日本人の目から見る私の異文化論はとてもユニークで、新鮮であったというご感想をセミナー終了時に頂戴することができました。

SEMIジャパンの方々とは、ぜひともまた来年も異文化セミナーをセミコン・ジャパンでやりましょうというお話になりまして、ただし、幕張メッセは、東京から遠いので、都心(市谷)にありますSEMIジャパンの会議室を使って行いましょうということになりそうです。

私のセミナー活動は、今後とも続きそうでありまして、来年3月中旬に、JTF(日本翻訳連盟)主催の翻訳環境研究会での講演とやはり同時期にアメリカ人事管理セミナーをいずれも東京で開催する予定です。年が明けましてから、またご案内をさせていただきたいと存じます。

それでは、今年も残り少なくなりました。日本もアメリカもいつになく寒い冬を迎えております。 私のように引いた風邪がいつまでも治らないようなことのないよう、くれぐれもご自愛ください。そしてよい年末年始をお迎えくださいますことをお祈りしております。今年2005年も大変お世話になりまして、本当に有難うございました。

Ken Sakai
President
kenfsakai@pacificdreams.org

4 月 1 日から Pacific Dreams, Inc. の住所 ならびに電話番号・ FAX 番号が下記の通り、変更となりました。

Pacific Dreams, Inc.
25260 SW, Parkway Avenue, Suite D
Wilsonville, OR 97070, USA
TEL : 503-783-1390 FAX : 503-783-1391


 


Ken Sakai
Pacific Dreams, Inc.
President


翻訳事始め − 第 44 回「翻訳支援ソフトの功罪」

翻訳業界に席を置いていないと知られていないことかもしれませんが、現在、翻訳業界では、大量の翻訳物、とりわけソフトウエアやハードウエア関係のマニュアル文書翻訳などにおきましては、「翻訳支援ツール」と呼ばれるソフトウエアなしには、翻訳を受注することはおろか、短納期内で翻訳作業を進めることさえとうてい可能に近い状況を呈しています。

以前のこのコラムでも何度かご紹介したことがありますが、翻訳支援ツールの業界標準となっているソフトがTRADOSというツールです。このドイツに本社を置くTRADOS社も業界第2位のスコットランドにありますSDL International社にこの夏、買収をされまして、2007年には、TRADOSとSDL社から出されている翻訳支援ツールでありますSDLXとの間で完全に合体したひとつのソフトになるということが正式発表されています。

ということで、翻訳業界は、最近になって翻訳支援ツールを開発しているソフトウエアメーカーならびに世界的な大手翻訳会社間でM&Aが果敢に繰り広げられる戦国時代へと突入した感があります。それは、何も翻訳業界に限ったことではなく、現在のグローバルビジネスのメインストリームを具現化している現象であるとすれば、その現象に巻き込まれるのは、ある程度仕方のないことなのかもしれませんが、それらツールに依存して生業を立てている私どもには、一抹の不安もよぎるのは否めないところです。

先にも申し上げましたとおり、大ボリュームの翻訳文書を短納期内に翻訳をする、しかも、それら文書の傾向として、多くのユーザー・マニュアルなどに見られるように、かなりの部分で、レピティション(Repetition:繰り返し)があります。しかも、ソフトウエアのようにほぼ毎年、アップグレート・バージョンが出てまいりますと、その都度、マニュアル全部を翻訳し直すということは、確かに非効率もはなはだしいことでありますので、翻訳支援ツールを駆使することによって、改訂された箇所だけ、あるいは、加筆されたところだけを翻訳すれば、あとは、今まで翻訳したものを併せることによって事が足りるということになります。

翻訳支援ツールは、文章のセグメントをそのままデータベース化して翻訳メモリー(TM)というものを構築していきます。ですから、同じような文章が繰り返し出てくれば、その都度、セグメントで、すでに翻訳されている文章がTMの中から自動的に出てきます。これは、理論的には確かに翻訳効率を飛躍的に高め、翻訳文章の一貫性(Consistency)を維持させていくには大変優れた機能であることは、言うまでもないことなのですが、注意を喚起しませんと、落とし穴があるということも隠れた事実としてこの際、皆様にお話してみたいと思います。

実は、このTMというのが、けっこうな曲(くせ)者でありまして、はじめてマニュアルが翻訳されたときに作られたTMがそのまま引き継がれて、アップグレート・バージョンが出てくるたびに、やはり最初のTMが幅を利かせて、翻訳文章の首座を占守することになります。しかしながら、翻訳をしたことのある方でしたら、どなたでもきっとご経験されたことがあるのではないかと思うのですが、最初に行った翻訳文章に対して、あとでそれを読み返してみる機会があったのなら、自分の翻訳は、なんとまあ拙(つたな)い翻訳であったのだろうという感慨を抱くことが多いことではないでしょうか。

そのような拙い翻訳文章が実は、TMのリソースとして代々引き継がれることになりかねないわけです。それでは、TMを定期的にアップグレートしたりアップデートしたりすることはしないのかと申しますと、ソフト上の機能的としては、クリーンアップという作業があって、翻訳終了後にクリーンアップを行うことで、毎回、基本的にTMは最も新しいものに変わっていきます。(というよりは、TMというデータベースにあらたなTMが追加されていくことになります。)

しかしながら、クリーンアップをする前段階として翻訳者がTMのチェックを行い、必要に応じて変更するのは、かなりの勇気を要することだというのが、偽らざる事実ではないかと思います。それは、TMの変更(特に100%マッチングの場合)は、明らかに誤訳であったり、不適切な用語が使われているというような場合を除いて、通常TMは基本的には、維持していかなければならないという不問律のようなものがありまして、TMを変えるのは、それなりの重要な理由付けが必要になります。

TMの変更作業についてエンドユーザーからのフィードバックなどがあれば、それは大変にありがたいことなのですが、大ボリュームのマニュアル翻訳を次から次へとこなしていかなければならない作業フローの中では、誰しもそのような余裕がないのがまた残念な現実となっています。そこで、お分かりのようにこのTMというのは、未来永劫とまではいきませんが、けっこう固定してしまう性格のものでありまして、ここに品質上の隠れたボトルネックがあります。

それでも、私としては、翻訳者あるいは、プルーフリーダーの方々には、TMで、特に100%マッチィングの場合であってさえも、出てきたTMをそのまま鵜呑みにするのではなく、勇気を持って、敢えてTM変更のご提案をしていただけたらと切に希望します。そうでなければ、いつまでたっても拙いTMを使うことによって、拙い翻訳しか生み出せない環境に陥ってしまうからです。それでは、翻訳者として、また翻訳業界で生業を立てるものとしてあまりにも進歩がないではありませんか。

Ken Sakai
President
E-mail: KenFSakai@pacificdreams.org



書評 − 「人生を変えた贈り物:あなたを“決断の人”にする11のレッスン」

アンソニー・ロビンズ 著 河本 隆行 訳
成甲書房 ・2005年7月10日刊・172ページ

著者のアンソニー・ロビンズは、いわば自己啓発界における世界のスーパースターといった形容がピッタリの全世界中で絶大なる人気を誇るコーチングとセミナーを提供している「ピーク・パフォーマー」と称している超一流のコンサルタントであります。

アメリカでは、ケーブルTVな中で時おり流されているアンソニー・ロビンズのセミナーを実録したオーディオ・プログラムのセットがプロモートされていて、それで彼の名前を私も知ることになりました。そのテレビプロモーションも実によくできていて、やはりどんなセミナーなのだろうか、セミナーの中で実際に出席者も参加して行われるという「ファイアー・ウォーク」とは本当のことなのだろうかと、私自身の好奇心の油に火を注いでくれたことを今でも鮮明に思い出します。

彼の名前は日本ではあまり知れ渡っていないように思いますが、それは、他の著名な世界的コンサルタントと比べますと、あまり多くの著書を記していないからだということと、日本で翻訳されているものがほとんどなかったからだという気がします。そこで、今回は待望の彼の新著が日本語に翻訳されてこの夏、7年ぶりに出版に至りましたので、ぜひともご紹介をしたいと思った次第であります。

11から成るそれぞれのレッスンは、きわめてシンプルな内容のものばかりなのでありますが、それだけに著者からの引っ張りこまれるような大きなパワーの源をまさに感じざるを得ません。書の構成も印象的な挿話や実話から本題の中に入っていくように組み込まれてありまして、それがやはり膨大なエネルギーを読む人に与えて、書の中枢部分にぐいぐいと引き込まれていくような組み立てになっているのがとても印象的です。

最初に出てくる大変印象的な話として、彼が実際に経験した「感謝祭での贈り物」という逸話があります。また、ケンタッキー・フライドチキンを創立した、かのカーネル・サンダースが成功するまでの話も非常に面白かったです。そして、「あなたの過去は、あなたの未来と同じではない」というメッセージは、いくつかあるレッスンの中でも、最も今ある私の心の奥底まで響き渡った熱いメッセージでありました。

翻訳も大変こなれていますので、読みやすさにおいては、この手の書籍としては、まさに比類なきものではないかという気がいたします。今の自分を少しでも向上させていきたい、人間として成長したいという方であれば、どなたでもきっとすがすがしい読後感として、明日への希望や人生の感謝を抱いていただける、本当に素晴らしい本ではないかと思います。

*Pacific Dreams, Inc. では、「人生を変えた贈り物:あなたを“決断の人”にする11のレッスン」(成甲書房刊:$24.00 Each, Plus Shipping & Handling $6.00)を在庫しておりますので、ご希望の方は、お電話 (503-783-1390) または、E-mailで kenfsakai@pacificdreams.org まで、ご連絡ください。

Ken Sakai
KenFSakai@pacificdreams.org


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