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Newsletter : Issue No. 48

       翻訳トーク
2006年5月号  アーカイブ
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「翻訳トーク」 2006年5月号のごあいさつ

先月号の「翻訳トーク」では、ラスヴェガスに行ってまいりましたことと当地のコンベンションセンターで開かれましたCTIA Wireless 2006というIT関係の展示会について、描写いたしました。そこでは、サムソン電子とLG電子を中心としたアメリカ家電市場において韓国勢が際立っていることをレポートさせていただきました。日本にいると韓国メーカーのそれほどの躍進振りは、あまり目立ったものではないのかもしれませんが、アメリカでは、まさに日本のメーカーに追いつけ追い越せという気迫みなぎった姿勢が特に展示会や見本市などで如実に感じられます。

以前は、韓国製品といいますと、アメリカの中でも品質はそこそこの低価格製品というイメージがもっぱら主流でしたが、今では、先端を行く斬新なデザインならびに使い勝手のよい機能面の両方で若い層からの人気を博し、決して低価格品というイメージだけでは語れない、存在感のあるポジションを市場で築き上げてきています。その辺のマーケッティング戦略や販売促進活動、広告やPRへ打ち方や潤沢な資金の使い方などは、日本企業も見習うところがきっと多いような気がいたします。

先日も約9年ぶりに車を買い代えたのですが、アメリカ人の知り合いが勤めている地元のカーディラーに出向き、クライスラーと現代自動車のディラーをしている彼のお店から、その関係で、さかんに現代自動車のSUV(Sport Utility Vehicle)を勧められました。それは、現代自動車が5年間、10万マイルまでの無償保証サービスをしているということもあり、これは、数ある自動車メーカーの中では、最高の保証サービスであり、販売上での大きなPR効果になっていることを知りました。(結局、人一倍アメ車にこだわりを持つ私としては、今回もクライスラーの車に決めてしまいましたが、確かに現代のSUVには触手は動いたことも事実です。)

サムソン電子にしても現代自動車にしても、すでにアメリカ国内でR & Dセンターを持っており、多くの優秀なデザイナーを世界中から集めて採用し、新製品の開発や設計をアメリカ国内で行っています。市場があるところで、開発や設計の研究を同時に行うというのは、とて も理にかなったことであるかと思います。しかも韓国人の幹部社員やトップのエンジニアクラスの人間は、アメリカの大学院でエンジニアの学位やMBA(経営学修士)を取得した人間が多く、業務やビジネスのやり方は、きわめてアメリカ的であるようです。また、アメリカ の大学院を卒業した人間をかなりの厚遇で迎え入れ、積極的に登用し、エリート養成しているとのことも耳にはさみました。

昨年、ロスアンジェルスのダウンタウンで翻訳会社を経営している韓国人で、やはりモーレツな勢いとオーラとを感じさせる彼の会社をロス出張の際に訪問したことがありました。驚いたことにロスのダウンタウンの一角であるというのに、周りはほとんどハングル文字ばかり、 彼のオフィスが入っているビルも韓国人のオーナーが所有しているビルだということで、オフィスの賃貸料を聞きましたところ、信じられないほど安価な金額でありました。彼が言うには、「アメリカでは韓国人同士は互いに助け合っている。このあたりのビルに入っている のは、みな韓国からアメリカに来てビジネスで成功する夢を追い求めてきた、最初から金のない連中ばかりだから。」とさらりと言ってくれました。

彼とは、7年ほど前に最初に私が参加したATA(American Translators Association:米国翻訳者協会)の年次総会で会ったのが始まりでしたが、当初から、彼は、パシフィック・ドリームスを目標にしていたと言います。私が彼にとってはメンター(よき助言者、ま たは目標となるような人)であったということを聞かされて、びっくり仰天しました。彼は、今は私の会社よりも人数でも事業規模でも恐らく倍以上の飛躍を短い期間で成し遂げています。韓国と中国にも支社を設け、3カ国間を行ったりきたりしていると聞いています。今度 は、私が彼を目標にしなければならない時期が来ていると思っています。日本の家電メーカーでも総じて同じような状況になってきているのではないでしょうか。私は、純粋に彼らが持つ、韓国人同士のネットワークの強さと日本人が忘れてしまったようなアグレッシブな精 神に畏敬の念さえ抱いております。

Ken Sakai
President
kenfsakai@pacificdreams.org

Pacific Dreams, Inc.
25260 SW, Parkway Avenue, Suite D
Wilsonville, OR 97070, USA
TEL : 503-783-1390
FAX : 503-783-1391

 

 


Ken Sakai
Pacific Dreams, Inc.
President


翻訳事始め − 第 48 回「3%とというアメリカの現実」

4月24日より、ニューヨークのマンハッタンを舞台にして第2回PEN World Voices Festival(主催:PEN American Center)が開かれました。私も参加してきましたというふうに書いてみたいところなのですが、そのようなイベントがあること自体も事前には知っており ませんでしたし、さらにPENというこの国際組織は、International Association of Poets, Playwrights, Editors, Essayists, and Novelistsの略称でありますので、残念ながらなぜかここには翻訳者(Translators)のタイトルさえ含まれてはおりません。

世界33カ国から135人の著者が参加したこの大がかりなイベントは、アメリカ国内の主な有力紙でもこぞって取り上げられ、イベントの模様が報道されました。翻訳者の冠が着せられてはいないPENの大会ではありましたが、"Translation and Globalization"という分科会が きちんと設けられてありました。その分科会でのオープンニング・スピーチを行いましたロスアンジェルス・タイムスの編集者でありますSteve Wasserman氏は、アメリカで出版される書籍の僅か3%が翻訳物であって、その3%というのも技術的なマニュアル本であったり、 参考書関係がほとんどであるという指摘が行われました。比較としてその対極にあるのがイタリアだということで、イタリアで出版される書籍の70%は、翻訳物だということです。

このいささかセンセーショナルな3%という数字が一人歩きした感のある会場内での空気を受けて、分科会での議論がたちまちのうちに白熱し、パネル・ディカッションでは、政治家や報道関係者をはじめアメリカの一般世論がなぜにこうも世界情勢にあまねくも疎く、他国の 文化や言語を理解しようとしないのかという現状を如実に物語る数字であることに対して非難や糾弾の狼煙が各国の文学者や編集者からいっせいにあげられました。それは、とりわけ各国で文学や出版にたずさわる関係者の危機感や焦燥感の上であがないきれないものが あり、自国語で書いたストーリー性もあり、読み物としても超一流な文学作品は英語に翻訳されない限り、アメリカに住む人々のもとに紹介されたり手元に届いたりすることは決してありえないという言語による排他的な現実の世界を強く認識した瞬間でもありました。

逆に多くのヨーロッパ諸国では、「ダビンチコード」や「ハリーポッター」などの翻訳物にベストセラーのトップの座をやすやすと譲り渡してしまい、多くの自国の著名なベストセラー作家たちも自国での出版業界の中にあっても安閑としてはいられないという強い危機感の 中で、執筆をしているという報告もあり、翻訳をする、あるいはされるということは、文学者や出版関係者にとってはまさに両刃の剣となりうるという厳しい現実が潜んでいるのだということを物語っていました。

PENの本大会にご参加された文学者は、ノーベル文学賞を受賞されたアメリカの女性黒人作家であるToni Morrisonをはじめ、各国のノーベル賞候補者級の方々であったようですが、そのような超トップクラスの文学者や作家の集まりにおきまして、翻訳についてこのような 白熱した真剣な議論が戦わされたというのは、何はともあれ、翻訳を生業にする私のような人間から見れば、翻訳に対する認識を高めるという観点から見て大きな前進があったのではないかと思います。

また、3%とという数字にこだわるわけではないのですが、今年の3月に日本で行いました私の「アメリカでの翻訳事情」というJTF(日本翻訳連盟)での講演会の中で、昨年(2005年)は世界の翻訳市場は約1兆円規模に達した模様ですという私の話をアメリカでの翻訳市 場は約1兆円と間違ってお聴きになられた方が多くいらっしゃいましたようで、さすがはアメリカですねというようなご感想を講演にご出席されました方々からメールでその後いくつかいただきました。そのたびに私は、それはアメリカだけではなくて、全世界での数字なので すよとご訂正のメールをすぐにお送り返させていただいておりました。

1兆円のうち、アメリカの翻訳市場がどれだけのものであるのか、私も勉強不足でそこまでの数字をいまだつかんではおりません。しかしながら、3%しか翻訳書籍が出ていないこのアメリカの出版業界においては、翻訳市場は思っていたよりもずっと小さいような気がしてま いりました。また翻訳市場が小さいことによって、世界各国の優れた作家の作品がアメリカではまったく紹介もされず、作家の名前も作品も聞くことさえできないという現実は、本当に悲しむべき事態であります。

アメリカで翻訳されて出版されるものが、ソフトウエアやハイテク機器のマニュアルだけであるとしたら、アメリカの一般の人々が持つ世界観はあまりにも偏った、いびつなものしか生まれてこないような気がします。アメリカが、そして世界がもっとバランスをとって、単に 営利だけを追求するために翻訳をするのではなく、世界の文化が醸し出されて、そのこうばしいような香りが感じられるような翻訳と翻訳者とが将来に向けて育ってもらえないものでしょうか。その道はしかしながら限りなく、長く厳しいものでありましょうが。

Ken Sakai
President
E-mail: KenFSakai@pacificdreams.org

 
 
 

大学2年目が終わった娘の現状報告

今までもこの「翻訳トーク」でたまに話題として書かせていただきま したが、ワシントン州タコマ市にある大学 (UPS:University of Puget Sound) に一昨年入学した娘もすでに大学2年生の全学期を早 いもので、先週終了し、9月までの長い夏休みに突入したところです。 夏休みと聞けば学生にとりましては厳しいアメリカの大学での授業 やレポートから開放されたイメージが浮かぶのですが、今年の娘の夏 休みは、すでにアルバイト漬けの生活が今週から早速スタートしてお りまして、しかも夏の間は我が家には帰らず、大学近くに住む私たち の友人の家に間借りをして、タコマ市にある“Boys & Girls Club"と いう時間外や夏休みの間に子供たち(主に幼稚園から小学生)を預か ってさまざまなプログラムを提供する子供クラブのアート・プログラ ム担当アシスタントとして8月いっぱいまで働くことになりました。

このような夏の間のアルバイトはすべて大学の就職課が斡旋をして くれまして、大学のひとつのスタディ・プログラムになっております。 つまり大学が一種の人材派遣サービスの提供者となって、地元にある 雇用主に対して、学生を派遣し、雇用主は大学に決まった時間給を学 生が実際に働いた時間で大学側に支払いをし、大学が学生にペイチェ ック(アメリカでは、普通給与は小切手で支払われますので、給与の ことをそのように呼びます)を渡すという方式を取っています。娘は、 早くから大学を通じて夏のアルバイト先を探していたようで、自分の やりたかったこととうまくマッチングするような仕事を幸運にも見 つけ出すことが出来ました。

私の妻は、夏休みの間、娘が家に帰ってこないことを少し嘆き悲しん でいるようですが、これも子供が親元からますます巣立っていく中で の通過儀礼のようなものだと私は考えていますので、大いに結構なこ とだと、彼女がむしろ自分でやりたかった仕事にめぐり合えたことを 喜んでいます。昨年の夏は、私の会社(Pacific Dreams)で夏の間ア ルバイトをしましたが、今年はいよいよ「他人の家で飯を食う」とい う状況にあえてさせましたし、本人もそれを望んでいましたので、何 でも自分のことは自分でやっていくという独立心(アメリカで生きて いくためにはとても大切なこと)をはぐくむ良い機会となってほしい ものです。

夏の間、家に戻らず大学のある地元タコマ市に残ったのは、もちろん アルバイト先のこともあるのですが、実は、娘にも背が高くてハンサ ムなアメリカ人のボーイフレンドが出来まして、彼も夏の間は、実家 のあるシアトルには戻らず、大学内でのコンピュータ・メンテナンス のアルバイトを続けるために、キャンパス内の寮に居座り続けるので、 彼との距離を短く保っておきたいというのもきわめて重要な理由の ひとつなのでした。

先週末に、娘の荷物を引き取りに妻と一緒に娘の住むタコマの大学寮 まで行ったときに、初めて娘のボーイフレンドに会い、皆でお昼を一 緒に食べました。娘は、私たちがタコマからの帰り道の途中で、妻の 携帯にひっきりなしに電話をかけてきて、そのたびに、ボーイフレン ドに対する私からの印象を大変気にしていました。(直接、私に話せ ばよいのに、ことボーイフレンドに関しての話題はすべて妻を介して 話をするのです。)

私は、ランチに一緒に入った日本食レストランで、彼はお箸の使い方 も上手だったし、日本食すべてを残さず食べたし、かなり純朴そうな 感じはしたけれど、ポライトで優しそうななかなかの好青年じゃない かとやはり妻を介して、娘に伝えました。それを聞いて安心したのか、 その日は、もう妻の携帯に娘からの電話はかかってはきませんでした。 娘から引き取ってきた大学生活の荷物をガレージにしまい込み、やれ やれ、いつになくとても疲れた週末となってしまいました。


書評 − 「金持ち父さん、貧乏父さん:アメリカのお金持ちが
教えてくれるお金の哲学」
Rich Dad, Poor Dad: What The Rich Teach Their Kids About
Money

今回皆様にご案内いたしますのは、今までご紹介してまいりました書籍とは若干趣が異なります。ですが、日本でも大変好評を博しました書籍でもありましたので、この「金持ち父さん、貧乏父さん」をご購入された方、タイトルだけはご存知の方など、きっと多くいらっしゃ ることではないかと思われます。

ハワイ出身の日系4世である著者のロバート・キヨサキ氏は、いくつかの会社を自分で興し、それぞれに大きな成功を収めてきたバリバリのビジネスマンであったのですが、47歳のときに実質的にビジネス界からは引退をはかり、以来、数々の著作や講演活動などを通して、 普通の人々に対していかにしてお金持ちになるかを教える「お金持ち養成学校の先生」として、精力的に活躍を続けられている方なのです。

全世界で2,000万部以上の売上を記録したこの書籍の中では、キヨサキ氏は、まったく違うタイプの2人の人物(貧乏人のパパとお金持ちのパパ)を仕立て上げて、大変ユニークな資産構築論や株式投資方法などを独自展開してくれています。このような話を書きますと、なん だかとてもうさん臭い話が書かれた本であるかのように思われる方もきっとおいでかとはお察し申し上げますが、それはまずはご自身でこの本を手にとって見てから、ご判断いただけましたらと存じます。

日本にいてもアメリカにいても、会社や仕事あっての生活を全うしながら、それでも個人的には収入は何倍にも増えたらとてもいいだろうし、それでご自分やご自分の家族の人生へのハッピー度がいっそう高まるのであれば、それはひとつの大きな夢であり、理想ではないかと 思うのです。そのようなことが実現可能となるような現実的なヒントを日本人に対しても与えてくれる本というのは、くまなく探してはみても今までほとんど見つからなかったというのが実情でした。

本書は、あくまでもお金持ちになるためのひとつのヒントとその切り口とを読者に与えるだけのものであるかもしれませんが、やはり今までにはない斬新な切り口で、個人としてもっと多くのお金を作ることを通じて、より豊かな人生をご自身で切り開いていけることが出来る ということを示唆してくれる、まさに誰にでも納得でき、実行することの出来る絶好の「お金持ち入門哲学書」ではないかと思います。

*Pacific Dreams, Inc. では、「金持ち父さん、貧乏父さん:アメリカのお金持ちが教えてくれるお金の哲学」(筑摩書房刊:$29.00 Each, Plus Shipping & Handling $6.00)を在庫しておりますので、ご希望の方は、お電話 (503-783-1390) または、E-mailで kenfsakai@pacificdreams.org まで、ご連絡ください。


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