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Newsletter : Issue No. 55

       翻訳トーク
2006年 12月号  アーカイブ
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「翻訳トーク」 2006年12月号のごあいさつ

 

とうとう今年最期の営業日に今月(12月)号の翻訳トークをお送りする羽目になってしまいましたことをまずは皆様方にお詫び申し上げます。原稿はそこそこ書き上がってはいたのですが、先週いっぱいまでカナダの首都オタワまで出張していて、帰りのデンバー空港が大豪雪で2日半閉鎖されたおかげで帰りの便に大幅な遅れと支障が生じ、大変な思いをしてポートランドまで戻ってまいりました。そのようなことと年末までにどうしても仕上げなかればならない翻訳の締め切りなどがあり、この「翻訳トーク」が延び延びになってしまいました。

さて、言い訳するのはこのぐらいにいたしまして、今月号は、12月6日(水)から3日間幕張メッセで行われましたセミコンジャパンからのご報告となります。先月号の「翻訳トーク」でもご紹介いたしましたように、今回初めて毎年恒例でありますセミコンジャパンに出展社として初めて弊社としてブースを借りて幕張メッセのイノベーションホール一角<ベンチャー・パビリオン>での出展を行いました。ご存知のようにセミコンジャパンは世界最大の半導体産業の見本市でありまして、今年は天候にも恵まれ、開催3日間でのべ109,800人の入場者数を記録(恐らく入場者数の新記録更新だと思います)しました。

パシフィックドリームスとしては初めての出展ということで、場所的には、会場ホールの端っこ隅の場所ではありましたが、それでも3日間で恐らく100人以上の方々が遠くから私のブースまで足を運んでいただいたのではないかと思いまして、わざわざお越しくださいました方々には本当に深く感謝を申し上げたい気持ちでいっぱいです。

今回は半導体関係の皆様方には、セミコンジャパン出展のご案内も事前に差し上げておりましたので、それでご足労してくださった方々も多かったと思います。いつもご案内を申し上げております書籍につきましてご注文を時々メールでいただいておりました方々と直接フェイスツーフェイスでお会いすることができましたのは、私にとりまして何よりの喜びであり、またセミコン出展における大きな成果のひとつでありました。ある方からは、「いつもメールを楽しみに読んでいるので、初めてお会いしましたが、初めてお会いしているような気がまったくしませんね」とおっしゃっていただき、私も「そう言われますと、私も初めてではない気がしますし、ちょっと不思議な気持ちですよね」と会話のキャッチボールをともに楽しませていただきました。

今回は、弊社サイドでの人員の都合で私一人しか訪日することができず、一人でブースのきりもみしなければならないということで気が重かったのでありますが、幸いにして東京にあります、米国向けビザ取得専門の手続き代行コンサルティング会社であります(株)グリーンフィールド・オーバーシーズ・アシスタンスさん(www.green-f.biz)の小川社長様と渡辺取締役様のお二人が交互で開催期間の2日間にブースでのご支援をしてくださいまして、本当に助かりました。この場をお借りして心から深謝申し上げます。また、東京の新橋にございますオレゴン州政府駐日代表部(www.oregonjapan.org)のトレードマネージャーであります加藤様が風光明媚なオレゴン州の最高峰として知られております名山マウントフッド(標高3,353メートル)をあしらったポスター4枚と日本語の政府観光案内ガイドとをブースまでわざわざ届けてくれました。日本に来てオレゴン州政府のサポートをこうしていただくことができましたことに深い感銘を覚えました。加藤様をはじめといたしまして、オレゴン州政府の方々にもこの場で深く感謝申し上げます。おかげ様で日本におきまして、そして半導体業界におきましてオレゴン州のPRに少しは貢献することができたのではないかと自負しております。

弊社のブースの方には、私が日頃ご案内をしております書籍に関してご関心をお寄せいただいた方々が多かったものでしたので、来年のセミコンでは、弊社のご案内を出しております書籍を中心として、出版社からのご協力も仰ぎながらの展示にしてみたいと考えております。このように弊社にとりましては、セミコンジャパンは今年初めて出展してみて十分に評価できる成果がありましたので、すでに来年のも弊社で出展することを決めております。このセミコンを主催者で、セミコンの開催成功に多大なご尽力をはかっていただきましたSEMIジャパンの方々に深く感謝申し上げます。とりわけ、初めての出展社でありました私に対して会場にて細かくも暖かいご指導をしてくださいました、黄野部長様、浦田様そして田中様に心から御礼申し上げます。

 

Ken Sakai
President
kenfsakai@pacificdreams.org

Pacific Dreams, Inc.
25260 SW, Parkway Avenue, Suite D
Wilsonville, OR 97070, USA
TEL : 503-783-1390
FAX : 503-783-1391

 

 


Ken Sakai
Pacific Dreams, Inc.
President


翻訳事始め - 第56回「トランスレーターズ ハイ」

翻訳という仕事は、今までにこのコラムでも書いてまいりましたように、細かい神経を使う地道な作業の連続であり、完成するまでに本当に息の抜けないものになります。そこで何となく「翻訳は大変な仕事なんだ、でもその割にはあまり報われない仕事なんだ」というような誤ったメッセージが伝わってしまっていては大変と思いまして、一年の終わりにあたりまして少々自省の念を込めましてこのコラムを書いております。しかしながら、翻訳者にしか味わえない仕事の醍醐味というものが翻訳の仕事の中にも間違いなく存在するということも事実であります。では翻訳の仕事の醍醐味とはいったい何であるのか、自分の経験を照らし合わせて皆様にお伝えしてみたいと思います。

アメリカの人気探偵小説ものの翻訳を継続して翻訳なさっている売れっ子の翻訳家の方が、ある雑誌のインタビューの中でおっしゃっていたことがあったのですが、翻訳者としての自分自身が小説のストーリーの中に溶け込んでいって、次に来る台詞を読まなくても「ああ、次はこうなるのかな」ということが感覚的につかめる、このような状態で翻訳できた作品は、後から読んでみても翻訳した言葉に躍動感と力に溢れていると表現されていました。逆に書いてある内容がよくわからずに徹底的に調べてあげて訳したものには、機械的な言葉使いになってしまう傾向にあると申されておりました。

これは、何も探偵小説ものだけに適用される翻訳者の心情ではなく、まさに翻訳者が翻訳するときに体験する普遍的な経験則ではないかと思います。私どもが通常翻訳をするビジネス文書や技術文書の場合であっても、翻訳者が書いてある内容にある程度、自分自身を投影することができなければ、翻訳の完成はできても、なんだか力ずくでねじ伏せてやっつけたというような印象が残り、決して後味のよいものにはなりません。逆に、自分が今まで経験してきた専門分野や業務について書かれてある内容のものであれば、「これは自分が翻訳をするために書かれたような文書だ」と確信し、「もう誰にもこの翻訳は渡せないぞ」というような気持ちになります。その様な心理状態の中で翻訳する時間は、まさに至福のひとときであり、マラソンランナーが感じるところのランナーズハイならぬ、「トランスレーターズハイ」という心境が訪れます。

私の知り合いで日本の自動車関係の技術翻訳を専門に行っているアメリカ人女性の翻訳者を知っています。彼女は週末であっても、気が乗れば近くにあるお気に入りのジャズのかかっているコーヒーショップにPC持参で出向き、カプチーノをすすりながら和英翻訳をしている時間が自分にとって最も生きがいを感じる時間だと私に話してくれたことがありました。私の大学時代の専攻は、化学でしたが、その後の職業生活でもっぱら半導体製造技術の世界にどっぷり浸かっておりましたので、電気や機械、デバイスそして半導体製造装置などといった分野の翻訳依頼が私に来れば、それはまさに自分の天職の仕事がやって来たと感じるようにさえなりました。

翻訳のもうひとつの醍醐味としては、誰も知らない未知なる世界に翻訳者を導いてくれるという体験があります。もちろん、日常の業務の中では、ある決まった分野での翻訳依頼が来るのがほとんどではありますが、まれにまったく経験もしたことのない分野や技術の翻訳依頼の入ることもあるのです。以前、あるアメリカ人の発明家が日本への特許出願を行うに際して、その特許公開仕様書の翻訳をしたことがあったのですが、発明家のその奇抜なアイデアに度肝も抜かれたことがありました。その様なアイデアが特許になるということ自体、自分にとっては知る由もないことでありました。

よく私の会社には、「自分は英語が大好きだから翻訳をやりたい」といって、翻訳者のポジションに応募されてくる方が少なからずいらっしゃいます。私の経験から言うのですが、英語が大好きなだけで翻訳をするというのは翻訳者になるための動機としては十分ではないように思います。英語を通して何がやりたいのかというところまで突き詰めて考えたことがなくて、翻訳ならできるのではないかというのはちょっと甘いのではないかなと感じます。英語を通じて、言葉の世界、専門分野や異文化などを勉強し、認識していくことによって、まともな翻訳が少しずつ出来るようになるような気がします。つまり、少なくとも「トランスレーターズハイ」を感じるまでには、それ相当の経験と時間、そして場数が必要ではないかと思う次第です。新しい年が来るのに先立ちまして、私からのアドバイスとしてご理解いただけましたら幸甚です。

Ken Sakai
President
E-mail: KenFSakai@pacificdreams.org


 

書評 -「ドラッカー入門:万人のための帝王学を求めて」
上田 惇生著 ダイヤモンド社 ・2006年9月22日刊・232ページ

12月6日から3日間、千葉の幕張

昨年11月11日に(あと8日で)96歳の自身の誕生日になられる前にしてお亡くなりになられた、近代マネージメントの創始者であり、現代社会最高の哲学者と呼ぶことのできる碩学、ピーター・ドラッカー氏を追悼し、とりわけ多くの企業家に多大な影響を与え続けた彼の功績と経歴とを偲んだ、上田惇夫氏(現:ものづくり大学名誉教授)のドラッカー論に関する入門編の集大成が本書であります。上田氏は、日本で紹介されているドラッガー氏すべての著作の翻訳を1970年代前半から現在まで30年以上にわたって取り組んでこられた、日本を、いや世界を代表する生粋の「ドラッカリアン」(熱烈なるドラッカー・ファンを世界ではこのように呼ぶらしい)であります。

著者の上田氏は、実にドラッカー氏が1909年からお亡くなりになる直前の2005年までに執筆した著書42冊の日本語翻訳を手がけた方であるが故、本書における上田氏の執筆の書き方自体がまるでドラッカー氏がまだ健在で、社会生態学者として今の世の中をいっこうに冷めやらぬ好奇心いっぱいの目を持ってして俯瞰(ふかん)した真に味わい深いスタイルでの文体を提供してくれているかのごとく感じられてしまうところが、ドラッカリアンの一人であるこの私にとりましても、読み進んでいくにつれて心愉しくなって仕方ありませんでした。

特に面白かったところは、ドラッカリアンが二人以上集まってドラッカー氏の著作について論じ合うことがあるとするならば、「そんな読み方があったのか」とお互いが驚くことになるという少し風変わりな指摘でありました。また世界中には今までにさまざまなドラッカー論が生まれてはきてはいるものの、その批評の展開の仕方は、それぞれが際立った違いを発揮しており、きわめて私的で特徴的なドラッカー論となっているというのもひとつのドラッカーらしさではないかと感じた次第です。

ドラッカー氏がカバーをしようとした守備範囲の広さとその奥行きの深さは驚異に値するもので、上田氏の観察によると20代の半ばごろから2、3年に一度は、まったく新しい学問分野を徹底的に集中して極めようとする習慣を氏はとり続けていたということで、カバーしている学問体系は実に30体系近くに達するであろうということであります。これらの学問体系が氏の脳裏の中で新しく出会い、衝突を起し、融合し、爆発して生まれてくるのが氏の著作であったというのです。「ドラッカーは山脈である」と称した経済学者がいたというのですが、「山の向こうにまた山がある」というほどに彼の社会全体そして歴史と現在に関する深遠な追求の姿勢は誠に尽きないものがありました。

かつてドラッカー氏を取材した新聞記者から「ところであなたお仕事は何ですか?」という問いに対して「58歳になりますが、まだ何になりたいのかわからないのです」と答えたという逸話が残るというのも多くの学問体系を極めた彼らしさであるということが出来るかと思います。ドラッカー氏の著作を読んだだけでは特に問題の解を直接解いてくれるような回答をすぐにもらえるわけではないのですが、問題解決に向けての不断の歩みを進めていくプロセスや方向性を与えてくれるところに特に日本人がしっくりとくるところの氏の魅力がこれからも生き続けることだけは間違いないことでありましょう。

Pacific Dreams, Inc. では、「ドラッカー入門:万人のための帝王学を求めて」(ダイヤモンド社刊:$30.00 Each, Plus Shipping & Handling $6.00)を在庫しておりますので、ご希望の方は、お電話 (503-783-1390) または、E-mailで bookstore@pacificdreams.orgまで、ご連絡ください。


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