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Newsletter : Issue No. 61

       翻訳トーク
2007年 6月号  アーカイブ
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「翻訳トーク」 2007 年6月号のごあいさつ

「翻訳トーク」を始めましたのが、 2002 年の 5 月であったと記憶して

います。それ以来毎月欠かさず、「翻訳トーク」の配信を月 1 回行ってきましたのですが、遂に先月、つまり 2007 年 5 月号が日の目をみませんでした。本来なら 5 周年記念号とでも銘打って、いつもより記事も多く掲載して配信するべきところであったのですが、実際は何も記事を書いていない状態が 2 ヶ月あまり続いてしまいました。そしてすでに 6 月も最後の日をこれから迎えようとしているではありませんか。出張が多くてオフィスにいて記事を書いている暇がなかった、確かにそのような言い訳はできないことはないのですが、非常に恥ずかしく残念な思いでいっぱいでした。まあそれでも気を何とか取り直しまして、こうして 6 月号の記事をしたため始めているところです。

さて、先週の水曜日から今週木曜日にかけまして、アメリカ東海岸のロードアイランド州とボストンのありますマサチューセッツ州に来ています。この記事も今、ロードアイランド州のプロビデンスという瀟洒な港町にあるホテルで書いています。西海岸に長く住んでいる私にとって、これほど長く(といっても 9 日間ですが)東海岸に出張で来ていたというのは、本当に久し振り( 14 年ぶり)のことです。先週水曜日から土曜日いっぱいまで、 ALC ( Association of Language Companies )という翻訳会社の業界団体の Annual Conference (年次総会)がプロビデンスのダウンタウンにあるマリオット・ホテルを会場として開催されました。

年次総会と申し上げましても、セミナーやワークショップ、さらにレセプションやディナーなどはもちろんのこと、土曜日午後からのバスツアーでプロビデンスから 1 時間ほど南に下った、ニューポートという、格式ある高級リゾートとして有名な避暑地に参加者と一緒に繰り出す企画がありました。ニューポートは、ヨットレースの最高峰になるアメリカズ・カップ( 4 年に 1 回開催)のかつての開催地であったことやテニスの US オープンのトーナメント戦が初めて開かれた場所としても名を知られているのですが、何といってもこのニューポートでの圧巻は、アメリカ東部の有力者や大富豪たちによって 19 世紀の終わりから 20 世紀の初頭にかけて、夏の別荘(サマー・カッテージ)として建てられた大豪邸の数々(ニューポート・マンションズ)なのです。これら大豪邸の多くは、現在では一般公開されているところがほとんどで、ニューポート郡の博物館として保存され、多くの観光客を世界中から集めています。

数ある大豪邸の中でも代表格といわれているのが、 “ ブレーカーズ ” ( Breakers )と呼ばれている、 16 世紀のイタリアの宮殿を模して建てられた、コーネリアス・ヴァンダービルド 2 世夫妻が 1895 年に建造した別荘です。ブレーカーズとは、大豪邸前に広がる海岸に押し寄せる波の音がブレークするというところから由来しているそうです。ヴァンダービルド氏は、ニューヨーク鉄道会社を起業して、東部の鉄道王として巨万の富を築いた大富豪でしたが、この絢爛豪華な大豪邸に生前住むことができたのはわずか 4 年間、しかも短い夏の間( 7 月と 8 月の 8 週間)だけであったということですから、宮殿のような大豪邸を建てた割には、はかなく短い人生をあっという間に終えてしまったのだろうということが偲ばれます。

このブレーカーズを後にして、ニューポートの市内やショッピング街を散策し、ビーチの方にも行ってみました。ビーチは穏やかな入り江の中にあり、ゆったりと海水浴を楽しむ若い人たちが来ていました。

オレゴンの海岸ではこのような泳ぐことのできるビーチというものは、ひとつもなく、海水が寒流のためとても冷たいのと、波が常時荒いので、オレゴンの海で泳ぐことは禁止されています。ニューポートにいる間は、ビーチに行ってもショッピングをしていても、どこでも時間がゆっくりと自然に流れていくような独特の雰囲気があり、気がつくと数時間にわたって何マイルも歩いてしまいました。

この日は、午後 7 時からニューポートのハイアットリージェンシーホテルの波止場に面した野外レストランで、 ALC カンファレンスの最後を飾る GALA ディナーとなっていました。 GALA とは、もともと “ 祝祭 ” という意味で、催し物の最後に行われる盛大な “ 祝宴 ” という感じになるかと思います。普通、 GALA という言葉がついたディナーは正装をすることが求められるのですが、リゾート地でしかも海岸に面した屋外のレストランで開かれるとあって、主催者側からはカジュアルな服装で、 OK という通達が事前にあったため、今回は、スーツの着用なしでこの GALA ディナーを楽しむことができました。

このニューイングランド地方では、ロブスターの養殖が盛んで、まさにレッドロブスタ―を蒸して、 1 匹そのまま食します。 GALA ディナーはロブスターで、久しぶりに(やはり 14 年ぶり)丸ごとのロブスターをきれいに平らげました。カクテルやワインもそこそこたしなめましたので、すっかりよい気持ちになり、後は帰りのバスに 1 時間ゆられてプロビデンスまで戻りました。まあ、日本でいうとちょっとした豪華な社員旅行みたいではありましたが、一緒に行った人たちは、翻訳会社の経営者ならびに幹部社員の人たちがほとんどで、しかも世界中から集まってきた人たちでありましたので、それぞれのお国柄のあふれた話を聞くことができました。

私の陣取ったテーブルでは、 SDL という翻訳支援ソフトの会社の方々とご一緒になり、その中のセールスマネージャーの方が、ロブスターの本場であるメイン州から来られていて、ロブスターの上手な食べ方を親切にも私たちに指南してくれました。おかげで、私も食べられるところはすべてきれいに平らげることができました。 ALC のカンファレンスは、他のカンファレンスと比べてまさに弊社がどっぷりつかっている翻訳業界そのものの会社経営者の集まりでありますので、同業他社の経営者と話をすることによって得るものは計り知れないところがあります。また、基本的には経営者のカンファレンスということもあってか、他のカンファレンスと比べてみても企画が豪華でなかなか凝っているように思います。裏方としてボランティアでカンファレンスをアレンジしてくれたニューヨークの方の手腕によるところが非常に大きいのではなかったかと感じました。

来年は、 5 月中旬にサンフランシスコのダウンタウンにあります、日航ホテルで ALC カンファレンスがある予定です。ロードアイランドのプロビデンスと比べますと距離的にはぐっと近くなりますので、来年も間違いなく出席するつもりでいます。やはりそのためには、会社経営を健全な状態で維持し、さらに高めつつ、今回のカンファレンスで学んだ多くの実践的な翻訳会社の経営指南術を毎日の実行に移して実りのある結果を次回のサンフランシスコまで数字でたたき出してみたいという新たなチャレンジ精神を静かに燃やしているところです。

Ken Sakai
President
kenfsakai@pacificdreams.org

Pacific Dreams, Inc.
25260 SW, Parkway Avenue, Suite D
Wilsonville, OR 97070, USA
TEL : 503-783-1390
FAX : 503-783-1391

 
 

アメリカに住む日本人が今一番困っていること?

6月は、出張続きだったのですが、プロビデンスに行き前の週にロスアンジェルス近郊のトーランス、そしてさらに少し南に下ったディズニーランドがあることで有名なアナハイムにやはり出張で行ってまいりました。トーランスやアナハイムさらにその中間にあるアーバインなどのロス近郊の市街地は、多くの日本人駐在員の方々ならびにご家族が住んでいらっしゃる地域です。ロスと聞きますと、あまり治安がよくないんじゃないかと思われる方もきっといらっしゃるかと思いますが、これらの地域は、とても安全で日本人にとって快適で住みやすいコミュニティになっています。

日本からいらしている日本人の方々が多く住まわれていれば、当然日本のスーパーマーケットや日本食レストランやコーヒーショップ、日本人向けのさまざまなサービス(美容院や、不動産、クリニック、保険屋さんなど)がいたる所でかたまって軒を連ねているのが見受けられます。オレゴンの田舎からたまたま来た私などの眼には、ちょっとした日本のコミュニティがそのままロス近郊に突然発生したような光景に映って見えます。

もちろん、オレゴンにだってポートランド周辺では少なくとも 25 店以上の日本食レストランがあり、日本のスーパーマーケットだってそれなりにしっかりあるのですが、ひとつロス近郊と比べての大きな違いは、スーパーや日本食レストランでのお客さんのかなりの部分は、日本人ではない方々が多いの比して、ロスの方は大部分が日本人であるということで、私は今東京に来ているのではないかとさえ、つい白昼夢をみているような錯覚にとらわれる感覚を持つほどです。

さて、このロス近郊の日本人コミュニティの中で日本人の方々が今一番お困りになっていることを長年この地域にお住まいになっている私の知己の方からお伺いして知りました。さて、いったいそれは何だと思われますか。日本のスーパーもレストランもほとんどのサービスも日本人が経営しているお店で日常的に日本語にてすべて済ませることができる、海外にいらっしゃる日本人にとってこのような恵まれた環境の中で、しかしながらいまだ日本語では受けられないというサービスが実はあるのです。しかもそのサービスの需要度や必要性は、年々増してきているというのですから、これは考え物です。

まあどこまで事が深刻化しているのかという嫌いは若干あるのですが、このサービス、それは、ペットのかかる獣医さんのことなのです。これだけ日本人の多いロス近郊であっても日本人の獣医さんというのはまだいらっしゃらないようです。最近は、駐在員の方々も引越しの際に日本でお飼いになっている、犬や猫のペットもご家族とご一緒でアメリカの地にやってきます。動物なので人間と同じく病気になったり、ケガをしたりします。しかし、人間のお医者さんはすでに何人も日本人の先生が現地にいらっしゃるのに対して、動物のお医者さんで、日本人の先生というのは今のところ皆無であるそうです。

詳しい内実はよく知りませんが、どうもアメリカで獣医さんになるのは、人間のお医者さんになるよりもむしろ難しいというようなことをどこかで聞いたことがあります。(日本人がいまだ誰もなっていないので、やっかみでそのような風説が広まっている可能性がありますが)また、大学などでも獣医の学科を設けているところもアメリカといえども、非常に少ないような気がいたします。恐らく理工系の強い州立大学で設置されているぐらいではないでしょうか。オレゴン州で言えば、オレゴン州立大学 (OSU: Oregon State University) ぐらしか、獣医学部というのは、そういえば聞いたことがありません。

立派で充実した大学システムを持つカリフォルニアの州立大学であっても、獣医学部を持っている大学はあまりないのではないでしょうか。

ひとつ、日本人の若い方で一大奮起をなさって、アメリカの大学で獣医学部を目指し、獣医の資格が取れれば、ロス近郊の日本人コミュニティですぐさま開業するというような、壮大な(?)人生目標を掲げて挑戦されてみられてはいかがなものでしょう。なまじ、どこにでも最近では珍しくなくなった MBA の取得を目指すよりも、ずっと将来の実利がこちらロス近郊の日本人コミュニティでは約束されているような気がします。ただし、動物好き、ペット好きの人でないときっと長続きはできませんね、獣医さんの仕事というのは。

 

Ken Sakai
President
E-mail: KenFSakai@pacificdreams.org

 
 

 

書評 - 「イン・ザ・ブラック ? 組織的な黒字会社を作る 9 つ

の原則」

“ in the BLACK : Nine Principles to Make Your Business Profitable ”

アレン・ B ・ボストロム & 広瀬 元義 著

あさ出版 ・ 2007 年 2 月 2 日刊・ 223 ページ

本書のオリジナルは、アメリカのユタ州ソルトレイクシティで、ユニバーサル・アカウンティング・センターという公認会計事務所を開設している CPA ( Certified Public Accountant :米国公認会計士)であります、アレン・ B ・ボストロム氏が執筆し、全米のビジネス書としてベストセラーを記録している、この “ in the BLACK ” に対して、東京の恵比寿で会計事務所を開設している(株) FAN アライアンスの代表取締役をなさっている広瀬元義氏の共著という形をとって日本では、新しい書籍に生まれ変わりました。

本書の全編を貫くベースとなっておりますものは、ボストラム氏の著書の中にある「継続的な黒字会社をつくる 9 つの原則」が何回も反復して出てまいります。私は、ボストラム氏の原著も英語でこのたび併せて読んでみたのですが、英語のオリジナルの方がよりシンプルに的を絞って書かれてあるように感じました。日本語による広瀬氏の執筆は、原著に何着もの衣装を履かせているようで、それはそれで日本での経営の実情に合わせるためという意味合いからはむしろ当然のことなのでしょうけれど、変動損益計算書やストラック図などの説明は、かなりの会計上における専門知識を持っている方でもいない限り、十分な理解を得るのは難しいのではないかと思いました。

少なくとも私にはそれらの会計数字の表し方は、今までに習ったり、使ったことがなかったので、やはりピンときませんでした。その点、原著の方は、マーケッティング、プロダクション、そしてアカウンティングの 3 つ(これらを称して経営戦力モデル MPA と読んでいる)の黒字会社になるために必要な基本機能に絞って繰り返し解説をしてくれているだけですので、会計の専門知識がない私のような人間でも英語ではありましたがスイスイと脳細胞の中に吸収することができました。

恐らく(あくまでも私の推測なのですが)今回、ボストラム氏の原著を単に翻訳しただけでなく、広瀬氏による大幅な執筆が書き加えられましたのは、日本では原著の翻訳だけではあまりにもシンプルすぎて一般には受け入れられないだろうという判断がどこかで加わったからではないかと邪心ではありますが、そのように感じられます。そうは申し上げましても会計の基本や黒字会社にするための基本原則に洋の東西を問わないものではないかとも思いますので、このような作業をしなくても、原著の持っているシンプルな説得力はむしろ十分翻訳だけでも伝えられ、本来の基本的な会計に関する基礎知識や経営戦略に色褪せるようなことはなかったのではないかと感じられました。

面白かったのは、いくつかのアメリカで実際にあったとみられる経営上の苦労話や教訓などは、原著にボストラム氏が書いていたものとばかり思っていたことが原著にいくらあってもみてもそれらしき記述は書かれてなかったということでありました。明らかにそれらは広瀬氏が挿入したものであって、それらアメリカで起こったエピソード話は、いっそう現実味と興味とを醸し出してくれて、本社の内容にとてもマッチしておりました。その点に関しましては、広瀬氏の教養の高さと適切なエピソードの挿入にはまさに脱帽の思いでありました。

*Pacific Dreams, Inc. では、「イン・ザ・ブラック ? 組織的な黒字会社を作る 9 つの原則」(朝出版刊: $25.00 Each, Plus Shipping & Handling $6.00 )を在庫しておりますので、ご希望の方は、お電話 (503-783-1390) または、 E-mail で bookstore@pacificdreams.org まで、ご連絡ください。(英語の原著の方もお取り寄せすることができます。原著は、 1 冊 $19.95 ? Universal Accounting Center 刊 - となります。)

 


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