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Newsletter : Issue No. 59

       翻訳トーク
2007年 3月号  アーカイブ
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「翻訳トーク」 2007年 3月号のごあいさつ

3月12日(月)から1週間ちょっと東京に行ってまいりました。年に3回ほど毎年日本には出張(主に営業と打ち合わせ)で行くのですが、今回の訪日の主目的は、セミナーで講演することにありました。何と、3月12日の週は3回のセミナーを東京で行い、しかも3回のセミナーのテーマならびに講演内容はいずれも異なるという、誠にもって無謀な試みとなった次第でありました。

今まででも東京でセミナーを何度もやってきた経緯はあるのですが、週3回というのは、これは新記録の更新でありまして、3月16日(金)での最後のセミナー終了時には、本当に精根尽き果てたというような一種放心状態に襲われたものでありました。今回どのようなセミナーをしたのかと申しますと、以下のようなセミナーでありました。

3月13日(火)午後2時 ~ 4時40分「ウエブ翻訳の先端情報とアメリカの翻訳業界事情」
主催:日本翻訳連盟 (URL: http://www.jtf.jp)
場所:翻訳会館

3月15日(木)午後1時 ~ 5時「酒井流日米コミュニケーション術」
主催:(株)StarBloom (URL: http://www.starbloom.jp)
場所:東京八重洲ホール

3月16日(金)午後1時 ~ 5時「アメリカ人事制度と人事管理術」
主催:(株)グリーンフィールド・オーバーシーズ・アシスタンス (URL: http://www.green-f.biz)
場所:東京全日空ホテル1階「天空」

いずれのセミナーにも30名様前後のご参加者がございまして、おかげ様でセミナーは自画自賛をお許しいただければ、我ながら、ご主催者側の多大なるご尽力とにあいまってすべて大成功したのではなかったかと思っています。実際、セミナー終了時には必ず、セミナーの評価アンケートを参加者全員にご記入いただいているのですが、満点5の中で4以上が多く、大方のご参加者が私のセミナーには満足していただいたことがわかります。

これらセミナー、今後とも日本を訪問しに行く際には、3回とは言わず、毎回1回でもよいので、継続して行っていければと考えています。すでに10月後半に、グリーンフィールドさんとの共催で、また「アメリカ人事管理」のセミナーが行われることが決まっています。できましたら、今年は、6月にも訪日したいと考えていますので、そのときやはりどこかの場所か会社様でセミナーができたらと切に希望しています。

私のセミナーに出たことのおありのある方がいらっしゃいましたら、セミナーのご感想をお寄せいただけましたら、とてもありがたいです。まだまだ私のセミナーで改善できる点が多々あることだろうと思いますし、時間配分や会場のことなどにつきましても、アドバイスをいただけましたら幸甚に存じます。今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。

Ken Sakai
President
kenfsakai@pacificdreams.org

Pacific Dreams, Inc.
25260 SW, Parkway Avenue, Suite D
Wilsonville, OR 97070, USA
TEL : 503-783-1390
FAX : 503-783-1391

 

 


Ken Sakai
Pacific Dreams, Inc.
President

翻訳事始め - 第59回「サービス産業としての翻訳業界」

日米ビジネス間での差異でよく取り上げられることは、ホワイトカラーの生産性の違いで、日本のホワイトカラーの生産性がアメリカのそれに比べて著しく低いという点がまことしやかに語られています。そしてその延長線上に、日本のサービス産業全般における生産性の低さについてもよく指摘がなされます。私たちの属しています翻訳業界は、まぎれもなくサービス産業のひとつです。それでは、果たして日本の翻訳業界の生産性は、アメリカの翻訳業界と比べてそれほど見劣りがするものなのでしょうか。逆にアメリカの翻訳業界は、それほど高い生産性を維持しているといえるものなのでありましょうか

私も最近では、日本の翻訳団体(JTF:日本翻訳連盟)からのお招きで、日本での翻訳業界の重鎮の方々を前にして、自弁をふるう機会が出てきたのでありますが、アメリカで開かれますATA(American Translators Association)やALC (Association of Language Companies) の年次総会やセミナーなどに出席した限りにおきましては、サービス産業における生産性云々の話で差がある

ようにはとても見受けられません。むしろ当然のことでありますが、日本とアメリカとのビジネス環境の違いや出身国やエスニック(民族性)がはるかに多様であるということにおきまして著しい差異が明確にそこには認められます。

恐らく世界で最も多くの多国籍企業を有しているこのアメリカでは、母語の英語を“ハブ言語”として、英語から多い場合には世界30数カ国語の言語に翻訳またはローカライズされるプロジェクトが発生してまいります。弊社は、多言語翻訳会社ではありませんので、多言語翻訳会社の下で英語から日本語に翻訳する部分の仕事だけをいただくというケースが多いわけです。やはりこのような多言語プロジェクトの発生する件数とボリュームというのは、アメリカが最も多いものと思います。その面から見ると、確かに多言語翻訳プロジェクトに秀でた会社には、非常にすぐれたプロジェクト・マネージャーの存在があって、よどみなく同時進行的に多言語展開が効果的になされています。

翻訳だけにとどまらない、ローカリゼーションのプロジェクト、例えば、ウエブサイトやソフトウエアのローカリゼーション・プロジェクトであるならば、翻訳後のレビューをその言語が母語として使われている国に住んでいる翻訳者に依頼を出すイン・カントリー・レビュー(ICR) をプロセスの中に組み込みます。これを何ヶ国語も同時にアレンジしなければならないわけですから、担当するプロジェクト・マネージャーの手腕によるところがきわめて大きいと言わざるを得ないことはよくお分かりいただけるかと思います。

英語には、“You get what you paid for.”というやや言い古された表現があります。「結局は、お金を出した分だけの価値しか得ることはできないものなのですよ」という一種格言に近いものです。値段が安いことに魅かれて、一度は試してみるものの、試してみて初めてその内実を知る、例えば、翻訳が機械翻訳のようなものであったとか、グラフィックやレイアウトなどの処理はまったくなされていなかったとか、納期管理がめちゃめちゃであったとか、見積りそ

のものが最初から間違っていたとか、そのような例は枚挙に暇がないほどです。

資本主義が高度に発展を遂げたとされるアメリカで、ビジネスや取引における価格の設定は、最も重要な要素であることに異論はありません。しかし世の中、煎じ詰めて見渡してみれば、やはり“You get what you paid for.”なのではないでしょうか。アメリカでは、機械翻訳だけに頼って、それで出てきた翻訳に大きな誤りがあって、それで顧客との間で訴訟沙汰になったという話が現実に起きています。アメリカはいわずと知れた訴訟社会ですから、価格を大幅に値引いて仕事を取ったものの、このような手抜きのやり方をしたのであれば、顧客からのクレーム程度では済まされないような事態にまで陥るリスクと常に隣り合わせなのです。ですから、アメリカでは、やたらにはサービス産業は、大幅な値引きや客寄せのための破格の価格設定などは出さないものなのです。

提供するサービスには、それ相応の価値があり、価格が安かったからといっても、発生した問題に対しては、自らリスクを取るところまで覚悟しておく必要があります。日本の現状もだんだんと訴訟社会の仲間入りを果たしてきているかのようですので、生産性もさることながら、来るべきリスクを取れるような体制にサービスの体質を変化させていく必要に今後迫られてくるのではないでしょうか。そのようなときには、アメリカのサービス産業のやり方がやはり最も手っ取り早いお手本になるように思われます。その意味で、確かにアメリカは最も先を行っている国であるということがいえるでしょう。

Ken Sakai
President
E-mail: KenFSakai@pacificdreams.org

 
 
 

アメリカでのバーチャルオフィス・バーチャルカンパニー

皆様は、バーチャルオフィス、あるいはバーチャルカンパニーというような言葉をお聞きになったことがおありでしょうか。日本語のペーパーカンパニーともやや異なる意味合いがあります。実は、1990年代後半にアメリカで始まった企業形態でありまして、重要な機能のほとんどをアウトソーシングしているのが大きな特徴です。例えば、半導体業界では、ファブレスという言葉があります。ファブレス、つまり半導体を製造する工場は自社では持たず、社内では半導体デバイスの回路設計と製品のマーケティングやアプリケーションサポートをするのがコア業務になっていて、実際の半導体デバイスの製造は外部(海外)の製造委託先(半導体業界では、ファンドリーと呼んでいます)にすべて委ねています。このようなファブレスの形態が半導体製造の約20%まで現在では占めるまでになってきています。

翻訳会社や広告代理店なども似たような企業形態をこのバーチャルカンパニーとして追従し、かつ進化させてきています。実際に正社

員として働く人数は、ごく少人数で、多くのコア業務は、社外にいる独立したフリーランサーに発注して仕事を請け負ってもらっています。また、プロジェクトマネージャーと称するコア社員も実際には、自宅のホームオフィスで働いていて、ロケーションもアメリカ全土に散らばっている、あるいは海外までにも散在している場合さえがあります。しかも、プロジェクトマネージャーという肩書きがあっても、正社員ではなく、コントラクター、つまり個人業者として仕事を請けているという場合も数多く散見されるのです。

このバーチャルオフィスあるいはバーチャルカンパニーの持つ強みは、組織の柔軟性にあるかといえます。このような企業形態をとることによって、小さな企業であっても、大企業を相手にしても互角に競争していくことができます。それは、仕事を請け負ってもらっている外部のフリーランサーやコントラクターを社員、非社員の別なく、会社の重要な戦力としてとらえることによって、大きなプロジェクトもこなしていくことが可能であるからです。

実は、このバーチャルオフィス・バーチャルカンパニーのビジネスコンセプトは、アメリカ企業の持つ強さの源泉のひとつであるかもしれないと最近感じるようになりました。契約社会でドライな人間関係と企業文化を持つアメリカにおいては、これは日本企業にとっても一考に値するビジネスの切り口になるのではないかと考えます。

この広大なアメリカの地におきまして、営業やマーケティングを大々的に仕掛けていくことはグローバル展開をすでに成し遂げている超一流企業様であれば話はまったく別ですが、コストも人的資源も膨大なスケールでつぎ込まなければならないため、多くの中小企業様や仮に大手一流企業様でありましても、新しく立ち上げた事業部様ではとうてい出来ないお話となってしまいます。そのようなジレンマを私自身も今までに何度もこちらで感じておりましたので、いかにして効率的にそして効果的に日本にいらっしゃいます企業の皆様方に営業やマーケティング、そしてカスタマーサポートなどの面で、実際のお役に立つことができるかを長年のテーマとして、腐

心しながら深く考えてまいりました。

私がここでご提唱させていただきますものは、まさに「バーチャルオフィス構想」と呼べるご提案です。もし皆様がアメリカに1社でも客先があって、その客先とは主にEメールとFAXで発注などがなされているとします。しかしながら、当然のことではありますが、日米間の時差があって、お互いすぐに話したいときに電話で話をするのが難しいことがあります。また、緊急時や他の新規顧客を紹介したいようなときにも、いちいち日本まで連絡をしなければならないというのは、アメリカにいる顧客の多くにとりましては、けっこうなストレスになります。例えば、そのようなアメリカの顧客のために弊社がアメリカで皆様の会社を代行してアメリカにおけますカスタマーサポートや営業開拓の窓口としましての業務を皆様に代わって務めさせていただくことができます。

また皆様がご希望であれば、すべて御社のお名前にてアメリカでのご商売を代行させていただきます。そのためにアメリカで会社設立をされるような必要はありませんし、人を御社から駐在させていただく必要もございません。もちろんオフィスを構える必要もありませんので、その意味ではやはり「バーチャル」という言葉を使うのはそれなりに理がかなったものと考えます。皆様の会社案内やホームページにもアメリカでの連絡先といたしまして、弊社の住所や電話番号(御社専用の電話番号を簡単に取得できます)を御社のアメリカオフィスとして掲載していただきましたら幸甚です。

アメリカでのカスタマーサポートや営業拡販の例は、あくまでもほんの一例に過ぎません。他にも市場調査、資材や部材の調達・発送、人材交流、トレーニング、技術・業務提携などさまざまな機能を持たせ応用することがきっと可能なのではないかと考えております。さらに現在弊社におきまして、2つの大変快適な個室が空いております。これらの個室は、日本からの皆様にアメリカでの短期・長期の出張時などのオフィスとしてご利用していただくことが可能です。個々の個室には、電話回線、高速インターネット回線がご用意され

ておりますので、ご自由にご使用いただけます。また共有のオフィス機器(コピー機、FAX、プリンターなど)も自由にご使用することが出来ます。

(弊社オフィスは、ポートランド国際空港から車で約30分、ポートランドのダウンタウンまで約15分の距離にあります。オフィスの周りは、木々と季節の花に囲まれた美しい自然環境とに恵まれています。)

長々とここまで書かせていただきましたが、これらバーチャルオフィス・サービスにご関心がございます日本企業のご担当者様がいらっしゃいましたら、私、酒井まで、ぜひとも一度ご連絡をいただけませんか。弊社が日本のお客様のアメリカにおけますビジネスに対しまして、必ずや費用対効果のきわめて高い、付加価値のあるサービスをご提供できますことを確信しております。

Ken Sakai
President
kenfsakai@pacificdreams.org


 

書評 - 「ヤバい経済学:悪ガキ教授が世の裏側を探索する」
スティーヴン・レヴィット & スティーヴン・ダブナー 著
望月 衛 訳
東洋経済新報社
2007年2月14日刊(第11版)・296ページ

正直言って、こんなタイトルの書籍、いったい誰が読むというのだろうかというのが、最初私の第一印象でした。それでもアメリカで2005年に出版された後に、ニューヨークタイムズやビジネスウィークでのビジネス書ベストセラートップ10には、常時顔を出していたので、しごく気になっていました。あるとき、USA Today(アメリカ唯一の全国紙)で出張先ホテルにてたまたま本書について書かれた記事があり、それ以来、次回日本に行ったときには、丸善本店で翻訳本を買って帰ろうと心に決めたものでありました。(英語のオリジナル版を英語で読むには、ちょっと時間的制約があり、きついので、いつも翻訳本が出るのを実は待っています。)

2年に一度、40歳未満のアメリカにいる最も有能な気鋭の若手経済学者に贈られるという、John Bates Clark Medalという賞(一説には、ノーベル経済学賞並に権威のある賞)を2003年に受賞した、名門シカゴ大学経済学部教授である、スティーヴン・レヴィット氏が、作家で著名なジャーナリストであるスティーヴン・ダブナー氏とタ

ッグを組んで執筆されたのが本書で、経済学の範疇に入る書籍としては、異例の全米100万部を優に超えるベストセラーになっています。

本書は、経済学とタイトルには書かれていますが、経済学というと、難しい数式を駆使して経済がわかったふうな計量経済学をする学問とは縁もゆかりもない世界を描いて見せてはいるのがなんとも痛快です。それでもアダム・スミスなどの古典も引用して、人間の心理が引き起こす一種あやみたいな、裏側にある暗黒面が実はデータとして多数収集し、アルゴリズムまで使って分析することによってさまざまな隠れた事実を浮き彫りにさせることができるというその辺の超ユニークな目のつけどころがまさに本書の真骨頂になっているかと申せます。経済学の本であるというよりは、どちらかといえばエンタメ(エンターテイメントの短縮形)系のスイスイと楽しく読めてしまう「社会性のある娯楽的読み物」という感じがします。

日常の中に隠されているさまざまな事象を取り扱っているので、書籍全体としての統一性はないに等しいのですが、拾い上げる事象が一見何でもないようなこと、あるいはすでにもっともらしき説明や理由付けがなされているものであることに対しても、丹念に裏情報を掻き集め、誰も今まで夢想だにしなかった点をついてそれをデータ化、つまりは“見える化”して、とんでもない説得力を読者に抱かせてしまう技量と力量には、著者お二人の経済学者、そしてジャーナリストとしての矜持だと唸らざるを得ません。

私として面白かった題材は、シカゴ教育委員会で実施した標準テストでの先生方の犯したインチキ、農業経済学者兼ベーグルおじさんのお客さん自己申告制によるベーグル販売回収ビジネスなどの話は、とても身近で本当にこれはもう脱帽という感じがいたしました。人間社会のインセンティブが持つ光と影が実によく見えてまいりましたし、9.11以降にベーグル代としてきちんとお金を入れる人が増えたというのもさもありなんですね。

特に長年アメリカで暮らしているので、私には身につまされることがけっこう書かれてあります。私のようなアメリカに長く住んでいる日本人のご同輩の方々には、必読の本であるかもしれません。アメリカ(アメリカだけではないのですが)の持つ現実が裏側(暗黒面)からこんなにもあぶりだされてくるのですから。

*Pacific Dreams, Inc. では、「ヤバい経済学:悪ガキ教授が世の裏側を探索する」(東洋経済新報社刊:$33.00 Each, Plus Shipping & Handling $6.00)を在庫しておりますので、ご希望の方は、お電話 (503-783-1390) または、E-mailで bookstore@pacificdreams.orgまで、ご連絡ください。


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