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Newsletter : Issue No. 57

       翻訳トーク
2007年2月号  アーカイブ
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「翻訳トーク」 2007年2月号のごあいさつ

早いもので、今年も1月はあれよあれよという間に過ぎ去り、すでに 2月も後半戦です。2月は28日しかありませんので、それこそあっと いう間に3月がきてしまうものと思われます。英語では、"Times fly before we know it!" とアメリカ人はよく口にするのですが、過ぎ去る 時間の早さのせいで、今までやってきたことをついうっかり忘却の彼 方に追いやってしまわないうちに今年に入ってからの弊社での私の 行動や活動を皆様にシェアしながらここで整理してみたいと思いま す。

毎年1月の第2週、日本では新年のあいさつ回りに御忙しい中を、ア メリカでは恒例でありますの2つの大きなエレクトロニクスの展示会 がほぼ同時期にスタートします。ひとつは、ラスヴェガスのCES (Consumer Electronics Show)で、もうひとつは、サンフランシス コのMacworld Expoです。どちらの展示会も今まで行ったことがな かったものですから、前々からぜひ一度参加してみたいと考えていま したところ、Macworld Expoの見学にお越しになられるお客様がい ることがわかり、Macworldを視察しながら、打ち合わせをサンフラ ンシスコで行いましょうということになりました。そこで、迷うこと なくMacworldを見るためにサンフランシスコに飛び立つ予定を立て ました。

サンフランシスコは、いつもやはり毎年恒例で7月半ばに行われます セミコンウエストに参加するために夏に行くことが多いのですが、1 月の時期に行くのは初めてで、夏行ったときも、時々寒かった思いを することがありましたため、ポートランドと同じような感覚で厚手の コートを着込んで出かけました。出発する日のポートランドの朝は、 氷点下の冷え込みでしたので、カシミアでできたイタリア製コートを 私が選んだのは最適な選択でした。サンフランシスコも着いた日は、 日中は10度ぐらいの気温で、カシミアのコートを着込むほどの寒さ でもなかったのですが、地元の人たちは、サンフランシスコでは今日 は滅多にないほど寒い日だと話していました。

毎年の夏のサンフランシスコは、世界中からの観光客で賑わい、セミ コンに期間中はどこのホテルも満杯状態になりますが、Macworldの ショー全体の大きさもよくわかりませんでしたので、早めにホテルを 予約しましたが、1月のサンフランシスコは、どこも夏のような観光 客に溢れた賑わいはありませんでした。むしろ静かなたたずまいのサ ンフランシスコに接することができて、夏の風情とは異なったサンフ ランシスコの街をそれなりに楽しむことができたように思います。

さて、肝心のMacworldの中身ですが、規模的に言ってセミコンウエ ストの約半分ぐらいのショーではなかったでしょうか。ダウンタウン にあるモスコーニセンターというコンベンションセンターで行われ るショーの最大手がセミコンウエストで、次に大きいのがこの Macworldだとサンフランシスコの日航ホテルに勤める人から聞いた ことがありましたが、Macworldは、セミコンと比べますと思ってい たよりもかなりこじんまりとしたショーでした。

たまたま私がモスコーニセンターの会場に入ったときは、中央にあり ますステージでは、アップルTVについてのプレゼンが行われていま したので、私もそのプレゼンにしばらく付き合って聞き入ってみまし た。操作の仕方や各機能についてのプレゼンは、アメリカ人はプレゼ ンの仕方が上手だとよく日本人の方からはセミナーなどの中でコメ ントをいただくわけなのですが、アップルTV担当のプロダクツ・マ ネジャーであるその女性の方のプレゼン内容は、私が多くの方々のプ レゼンを見てきた中でも恐らく最高レベルの大変洗練されたもので ありました。テレビ番組や映画はもちろんのこと、自分の撮った映像 や写真、音楽などすべてが自在に編集可能な模様でして、アップル TVといってもメタリックなデザインはまさにノートパソコンという 出で立ちでとてもテレビだとは外見からは思いもつかないような体 裁でした。

Macworldの会場には、セミコンの出展者や参加者と比べてみますと 明らかに年齢層が若く、またミュージシャン風の人やグラフィック系 アーティストが断然多いのもこのMacworldの大きな特徴でした。実 際にバンド演奏などがいくつもあり、それらをMacに接続して使え る機器を通じてiTuneやiPodに取り込み再生するデモが会場内で盛 んに行われておりました。ブース出展している企業は、ソフトウエア メーカー、プリンターメーカー、デジカメメーカー、iPodの接続機器 メーカー、ディスプレイメーカー、Mac用グッズ販売会社などで、そ の場で商品の販売も行っていました。アップルはアメリカの企業なの で、出展している企業はアメリカのメーカーが多く、日本企業はプリ ンターやデジカメメーカーを除いてはほとんど出ていなかったよう に思います。

私は1日違いでアップルのカリスマCEOでありますスティーブ・ジ ョッブのiPhoneのプレゼン発表には立ち会えなかったのですが、 iPhoneの前評判はアメリカでは上々のようです。ただ会場でも発売 開始が今年の6月ということで、ガラスのケース越しにしか見ること ができず、実際に手の取って感触を確かめてみるというところまでは いかなかったのがとても残念でした。値段は4GBモデルで2年間の サービス契約で$499ということですが、けっこう高額な価格設定に しているというのが巷での反応です。このiPhoneの発表があった後、 シスコシステムズがiPhoneという商標登録を2000年にすでに行っ ているということで、アップルを提訴しました。続けてカナダにある コムウェーブテレコムという電話会社がシスコよりもさらに昔に遡 って商標登録を出しているということで、シスコとアップルの双方を 提訴するという三つ巴の訴訟にまで発展しています。スティーブ・ジ ョッブの言葉を借りれば、5年は先行しているというアップルらしい 新機能のいっぱい詰まったこのiPhone、訴訟合戦でますますニュー ス性だけは、発売開始までの間しばらくは先行し続けることはどうも 間違いないようです。

Ken Sakai
President
kenfsakai@pacificdreams.org

Pacific Dreams, Inc.
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TEL : 503-783-1390
FAX : 503-783-1391

 

 


Ken Sakai
Pacific Dreams, Inc.
President

翻訳事始め - 第58回「異文化間に架ける橋としての翻訳」

クロス・カルチャー、すなわち異文化間におけるコミュニケーション や意思決定に絡んで発生する諸問題が企業間では頻繁にあることは、 あらためてここで指摘するまでもなく、皆様方もきっと今まで何度も ご経験をされてきたことかと思います。そこには、日本人同士あるい は日本にいるだけであったのなら、まず発生しないような問題が、海 外との取引や海外進出が増えることに比例して、以前には気づきもし なかったようなこととして海外との、そして異文化圏の人々との接触 によって、食い違いやギャップとなって現れてくるようになりました。

一例をあげてみますと、日本人が持つ「品質」に対するこだわりとい うか、完全主義に近い品質に対しての考え方が海外生産を展開する日 本の製造業の中ではしばしば問題の発生源にあげられます。例えば、 日本企業がアメリカで製造工場を建設して、現地生産を始めていく場 合に、アメリカ人の現地採用者が普通に持つ「品質」と日本の本社工 場で働く従業員の持つ「品質」の定義やコンセプトが当初あまりにも 大きな開きがあり、それを埋めていく作業や教育で多くの日本企業は 大変な苦労をすることになります。それは、アメリカ人の持つ一般的 な品質に対しての考え方が「動けばよい」というものであるのに対し て、日本人は、究極的には、「不良品ゼロ」というのがまさに品質で あるという概念が根底にあるからなのです。現実に品質に対するこの 両国民の乖離は極めて大きなギャップであるといわざるを得ません。

翻訳の世界の話に戻りまして、言葉を単に他言語に置き換えただけで はとても十分ではないといったケースが往々にして出てくることが あります。それは、何も翻訳することに世って内容が改ざんされたり、 飛躍されたりするということでは毛頭ないのですが、忠実に翻訳をし ていてもオリジナルの言葉が持っているコンセプトが微妙に異文化 間で異なることが起因しているからだと思います。上記で使った「品 質」の例からもおわかりになりますように、日本とアメリカで考えら れている「品質」の概念には、両国の文化的な違いが色濃く反映されて います。

日本の企業文化では、高品質を追求していくことによって、社員やチ ームのモラールや規律を高め、プロセスの不断の改善を愚直に継続し ていくことから、会社の目標を達成していくという企業文化がありま す。アメリカの企業文化では、もともと会計用語で「ボトムライン」 と呼ばれる、会社の収支決算報告での結果が最も重要視され、結果が 出るまでのプロセスは、あまり細かく規定したり管理したりしない、 むしろ社員の自由な発想や手順にまかせておいて、とにかく結果が出 ればよしとするという考え方を貫きます。日本の完全主義的な品質の 追求というのは、逆にコストがかさんで損益分岐点が押し上げられ、 ペイしないのではないかという意識が働いているように思えます。

実際に翻訳を続けていてもっとも難しいことだと感じるのは、単に 「言葉」は訳すことが出来ても、その言葉の持っている概念まではな かなか完全には表現できないという点ではないかと感じます。異文化 間による言葉の持っている概念の違いまでは、辞書でも引くことは出 来ませんし、人から教えてもらったり、本を読んだりしてみても概念 の奥底にあるものまでも理解できるという場面もおのずと限られて しまいます。それは、異文化の中に自らが飛び込んでみてはじめて、 個人の経験として成功も失敗も含めて体得しなければなかなか得る ことができないという世界であるからにほかなりません。

かつて南アフリカ共和国の大統領を務めたネルソン・マンデラ氏には、 以下のような有名なメッセージを発しています。“If you talk to a man in a language he understands, that goes to his head. If you talk to him in his language, that goes to his heart.”

弊社は、顧客の皆様方からクロス・カルチャーの視点に立って翻訳作 業をすることを旨とし、異文化間のギャップを埋めるようなアプロー チができる翻訳会社だという評価をいただいております。それは大変 光栄なご評価なのですが、しかしながら、先にも申し上げました通り、 言葉の持っている概念までをひとつの文化から異なる他の文化に正 確に伝えることは並大抵のことではありません。弊社もそのような翻 訳会社を目指して不断の努力を続けているに過ぎず、そのレベルにま で到達する道のりには、多くの知識やスキル、そして経験が必要であ り、まだまだ「道遠し」と言わざるを得ません。突き詰めて言えば、 翻訳とは異文化間に橋を架ける最初の作業ではないのでしょうか。異 文化間に存在するギャップを考慮に入れずして、品質の高い翻訳は決 して生まれてこないということをあらためて肝に銘じてまいりたい と存じます。

Ken Sakai
President
E-mail: KenFSakai@pacificdreams.org

 
 
 

月に講演会・セミナー開催のため訪日

私は、3月12日の週に1週間ほど東京にまいります。今回の訪日の 目的は、3月12日の週にいずれも東京で3回のセミナーを行うから です。これら3回のセミナーのテーマはすべて異なったセミナーにな りますので、私としてはこれはかなりのチャレンジとなります。それ では、どのようなセミナーを東京で行うのか、日程順にご紹介いたし ます。

3月13日(火)14:00 ? 16:40 「ウエブサイトの翻訳とアメリカにお ける翻訳業界事情」 場所:翻訳会館(107-0052 東京都港区赤坂8-5-6) 主催:(社)日本翻訳連盟 (JTF)翻訳環境研究会(www.jtf.jp)

セミナーアジェンダ:
- ウェブサイト翻訳のプロジェクト・プロセスフロー
- コンテンツマネージメントシステム(CMS)の導入 - 翻訳後のステップアップ:ローカリゼーションへの対応
- インカントリーレヴュー(ICR)の導入
- ローカリゼーション後のステップアップ:“バーチャルオフィス” の設定
- 新しいビジネス・デベロップメントへのアイデアやヒント
- リソースの開拓とコラボーレーションへの展開
- 米国の翻訳ビジネス市場の現状と今後の展望
- 米国での翻訳会社経営の課題と今後の展望

セミナーのお申し込み:JTF(日本翻訳連盟)事務局 寺田大輔様 TEL:03-3555-2905   info@jtf.jp
http://www.jtf.jp/jp/east_seminar/east_top.html#0609

3月15日(木)13:00-17:00 「酒井流日米コミュニケーション術」 場所:東京八重洲ホール902号室(103-0027東京都中央区日本橋3- 4-13 新第一ビル) 主催:(株)スターブルーム(www.starbloom.jp)

セミナーアジェンダ:
- 日米間における異文化コミュニケーション
- 現代のアメリカ人を理解する
- 日米間の企業文化比較
- コミュニケーションスタイルの比較
- 効果的なEメールコミュニケーション術
- ビジネスで役立つ英語表現
- 効果的なフィードバック術
- 米国の翻訳ビジネス市場の現状と今後の展望

セミナーのお申し込み:(株)スターブルーム 三浦美由紀様 TEL:075-932-7184   mail@starbloom.jp
http://starbloomseminars2.blogspot.com/

 

3月16日(金)13:00-17:00 「アメリカ人事管理セミナー」 場所:東京全日空ホテル「プリズム」(地下1階)(東京都港区赤坂1-12-33) 主催:(株)グリーンフィールド・オーバーシーズ・アシスタンス
www.green-f.biz

セミナーアジェンダ:
- 連邦公正労働基準法 (FLSA: Fair Labor Standard Acts)
- 従業員手引き (Employee Handbook )の作成
- 職務内容記述書 (Job Description )の重要性
- アメリカ人社員の採用手順と採用基準
- アメリカの給与体系とベネフィット
- セクハラの防止とその対策
- 日系企業おけるハイブリッド企業文化の育成

セミナーのお申し込み:(株)グリーンフィールド・オーバーシーズ・アシスタ ンス 小川卓郎様
TEL:03-5776-1020   info@jtf.jp
http://www.green-f.biz/service/service03_2.html

ということで、これらセミナーへのご参加を何卒ご検討のほど、どう ぞよろしくお願い申し上げます。


 

書評 - 「局所クリーン化の世界」
原 史朗 著
工業調査会 ・2006年12月10日刊・248ページ

今月ご紹介する書籍は、主に半導体前工程や液晶ディスプレイの製造 設備で使われておりますクリーンルームと、さらにその先にある局所 クリーン化について語った、この分野では入門書的なとてもわかりや すく書かれました技術書です。著者の原史朗氏は、つくば市にありま す(独)産業技術総合研究所エレクトロニクス部門の主任研究員の方 です。私も原氏の講演をセミコンジャパンの中でお聴きしたことが以 前ございました。

「局所クリーン化」というのは一般的には聞きなれない言葉ですが、 著者の定義付けは、「人とモノの単純な共存状態から分離技術を活用 した新しいモノづくり」をしていくための生産方式であるかと定義す ることができます。つまり製造や開発に関わる設備における空間全体 を人のいる空間と製造物だけの空間とに分離して生産やモノづくり を行う方式であります。その本質的な事例としては、搬送容器や製造 装置がカプセル化されていることにあるということで、著者は、本書 の中でこれをEncapsulated Production System (EPS)、つまりEPS 方式と呼んでいます。

本書では、このEPS方式というのがキーワードとなっておりまして、 人間の生産現場の変遷として、町工場からクリーンルーム方式の工場 に、そして局所クルーン化としてのEPS方式へと移行してきた経緯 をわかりやすく解説してくれています。私もかつて製造技術者として 三菱シリコンアメリカ(現SUMCO USA)で働いていた80年代終わ りから90年代半ばぐらいまでの当時は、まだ大型のクリーンルーム 全盛の時代でありまして、局所クリーン化という概念は半導体製造業 界でもまだあまり一般的ではありませんでした。

しかし90年代も半ばを過ぎますと直径200mmのシリコンウエーハ の製造が盛んになり、クリーンルームの建屋建設費用も莫大な投資額 が必要になり、しかも200mmの大きさのウエーハサイズを取り扱う ために自動化が飛躍的に進み、そのための新しい概念やアイデアをベ ースにしたさまざまな生産システムが生まれてまいりました。まさに そのひとつがこの局所クリーン化の生産方式であり、最初に製品化さ れた実例としては、Standard Mechanical Interface(SMIF)という 200mmシリコンウエーハ用の搬送ボックスシステムでありました。 著者は、このSMIFシステムを応用して開発されたさまざまな製品を やはり事例としてとりあげ、局所クリーン化への具体的な発展開発の 検証をしてくれています。

私どものお客様は、半導体製造業界に携わる企業様とそこでお仕事を されている方々がとりわけ多ございましたので、少し技術的な内容の 書籍であるかとは思いましたが、個人的にも交友関係があり、日本の モノづくりを研究者の立場から追求されております原氏の新著をご 紹介させていただきました次第です。半導体製造や液晶製造にご関係 のある方々には、ぜひともご推薦したい、クリーン化技術に関しまし てのうってつけの入門書になるものではないかと思います。

*Pacific Dreams, Inc. では、「局所クリーン化の世界」(工業調査会 刊:$36.00 Each, Plus Shipping & Handling $6.00)を在庫しており ますので、ご希望の方は、お電話 (503-783-1390) または、E-mailで

bookstore@pacificdreams.orgまで、ご連絡ください。

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