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Newsletter : Issue No. 56

       翻訳トーク
2007年1月号  アーカイブ
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翻訳トーク」 2007年1月号のごあいさつ

明けましておめでとうございます。

旧年から引き続きまして皆様方からの「翻訳トーク」のご愛読、誠にありがとうございます。 月並みではありますが、よりいっそう充実した内容となるよう、本年も精一杯向上を重ねてまいりたいと存じます。今後ともおつきあいをいただけますよう、何とぞよろしくお願い申し上げます。

早速ですが、弊社の昨年の業績などをここで簡単に振り返ってみますと、2006年前半までは、ほぼ目標通りのけっこうなハイペースで仕事や受注が取れていたものの、年後半は残念ながら翻訳関係での大型プロジェクトが一気に失速した状況となってしまいまして、通年での目標達成を無念にも遂げることができませんでした。良いときもあれば悪いときもあるのが企業経営の常なのではありますが、受注や業績が落ちてきたときには、どのようにしてそれに対処したらよいのか、経営者としてはまだまだ山門の小僧であります自分の無力さを肌身で随分思い知らされた次第でした。

やはり弊社のようなスモールカンパニーでは、コスト管理やコスト削減なども重要なのではありますが、企業にとって最も肝心である売り上げが伸びていかなければ、経営上において対処できる手段というのは、ドラスティックな人員削減などを別にすれば、極めて限られてしまうというごく当たり前のことなのですが、自分にとっては大きな教訓を得るに至りました。そして私の弱点であるのかもしれないのですが、アメリカ企業では普通に行われるようなドラスティックな削減策だけは心情的にどうしても避けたいという意思が何はともあれ真っ先に働いてしまいます。

ということで、2007年の最大の課題は、通年を通していかにして仕事量を安定化させ、継続的に(特に翻訳関係の)仕事を受注していくかという点に絞られるのではないかと考えています。翻訳という仕事はその性格上、それほど季節的変動などによって仕事量が左右される業務ではないはずですので、基本的には弊社での間口を大きく広げ、お客様から発生するさまざまな翻訳ニーズをその都度、的確にすくい上げていくことのできるプロジェクト管理遂行能力や社内の体制などを社員の協力と理解の下に早速に再度検討し直してみたいと思います。

翻訳事業に次いで弊社での第二の屋台骨を担いでくれる事業になるようにと昨年から企画とリソースを注ぎ込み、プログラム数を増やし始めております、セミナー事業につきましても今年は社内外のエキスパートの方々などに幅広くご協力を呼びかけまして、さらに本格的にもっと多くのプログラムを新設し、年間スケジュールなどもきちんと組んでまいりたいと考えています。セミナー事業に専念することが出来るように、弊社で今後行いますセミナーは、すべてPacific Dreams Institute(パシフィックドリームス・インステチュート)という名称の下にプログラムを組んでまいる所存でおります。そして、これらのセミナープログラムは、アメリカならびに日本の両方で年間を通じて展開していくことができるようにスケジュールや内容を早急に決めまして、皆様にもご連絡してまいりたいと存じます。

昨年私はアメリカ国内での通訳や商談などのための出張などが多かったせいか、3回しか日本に行くことができませんでしたので、今年は最低でも4回は、訪日するつもりで予定を立てております。今年最初の訪日は3月中旬頃になりますが、東京でセミナー(日米コミュニケーション術 & 米国人事管理セミナー;いずれも日本の企業様との間のジョイント・セミナーの形になります)をすでにいくつか行う予定が組まれております。セミナーの詳しい内容や日時などは近く追って日本にいらっしゃいます皆様方に適時ご連絡させていただきます。

それでは、またまた月並みではありますが、健康で、公私ともどもに充実した1年をお互い過ごすことができますようにと祈願いたしまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。

Ken Sakai
President
kenfsakai@pacificdreams.org

Pacific Dreams, Inc.
25260 SW, Parkway Avenue, Suite D
Wilsonville, OR 97070, USA
TEL : 503-783-1390
FAX : 503-783-1391

 

 


Ken Sakai
Pacific Dreams, Inc.
President

翻訳事始め - 第57回「よみがえるグレート・ギャツビー」

私は書籍のご案内などをさせていただいている立場上、著名な大手有名書店などが出しておりますベストセラーリストの発表を新聞やネット上で毎週のように見る癖をつけています。12月の紀伊國屋新宿店におけるトップ10の中の堂々第7位に、中央公論社から村上春樹氏の新訳で単行本として昨年11月に出版されましたばかりのスコット・フィッツジェラルドの代表的な名作「グレート・ギャツビー」が食い込んでおりますのを発見いたしました。

この小説は、その昔、ロバート・レッドフォードがギャツビー役、ミア・ファローがディジー役で映画化され、私が高校生のとき(映画の製作年度は1974年で、かのフランシス・フォード・コッポラが監督を務めています)に渋谷の駅前にある映画館で見て、とても悲しいラストシーンであったことがほのかに記憶に残っています。映画を見た後で、感銘を覚えましたものですから、原作を(もちろん)翻訳物(野崎孝訳、新潮社文庫、1957年)で読んだこともうつろにではありますが覚えています。

私は、まだ村上春樹訳の「グレート・ギャツビー」をこちらに取り寄せして読んでみたわけではありませんので、昔の野崎さんの翻訳と比べて村上氏の新訳がどうだこうだというような批評を試みるつもりは毛頭ありませんし、それはできません。ただし、1925年に書かれ、1920年代を舞台にしたアメリカの小説が80年以上の歳月を経てあらためて日本の超人気作家によって翻訳されて再び日本でベストセラー入りしたことに関してちょっとした驚きと感慨とを抱きました。

ご存知の通り、村上春樹氏は日本を代表する当代きっての現代小説家の旗手で、小説のみならずサリンジャーの「キャッチャー・イン・ザ・ライ」などのアメリカ文学の中ですでに翻訳されて久しい代表的な作品を新たに翻訳なさり続けています。今回の「グレート・ギャツビー」も彼自身が小説家として目標にしてきたというフィッツジェラルドの代表作に対して満を持して臨んだ仕事であったということができます。

村上氏は、「翻訳者として、小説家として」と題した訳者あとがきの中で、「翻訳する基本方針」として「現代の物語にすること」と「独特の素晴らしいリズム」をできるだけ生かすことに心がけたと語っています。そのために、「小説家であることのメリットを可能な限り活用してみようと、最初から心に決めていた。要所要所では、小説家としての想像力を活用して翻訳を行った」(以上、日経新聞12月10日号からの抜粋)と記しています。

さらに村上氏は、日経新聞社とのメールでのやり取りの中で、記者からの質問に答える形で「翻訳というのは、やればやるほど奥の深い世界で、これはよくできたということよりは、このあたりは心残りだったということの方がずっと多かった。表面的な功名心みたいなものをできるだけ消すのが翻訳の第一義であるというのが、僕の翻訳感です。」(以上、同じく日経新聞12月10日号からの抜粋)さすが、日本の村上春樹まさにここにありという気概溢れた翻訳論をご披露していただき、翻訳家が述べる以上のインパクトを「グレート・ギャツビー」を通じてまさにこの世の中に問いかけてくれた気がしてなりません。

こうなってまいりますと、村上春樹訳の次の翻訳作品は何だろうと思わず期待をあらわにしてしまいます。一説にはレイモンド・チャンドラーの名作「ロング・グッドバイ」の村上訳も間もなく刊行されるとのこと。そのほかに、カポーティなどの比較的現代に近い作品の翻訳も俎上に上がっていると聞きます。

稀代の小説家が自分の価値観と好みとでおびただしい昔の名作の中からその作品を選び、翻訳を新たに行うことによって、とうに忘れかけていた名作の息吹きが再びよみがえる、しかも、現代風な言葉遣いや表現を駆使することによって、時代感覚は最新のものにも通じる、まさにそれこそが時代を超えた名作の名作たるゆえんであるかと思います。それを実現することのできる村上氏のような小説家がいることがとてもうらやましく感じられるのと同時に、翻訳という仕事の枠組みに新しい光を投げ入れてくれた村上氏のような小説家の出現をこれからも心待ちにしてみたいと思う心境でもあります。

Ken Sakai
President
E-mail: KenFSakai@pacificdreams.org

 
 
 

 

娘のローマ留学報告

ローマに美術の勉強で留学しておりました娘の真理恵(まりえ)が12月17日(日)のフランクフルトからのルフトハンザ直行便でポートランドに無事戻ってきました。9月から12月半ばまでの1学期間だけをテンプル大学ローマ校で美術を中心に留学生活を体験しておりました。テンプル大学は、本校は、ペンシルバニア州フィラデルフィアにある大学なのですが、世界中にキャンパスを持っておりまして、ローマでは、主に美術系大学として美術専攻の学生を中心にアメリカから送り込んでいます。

ですからローマに留学したとはいいましても、大学はたまたまローマにあるアメリカの大学でありましたので、授業もイタリア語のクラス以外は、すべて英語で行われ、学友もすべてアメリカ人の生徒であったということです。私も娘を空港まで出迎えに行った後は、翌日から1週間、カナダのオタワまで出張で出かけておりましたので、娘と留学の話をじっくりできましたのは、クリスマスと年末年始のお休みに時に入ってからでありました。

娘は、留学中に撮った多くの写真を見せてくれましたが、カメラはもちろんコンパクトなデジカメでありましたので、“Face Book”といういわゆるアメリカではポピュラーなSNS(ソーシャルネットワークサービス)を使って作成した娘自身のブログに掲載されておりまして、写真を見るのもインターネット上のブログにいちいちアクセスしなければならないというのも、私年代からしてみるとけっこう面倒なことのように感じるのですが、娘にしてみれば、仲の良い友達にもいつでも見てもらえるからブログの方がよっぽど便利なんだと主張しています。

美術専攻の娘は、さすがにローマの主要な名所旧跡はくまなく足で稼いで見回ったものとみえ、有名なスペイン広場やベネチア広場、パラッオォ・マッシーニにあるヴィラ・メディチの建物など観光ガイドブックで目にしたことのある有名な建造物が至るところに娘の撮った写真には写っていました。留学中は、ローマの中でも有名な建造物がひしめきあうコルソ通り近くのアパートに学友との共同生活をしていたとあって、大学とアパートの間を徒歩で毎日片道45分かけて歩いていた途中でさまざまな写真を撮っていたようです。

留学中に娘が制作した油絵や、デッサン、そして版画についても作品のいくつかを自宅の居間で披露してくれました。特に版画については、娘も本格的に制作するのは今回が初めてであったようで、多様な制作工程を熱心に説明してくれました。驚いたことに、その制作工程のほとんどは、半導体用ウエーハ微細化工程でありますリソグラフィやエッチングの工程とほぼ原理的にはまったく同じであるのです。

そういえば、リソグラフィLithographyの語源は、Lithographから付けられておりまして、リトグラフとは、「石版画」のことを指し、何枚も彫刻された石版にそれぞれの色のインクをつけ、厚めの紙に順次押し付けて制作した版画のことをいうものです。半導体製造におけるリソグラフィも、この石版と回路パターンを刻み込まれたフォトマスクとをちょうど置き換えてみれば、さもありなん、理論的にはまったく同じ製造工程であることがわかります。エッチングEtching(食刻法)にしても娘はドライエッチDry EtchとウエットエッチWet Etchの2つの技法を制作授業中に習得したというのですから、半導体工程そのものの起源をたどっていけば、中世にローマで生まれた版画製作技術にその源があったのだということを改めて認識した次第です。

そして油絵の制作授業では、やはりローマ伝統の技術である遠近法の習得をすることができたということで、遠近法を習う前の油絵と遠近法を習得した後での油絵との出来には、深みがあり奥行き感と立体感とを醸し出す見事な絵画になっていることが絵画にはまるで素人の私にも一目瞭然としてわかりました。

最後にアメリカ人の友達とベニス、フォローレンス、アッシジ、そしてスイスのインターロックンまで鉄道とバスとを旅行をした写真をたくさん見せてくれました。スイスでは氷河でできた山のアイスロッククライミングに友達と一緒に挑戦したということで、若いうちでなければできないようなことを思う存分やってきたことを証明してくれました。

 


 

書評 - 「ザ・マインドマップ:脳の力を強化する思考技術」 トニー・ブザン & バリー・ブザン 著 神田 昌典 訳 ダイヤモンド社 ・2005年11月2日刊・318ページ

ロンドン出身のトニー・ブザンは、「脳のスイスアーミーナイフ」と呼ばれて親しまれている思考と知性発展のためのツールであります、マインドマップの発明者です。社会経済学者で兄のバリー・ブザンからの助言と協力とを得て、共同執筆という形をとって本書が最初に生まれたのは、1993年のことでした。さらにその日本語版としての翻訳書が刊行されたのは、それから12年経過した後のことでした。世界では、その間約1,000万部もの本書の売り上げがあったといいます。

人類が進化モデルの過程として誕生してからの約4万5,000年の間、今日ほど発展段階上での大転換点に当たる世紀はないと冒頭で述べられています。それは、今日の脳に関する神経生理学の飛躍的な発展から、人間の脳には推定で1兆個の脳細胞と100億個のニューロンがあり、さらに脳細胞から放射状に広がっているシナプスによって、瞬時に他の1万個の脳細胞と連結し、結果として1の後にゼロが28個つく組み合わせによる脳の無限大なる驚異的なパワーが生まれることがわかっているからです。

そのような脳の持っている潜在的なパワーの95%以上は持ち主の本人によって生涯まったく使われることなく、存在するだけだとすれば、確かに少しでも脳の持つ潜在的なパワーを活用できるような技術を求めるのは理にかなった自然な方向であるかと思います。その方向を具体的に示してくれているのが、マインドマップであり、マインドマップを使うことによって、視覚的パターン、イメージ、空間的把握、連想、ゲシュタルト(独語で「全体性」という意味)を1枚の紙の上に投影してくれるのです。マインドマップは、今までのノート作りや記憶術に取って代わる画期的な手法であり、創造的思考能力が強化される理想的なテクニックであるとその手法の革新を本書の中で惜しみなく開示してくれています。

マインドマップを使うことによって特に効果が上がりそうな具体的活用例としては、ノートとり(マインドマップ・ノート)、スケジュールの作成、プレゼン資料の作成とプレゼンスキルの向上、記憶力の向上、コミュニケーションによる問題解決、会議での有効利用などが多くの具体的な事例を集めて示されています。私も読後に早速、年頭のスタッフミーティングにおけるアジェンダ作成で使ってみました。また、これから具体化させますパシフィックドリームス・インステチュートのスケジュール作りでもマインドマップは、威力を十分に発揮してくれるように思います。

本書の中でひとつだけ難があるとすれば、それは翻訳の質にあるのではないかと感じました。明らかに日本語の文章がおかしい箇所が数ヶ所ありましたし、“BOI”というのが繰り返しでてくるのですが、本書ではカッコでくくって「基本アイデア」とやはり繰り返しが何回も出てきて、ちょっと辟易しました。原文を読んでおりませんので、原文ではどのように書かれているのかわかりませんが、翻訳者としてもう少し工夫することができたのではないかと思い、とても惜しまれる点です。翻訳者というよりは、エディット(編集)する側の出版社の問題であるのかもしれませんが。

 

*Pacific Dreams, Inc. では、「ザ・マインドマップ:脳の力を強化する思考技術」(ダイヤモンド社刊:$38.00 Each, Plus Shipping & Handling $6.00)を在庫しておりますので、ご希望の方は、お電話 (503-783-1390) または、E-mailで bookstore@pacificdreams.orgまで、ご連絡ください.

 


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