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Newsletter : Issue No. 53

       翻訳トーク
2006年10月号  アーカイブ
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「翻訳トーク」 2006年10月号のごあいさつ

アメリカは、7ヶ月間にもおよぶ日本語で呼ぶところのサマータイム(英語では、普通“Daylight Saving Time”と呼ぶ)が、週末の10月28日(土)の真夜中で終了し、1時間だけ得をしたような標準時間がちょうどスタートしたところです。明日10月31日の夜は、ハローウィーン(Halloween;古代キリスト教での諸聖人の日の前夜祭)で、日没が急激に早まったと感じる後に子供たちがキャンディをねだって近所の家々をご存知の“Trick or Treat!”(お菓子をくれないと、いたずらしちゃうぞ)と言いながら歩き回る光景が始まります。毎年、我が家にも仮装をしたかわいい子供たちが大勢やってきますので、週末のキャンディの買い込みは余念のないところなのですが、訪れる子供たちの数が読めないため、毎年買い込みすぎてしまって、相当余ってしまう年も過去には続出しました。

ハローウィーンは、もともと古代ケルト人の収穫感謝祭がその発端とされ、彼らの暦では1年の終わりは10月31日で、この日の夜は、死者の霊が家族を訪れたり、精霊や魔女が現れたりすると信じられていたそうです。これらのものから身を守るために人々は仮面をつけたり、魔除けの焚き火を焚いていたりしていたというのが、ハローウィーンの起源だそうです。アメリカでは、ジャック・オ・ランターン(Jack-o'-Lantern)と呼ばれるカボチャをくりぬいた中に蝋燭を立てて家のポーチ(張り出し玄関)や窓枠のところに置いておきます。くりぬかれたカボチャの中身はパンプキンパイとなって、時節のデザートとして家々で供されます。娘が小さかった頃は、毎年、 ジャック・オ・ランターンを週末に家族そろって、パンプキンまみれになりながらも作ったものでした。

職場でもハローウィーンの日は、仮装をして出勤してくる人が現れます。近くのスーパーでもプリンセス風の仮装をしたり、魔女がかぶる先が尖った黒い帽子をかぶってレジをする若い女性が見うけられます。こんな私でもアメリカに来て最初の年(1987年)ではなかったかと思うのですが、地元にあるコダック専門の現像会社が、ハローウィーンの仮装写真撮影大会というのを催しまして、妻の誘いもあって、着物を着た女装姿で参加、何と大会参加者投票の中で、ファースト・プライズを獲得してしまったのです。女装をしたのは、生まれてそのかた、生涯そのとき一回切りのことでありましたが(本当です)、優勝できた勝因は、妻がほどこしてくれた「厚化粧の技あり」にありました。(妻は大学時代に演劇部にいて、メーキャップはプロ級の腕前を当時持っていたのです)、化粧後に鏡で見た自分の姿に卒倒しそうになったことを今でも鮮明に覚えています。また当時の私は、信じられないくらいスリムな体型で、色白でしかも長髪でもありましたので、妻から借りて着付けをした着物姿も実にしっくりときまっていて、驚くことにちょっとした色っぽささえ醸し出していたのです。

そのときコダックの現像会社で記念撮影した写真は、私の大切な思い出のアルバムの中に大事に保管されていますが、他人様には決して見せられないものでもあります。そのとき以来、妻の着物も着たことはないですし、メーキャップも一度もしたことはありません。優勝していただいた$100は、その晩レストランで家族や友達とお祝いしたデイナーに消えてしまいました。ただ、ハローウィーンのこの季節が来ると、生涯もう二度と体験できない、あの仮装撮影大会での優勝経験を思い出します。私はまだ28歳、アメリカの新天地に着いたばかりのときで、青春をまだまだ謳歌していたのですね、本当にあの頃は。

様方には、“Happy Halloween!”でありますように

Ken Sakai
President
kenfsakai@pacificdreams.org

Pacific Dreams, Inc.
25260 SW, Parkway Avenue, Suite D
Wilsonville, OR 97070, USA
TEL : 503-783-1390
FAX : 503-783-1391

 

 


Ken Sakai
Pacific Dreams, Inc.
President


翻訳事始め - 第53回 「技術翻訳の要諦」

久しぶりに技術翻訳につきましてのオーソドックスなテーマを今月は選んで、皆様にお届けしてみたいと思います。と言いましても高度な技術翻訳のテクニックについてその秘伝を伝授するようなものではありません。(そのような秘伝があれば、真っ先に私に教えていただきたいものです。)つまり、技術翻訳をする上での“Back to the Basics”ということで、翻訳をする者であれば、誰でも知っているようなことであるかもしれないことなのですが、それらの基本が軽視されている、あるいは忘れ去られている風潮も散見する昨今でもありますので、翻訳者として忘れてはならない基本をまとめてみました。

わかりやすくするために、以下のように箇条書きにして技術翻訳をする上での要点をまとめてみましたので、ご覧ください。

  1. 翻訳の基調は直訳調であること。(技術文書での意訳はことに慎むべきである。)
  2. とにかく専門用語だけは、確実に押さえておくこと。(専門用語が正しくないだけで、翻訳の価値は、半減どころか皆無に等しいという判断さえされかねない恐ろしさが現実にあることを忘れてはならない。)
  3. 専門用語にとどまらず、言葉の統一には細心の注意を払うこと。(文学や随筆などとは異なり、技術文書は、全体を通じて統一感を持つことはきわめて重要な要素であるということを認識する。)
  4. 翻訳文に主語や目的語が忘れずに入っているかどうかを必ずチェックすること。(日英翻訳では、特に重要なことで、翻訳した文章が日本語を誠実に反映させようとしたためか、不完全な文章になっていることがよく見うけられる。)
  5. 翻訳した文章に論理的な矛盾がないかどうかをチェックし、もしそのようなことがあれば、注釈などを付けておき、クライアントに報告すること。(原文上で明らかに矛盾していることもあるため、それはクライアントに知らせてあげることが「親切」というものであり、自分自身の立場を守る上でもきわめて有効である。)
  6. 翻訳文書内にある図や表、イラストなどに含まれている文字や文章の翻訳もなされているかどうか確認のこと。(スキャンされたイメージで入っている場合は、ファイル上からの書き込みができないのだが、それでも注釈形式にして、翻訳がなされていることがクライアントに対してすぐにわかるようにしておくことがやはり「親切」である。)
  7. 専門用語や業界用語を詳しく解説した辞書を購入し、翻訳の際に活用すること。(電子辞書では、訳語は載っていても、それ以上の解説は載っていないので、解説の入っている専門辞書も手元に持っておくことを薦める。)
  8. さらに特定の業界における技術翻訳に的を絞っているのであれば、その業界に関する参考書や専門誌を購読すること。(例えば、半導体業界の技術翻訳を続けていくのであれば、半導体業界に関する参考書や専門誌にも眼を通しておき、どのような技術革新が今現在業界の中で起こっているのかを認識しておくことは重要である。)
  9. その業界に詳しい翻訳者の知己(メンター)を自分のネットワークの中に持っておくこと。(お互いにギブアンドテイクの関係を築き上げることが重要で、お互い関係維持の努力を続けなければならないのだが、えてして、翻訳者には、このようなことが苦手である面が見うけられる。)
  10. インターネット上での検索スキルの上達もさることながら、インターネットに出てくる情報のすべてが決して正しいわけではないので、その見極めのできる技術や専門用語の真贋(しんがん)できる力を養っておくこと。(信頼に足りうるサイトもたくさんあるので、玉石混交の中から正しい情報を瞬時につかめるスキルの構築を目指す。)

上10のポイントをリストアップし、簡単な解説も入れてみました。まだまだこのリストにに付け加えられる技術翻訳の要諦もあるでしょうが、あまり高度なことを加えすぎてもあまり現実的ではなくなりますし、それこそ皆様にとりましても“Overwhelming”となりますので、差し控えさせていただきました。技術翻訳のお仕事もクライアント様あっての賜物でありますのでクライアント・サイドに立った観点から少しでもご参考になっていただけたら誠に幸甚です。翻訳者の皆様、あるいはクライアント様の方々からのご意見をお待ちしたいと存じますのでお気軽に皆様方のコメントをメールでお寄せください。

Ken Sakai
President
E-mail: KenFSakai@pacificdreams.org

 
 
 

FPD インターナショナル2006に参加して

10月18日(水)から1週間ほど東京を中心に日本を訪問してまいりました。10月中旬過ぎの東京は、オレゴンと比べますと、季節の進行度合いが1ヵ月半ぐらい進み方が遅くて、服装の面で戸惑いました。オレゴンの気候は、ちょうど北海道ぐらいの気温ですが、それでも真冬になっても平地では雪が降ることはほとんどありませんので、しとしとと降る雨さえ我慢できれば、まんざらでもありません。オレゴンではすっかり紅葉しているのに対し、東京の紅葉はまだまだのようで、日光の中禅寺湖や北海道では紅葉が真っ盛りでしたので、オレゴンは、日本の随分と寒い地域にあるところと同じなのだなとの認識をあらたにいたしました。

さて今回の訪日は、10月20日に東京全日空ホテルでアメリカの人事管理につきましてのセミナーを東京赤坂でアメリカ向け商用ビザ専門のコンサルティングおよび手続き代行をなさっている(株)グリーンフィールド・オーバーシーズさん(小川卓郎社長)との共催で開いたためのものでした。もうひとつの目的は、10月18日から3日間、パシフィコ横浜で開かれていました、FPDインターナショナル2006に参加することでした。FPDとは、Flat Panel Displayの略語で、液晶やプラズマ・ディスプレイメーカーの展示ならびにFPD製造業を支えている部材・材料メーカーや製造装置メーカーの展示でありました。

FPDの展示会に参加してわかったことは、フラットパネルの製造工程は、半導体の製造工程に似通っているということで、それで多くの半導体製造装置メーカーがフラットパネルの製造装置分野にも進出していることなどがよく理解できました。つまり、半導体製造工程では欠くことのできない、薄膜生成工程や露光工程さらにエッチング工程、検査工程などもフラットパネル製造であっても必須の工程で、パネルそのものがマイクロデバイスチップを形成するシリコンウエーハーのような基板(サブストレート)であるということがある装置メーカー(日立ハイテクノロジーズ)の展示パネルを拝見して確認することができました。

もうひとつの関心事は、FPDメーカーさんの巨大で鮮明なフラットパネルの展示のオンパレードであったことで、展示されていた各社のフラットパネルの中で最大サイズは、パナソニックのプラズマディスプレイで、103インチのサイズの展示がありました。大画面であるにもかかわらず、高繊細、超高画質を実現、しかも上映されていたコンテンツが本当に素晴らしく、3つあったプログラムをそれぞれ飽きもせず、2回にわたって見入ってしまいました。プログラムのひとつは、ニューヨークにあるEast Village Opera Company というクラシックオペラと現代のロックミュージックを見事に融合させた音とパフォーマンスの視覚とを併せ持ったものでした。液晶ではNo.1のシャープやコンテンツに注力しているSONY、そして世界最大のパネルメーカーである台湾のAUO(友達光電)、そしてサムソンなどそれぞれに大型フラットパネルの展示を華麗に競い合っていましたが、大型画面の鮮明さと高品質のコンテンツとにより、私は、パナソニックのプラズマディスプレイにこのたびの軍配を上げたいと思いました。


書評 - 「日本の人事部・アメリカの人事部:日米企業のコーポレート・ガバナンスと雇用関係」 Embedded Corporation
サンフォード・M・ジャコビー

東洋経済新報社 ・2005年11月3日刊・347ページ

著者のサンフォード・M・ジャコビー氏は、UCLAアンダーソン経営大学院教授で、雇用問題専門の歴史的分析を行っています。日米の大手企業の人事部に対して、膨大なインタビュー調査を行った結果をふまえてまとめ上げたのが本書で、人事部というとどちらかといえば企業の中では黒子的役割である地味な部門に光を当てて、日米のそれぞれの特徴について歴史的論評を交えながら執筆した異色のテーマを持った書籍ではないかと思います。

日米の人事部に存在する差異として、日本の人事部のポジションは歴史的に高い地位に置かれ部門としての規模も大きかったという事実に対して、アメリカの人事部の社内で占める地位は相対的に低く、規模も日本の半分以下でものであったという指摘は、私としても新しい発見でありました。しかも第1次世界大戦前のアメリカの大企業では、人事部というものが存在さえしていなかったというのは、驚きでした。(存在していたのは、雇用部と福利厚生部であったということです。)一方の私自身は、日本で働いていた6年余りのと歳月では、人事部門というものを経験したことはまったくありませんでしたので、私としては日本の人事部という組織を理解できるまたとない貴重な書籍となりました。

 

日本で働いている方々、特に人事部にお勤めの方々には、アメリカの大企業における人事部とその歴史的変遷というものを知る上でまたとない労作である本書は一読の価値があります。人事部として社内の中でどのような機能を果たし、権限を有しているのかということを日米間で比較検討できるように記述されてあります。また大変参考になる情報や調査データが全編を通じて至るところに満載されております。最終章は、日本とアメリカの人事部の進むべき方向性と展望とを示唆してくれていて、取締役会の機能不全を招いた一連の企業不祥事を経験したアメリカの大企業の多くは、組織志向の強い雇用制度を打ち出し、社内的には、財務主導型であったコーポレートガバナンスを修正し、人事経験者を外部取締役員として招聘する新しい動きがあるという点など、人事の最新の流れについてまでを適格に本書に取り入れてくれています。

本書は、細かな注釈が数多く付けられているのですが、それらの注釈ひとつずつもていねいに翻訳されていて、著者が大学院教授であるということもあり、データを引用した出典文献やその背後にある事実関係なども大変几帳面に記載されている点は、とても好感が持てますし、資料を探す上でも役立ちます。このような日米の人事部を比較検討した書籍というものは例がないのではないかと思いますので、日米いずれかにおきまして人事関係に携わる方にとりましては、必読の書といたしまして、ご推薦させていただきます。

*Pacific Dreams, Inc. では、「日本の人事部・アメリカの人事部:日米企業のコーポレート・ガバナンスと雇用関係」(東洋経済新報社刊:$44.00 Each, Plus Shipping & Handling $6.00)を在庫しておりますので、ご希望の方は、お電話 (503-783-1390) または、E-mailで bookstore@pacificdreams.orgまで、ご連絡ください。

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