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Newsletter : Issue No. 52

       翻訳トーク
2006年9月号  アーカイブ
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「翻訳トーク」 2006年9月号のごあいさつ

#-A- 様:

今月は、弊社でいくつかのセミナーを日本人向け、アメリカ人向けとそれぞれに開催いたしました。弊社の PR不足であったせいもあり、セミナー参加者数は、期待したほどには集まらなかったのが残念でありましたが、行いましたセミナーそれぞれは、本当にクオリティの高い、参加した皆様の求めていたレベルか、それ以上のご期待さえも上回るような内容ではなかったかと密かに自負しております。

アメリカにある日系企業は、純粋なアメリカ企業と比べて、一般的に従業員に対してトレーニングや研修にかける予算が少なく、トレーニングも OJT(On the Job Training)がほとんどであるということを以前にコラムで書いた記憶がございます。いわゆるクラスルーム(座学)方式のセミナーやトレーニングがあまりなされていないというのが、日系企業では実情のようです。(もちろんそうではない企業様もたくさんのありかと思いますので、あくまでも一般論としてお聴き流しください。)特にマネージメントに関するクラスルーム方式のトレーニングは、日系企業では著しく不足しているように私には感じられます。それでは、アメリカ人のマネージャークラスの人間に提供するようなマネージメントのトレーニングとはいったいどのようなものを指していのでしょうか。

私は特に日系企業の場合でありますと、言葉や文化の違う日本人とアメリカ人との間で起こるコミュニケーションの食い違いや誤謬が頻繁に発生いたしますので、マネージャークラスにはやはりコミュニケーションに関するトレーニングを定期的に提供するのが重要ではないかと考えています。弊社でも異文化コミュニケーションのセミナーを特にアメリカ人向けとして、 "Building Bridges between the USA and Japan"というタイトルで何度も開いてきております。今後は、日本人駐在員向けとしてもそのようなセミナーを日本語で新しく提供してまいります(11月上旬に新しいセミナーを開催予定)。

さらに最近知り得た心理学の手法との劇的な出会いから、人間それぞれが持つ、パーソナリティ・タイプの違いを知り、理解することからよりチャンネルの合ったコミュニケーションが可能となるということを知りました。これはまさにマネージャーには本当に必要なスキルになります。これは、 1970年代にアメリカの臨床心理学の碩学、テービー・ケーラー博士(Taibi Kahler, Ph.D)によって見出されましたPCM(Process Communication Model?)という6つの異なるパーソナリティ・タイプに基づく、心理学でいう交流分析(Transactional Analysis)の手法によるコミュニケーション・チャンネルの解析を行ったものです。

私は心理学についてはまるっきりの門外漢でありますので、これ以上の PCMに関する詳しいお話はここでは差し控えたいのですが、コミュニケーションはそれなりのトレーニングや研修を積むことなしには、経験を積めば自然に上達していくようなものではないということなのです。恐らく、PCMを知っているか知らないかでは、コミュニケーション・スキルの関して、雲泥の差が発生してくるような気がいたします。アメリカやヨーロッパ、そして日本にはPCMのトレーニングを提供することのできる資格を有するトレーナーがいて、その専門のトレーナーからマネージャークラス向け(あるいは一般向け)のセミナーを受けるわけです。アメリカで最初にこのPCMを取り入れたのが、ほかでもないNASA(米国航空宇宙局)であったと聞いています。

また、今回某日系企業様の開発( R&D)部門のエンジニア向けの社内セミナーを日本から冨永信太郎先生(フェローアカデミー講師)をお呼びして行いました。冨永先生の持たれている「空気論」は、日本企業の組織、ならびに集団の持つメンタリティを理解していく上で、大変深遠な理論と解説とがそこにはありまして、出席したアメリカ人エンジニアの方々は、初めて日本人の持つミステリアスな部分にかかわる深層に触

れたと感じていただいたようでありました。ケーラー博士の PCMも冨永先生の「空気論」も人間の持っている(目には見ることのできない)個人あるいは集団の気質を体系化するという作業において、まさに金字塔的な業績をもたらしてくれているのではないかと深い感銘を覚えました。

マネージャークラスのトレーニングに費やすコストは、「コスト」と考えてしまえば、節約する方向につい走ってしまいがちですが、人的投資いう「投資」で考えれば、おのずと予算の立て方や使い方も違ってくるはずです。アメリカの多くの企業は、日本で考えられている以上に社員、特に管理職へのトレーニングをきわめて重要な「投資」として位置付けし、さまざまなトレーニングを社内そして社外で提供しています。その辺の「投資」でもアメリカ企業の後塵を拝することにならないように日本企業、特にアメリカにある日系企業の奮起や計画に今後は期待してまいりたいと思います。

Ken Sakai
President
kenfsakai@pacificdreams.org

Pacific Dreams, Inc.
25260 SW, Parkway Avenue, Suite D
Wilsonville, OR 97070, USA
TEL : 503-783-1390
FAX : 503-783-1391

 

 


Ken Sakai
Pacific Dreams, Inc.
President


翻訳事始め − 第52回「翻訳者へのセミナー提供」

先月号の「翻訳事始め」でもご紹介いたしました VATE (Value Add Trans-cultural Editing;あえて直訳するのをお許いただければ、「付加価値異文化横断的編集」)のご提唱者であります冨永信太郎先生を日本からお呼びいたしまして、今月の中旬に弊社で翻訳者向けのセミナーを行いました。冨永先生は、東京にある著名な翻訳専門学校「フェローアカデミー」の日英翻訳の講師を現在なさっておいでなのですが、過去に海外(東南アジア、アメリカ、ヨーロッパ)での駐在ならびに渡航のご経験が大変豊富で、先生ご自身の貴重な体験などを織り込みながら、まさに翻訳者にとっては「宝の山」のようなセミナーをご提供してくださいました。

日本には、名門のフェローアカデミーをはじめとして、いくつもの翻訳専門学校があり、常に生徒さんを集められています。また、翻訳の通信教育を開催しているところも日本にはいろいろとあるようですが、残念ながらアメリカではそのような専門学校( L.A.にはあるようですが)や通信教育は日本と比べますとほぼ皆無に等しいと申すことが出来るかと存じます。そんな中で、アメリカにいる翻訳者の方々が現実的に受けることの出来る教育の機会というものは、きわめて限定されているということがお分かりになっていただけるかと思います。そんな中でメジャーなものといたしましては、年に1回開かれます、ATA(American Translators Association;www.atanet.org)のAnnual Conference(今年は、11月2日からニューオリンズでの開催)と、やはりJAT(Japan Association of Translators;www.jat.org)主催の年1回のIJET(International Japanese/English Translation Conference)の2つがありますが、IJETは1年交代で日本と海外の英語母国語圏での開催となりますので、場合によってはアメリカでの開催は、数年待たなければならないときが出てきます。(今年は6月に神戸国際会議場で、来年6月はイギリスのバース大学で開催予定)

というわけで、アメリカにいる翻訳者のスキルやレベルの向上はもっぱら本人によるところの自助努力一本にかかっているといっても過言ではない状況を呈しています。もちろん、翻訳は基本的には個人の総合的な技量によってなされる仕事でありますので、個人が自律的にそして恒常的にスキルや知識の獲得に励んでいけば、それはそれで問題はないように思われますが、それでも個人レベルでの研鑽だけではおのずと限界が見えてまいります。そこで、今回トライアル的に行ってみましたのが、冨永先生という翻訳についてトレーニングを提供されることに関しましては、日本でもトップレベルにあります大家の先生をお呼びできたということで、弊社にとりましてもこれはひとつのマイルストーンになったのではないかとさえ感じている次第です。

翻訳者の一般向けセミナーとして今回テーマにいたしましたのは、「英文契約書の理解と契約書の基礎知識」というものでありました。フェローアカデミーでも「英文契約書」の日英翻訳の講義を受け持たれている冨永先生の最もお得意とする分野でもありましたので、今回、躊躇なくこのテーマを選ばせていただきました。本セミナーは、翻訳者の方がご出席しやすうようにと土曜日の午後の時間を使って行いました。 2時間半の設定であったのですが、セミナーは多くのご質問が出て3時間に至り、ご出席された方々はいちおうに深き満足感と達成感があったことをつぶさに感じました。遠くは、ジョージア州アトランタからわざわざこのセミナーのためだけに空路はるばる、しかもレッド・アイ(夜行便のこと)で駆けつけてくださった方もいらっしゃいました。Skype(スカイプ)を利用してご参加してくださることも可能であったのですが、あえて来ることが出来て本当によかったとおっしゃっていただき、セミナーを開催した私たちもとても感動いたしました。

今回は、弊社の社内翻訳スタッフにも冨永先生の契約書のセミナーをご提供していただき、同じく弊社スタッフも先生の卓越した知識と教えることに徹した姿勢に深い感銘を覚えたようでした。弊社スタッフ(正社員)で、一人フロリダで在宅勤務をしている社内翻訳者がいるのですが、彼女も今回は、スカイプを使用して、セミナーの映像もリアルタイムで送りながら参加してもらいました。当初は、スカイプの状態によって、聞き取りにくかったり、映像が途切れたりするのではないかと少々気がかりであったのですが、そのような心配はまったくの杞憂に終わり、臨場感溢れるセミナーを遠方 2,000マイルの遠隔地にいて、感動とともに味わってもらうことが出来ましたのは、まさにスカイプというテクノロジーの賜物でもありました。

このようにスカイプを使うことによって、遠隔地で一人翻訳のお仕事をなさっている方々にも翻訳業界で第一人者の先生の貴重なご講義を自宅にいながらリアルタイムで参加してお聴きしていただくことが出来るようになりました。今後、弊社と冨永先生のホームオフィスとをスカイプで結びまして、このようなセミナーを定期的にご提供していくことを考えております。セミナーのテーマも契約書だけではなく、今後、「特許翻訳」、「法律・裁判用語解説」、「翻訳者に必要な英文法シリーズ(冠詞や助動詞を含む)」(これらはいずれも冨永先生がフェローアカデミーで講義を受け持っているものです)さらに、「文科系翻訳者を技術系翻訳者にするシリーズ」など、いろいろなアイデアを練っているところでもあります。

アメリカにいる翻訳者の皆さんにスキルと知識の向上につながる素晴らしいセミナーならびに教育の機会を弊社でご提供していくのが弊社のビジョンのひとつでもあります。そして弊社の社内翻訳スタッフやコントラクターの方々にもこれらのセミナーに参加していただく機会を通じて、 Pacific Dreamsで仕事をしていくことのひとつのカンパニー・ベネフィットになってもらえるようにしてまいりたいと考えています。翻訳の仕事をしていただく翻訳者(スタッフやコントラクターを問わず)の方々のレベルアップがなければ、翻訳の質のレベルアップも絵に描いた餅で終わってしまいます。そして最終的には翻訳者のレベルアップは、とりもなおさず、翻訳をご依頼していただく私どもの大切なお客様へのベネフィットに直結するであろうことを確信している次第であります。

Ken Sakai
President
E-mail: KenFSakai@pacificdreams.org

 
 
 

アーカンソー州への出張

今月上旬に初めてアーカンソー州まで出張で行ってまいりました。降り立った空港は、リトルロック・ナショナル・エアポート。インターナショナルとは言わないところが、気取らないでいいですね。アーカンソー州リトルロックといえば、そう、クリントン元大統領の出身地で、アーカンソー州の州都であるリトルロックで、大統領になる前には、アーカンソー州の州知事であったのは有名です。

思っていた通りであったのですが、アーカンソー州は典型的なアメリカ南部の田舎の州という趣きで、州の人たちは皆さん南部独特の母音を引っ張ったアクセント(訛り)の強い英語を私たちにもお構いなくしゃべってくれます。日本でいえば、東北地方や九州を訪問してその土地の方言やなまりを聞くのと同じ感じです。この南部訛り(サザンアクセント)のせいか、アーカンソー州の方々は、私の住む西海岸の人たちと比べて、ちょっとのんびりした印象を抱かせてくれます。訪れた町も 100年以上も前の古い街並みが至るところにそのまま残っていて、1世紀前のアメリカにタイムスリップしたような錯覚を覚えます。

滞在したホテルも昔は栄華を極めただろうなというリゾートタイプのホテルでしたが、これほど旧式のホテルに泊まったのは今までにないほどでした。ホテルのスタッフの方々も日本人の私が何でこのような場所にまで来て、 1週間近くも滞在しているのか不思議な眼差しで私を見ていました。そうですね、普通であれば日本人がわざわざここまで1週間も来ることはないでしょうね。そのような本当にアメリカ的な(?)奥深いところまで来れたのことは私のとりましてもとても貴重な体験となりました。湿度も西海岸よりも高く、アメリカでは珍しくセミも鳴いていました。(西海岸にはセミはいませんので、アメリカで初めてセミの鳴き声を聞き、日本の夏を思い出しました。)

現在、私の妻が 2週間ほどイタリアのローマに行っています。9月からローマにある大学まで油絵の勉強で留学している娘に会いに行くためです。妻も相当な親バカですので、また帰ってまいりましたら、イタリアの話や娘のローマでの大学生活のついての状況を聞けることを楽しみにしています。来月号は、そのお話を書くことになるかと思いますので、またどうぞお付き合いください。


書評 − 「ビジネスに日本流アメリカ流はない:グローバルマネージャー入門」
中村 健一 著

東洋経済新報社・2005年5月10日発行・247ページ

著者の中村健一氏はコマツアメリカ(KAC)の前社長で、滞米生活が 通算で25年に及ぶという日本人ビジネスマンの中でもアメリカで早く からご商売をなさってきた日米ビジネス界屈指の草分け的存在であると呼ぶことが出来ます。そのような大先輩がお書きになった本書をひも 解きますと、建機という私がいた半導体の世界とはまた随分趣きの異なる業界の中で、それでも多くの共通項をほとんど毎ページごとに見出すことが出来、思わずフンフンと相槌を打ちっぱなしの読書体験でした。

恐らく日本の子会社にいて、アメリカ企業とのジョイント・ベンチャーも含め、25年前の当時アメリカ中西部支店(シカゴ近郊)の一介のリージョナル・マネージャー(日本語に置き換えればさしずめ営業所長あたりか)から最期は現地法人のトップにまで登り詰めて、アメリカで定年を迎えるという日本人ビジネスマンは、アメリカ広といえども本当に数えるだけだと思いますので、中村さんのアメリカで歩まれてきた体験談は、万人には経験できない非常に貴重なものであるかと言えます。その体験に貫かれたバックボーンはといえば、一般的にアメリカ人の持つ寛大さや公平さ、平等意識、正義感、合理性、行動力、(他人に対しての)感謝の念などに対してとてもポジティブな姿勢を終始持たれていたということで、逆に計画性がないとか、言い訳や責任転嫁がうまいとか,過去を顧みない、何事にもアバウトであるといったネガティブな面を補って余りあるという指摘には、私も深く共鳴した次第であります。

中村氏は、さまざまな例え(Analogy)や図式を用いてまわりにいるアメリカ人を説得し、彼らにモチベーションを引き起こさせるのがとても上手(まさにグローバル・マネージャーたる面目躍如といった感あり)なようで、社内の会議などでお使いになった富士山のチャートやサラダボウルの絵も本書の中で登場していて、読者を「ビジネスに日本流もアメリカ流もない。プロセスやコースは異なっていても、目指すゴールは同じ」だと説得力のある論理を展開してくれています。

ビジネスで使われることの多い英語の慣用句や言い回しが本書内でときおり顔を出してくるのがまた楽しく、勉強にもなり、しかもご本人自ら作られた和製英語や日本語をカタカナ英語にして、社内でアメリカ人も含めた中での共通語に昇格したりと、なかなかユニークな工夫を凝らした具体的方策が随所に出ていて、アメリカでの企業経営におけるヒントになります。建機業界の機械用語もうまくたとえの中に使われていて、さすがは建機トップのコマツさんならではと思わせるのもなかなかのものです。巻末には、中村氏がノートの書きとめられてきたアメリカ人のよく使う慣用表現120が掲載されてあり、これはこれでビジネス英会話のよいおさらいになります。アメリカ人も口語的慣用表現は大好きで頻繁に使いますので、特にビジネス後のディナーやパーティでもアメリカ人との雑談に加わることが出来るようになるという意味でも、貴重な表現集であるかと思われます.

アメリカで働くすべての日本人マネージャーに必読の書ではないかと思いました。わかっているようなことも繰り返してくどいぐらいに書かれてあるところもあるのですが、そのくらい書かれていないと身に沁みてこないものです。著者が自身のビジネス上の自慢話として滞米経験を書かれたというものではなく、25年にわたっての氏の深い洞察力とアメリカ人を真摯に見据えた眼識から得られるとても読後感のよい、好感の持てる体験談となっているので、爽やかです。また、全米における代理店管理のポイントや戦術などの貴重なノウハウも惜しみなく披露してくれていますので、営業職の方にも一読の価値があります。そして当然なのですが、日米ビジネス異文化コミュニケーションに関心のある方でしたら、どなたにでもお薦めしたい良書でもあります。

*Pacific Dreams, Inc. では、「ビジネスに日本流アメリカ流はない:グローバルマネージャー入門」(東洋経済新報社:$30.00 Each, Plus Shipping & Handling $6.00)を在庫しておりますので、ご希望の方は、お電話 (503-783-1390) または、E-mailで
bookstore@pacificdreams.org まで、ご連絡ください。

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