「翻訳トーク」 2007 年6月号のごあいさつ
「翻訳トーク」を始めましたのが、 2002 年の 5 月であったと記憶して
います。それ以来毎月欠かさず、「翻訳トーク」の配信を月 1 回行ってきましたのですが、遂に先月、つまり 2007 年 5 月号が日の目をみませんでした。本来なら 5 周年記念号とでも銘打って、いつもより記事も多く掲載して配信するべきところであったのですが、実際は何も記事を書いていない状態が 2 ヶ月あまり続いてしまいました。そしてすでに 6 月も最後の日をこれから迎えようとしているではありませんか。出張が多くてオフィスにいて記事を書いている暇がなかった、確かにそのような言い訳はできないことはないのですが、非常に恥ずかしく残念な思いでいっぱいでした。まあそれでも気を何とか取り直しまして、こうして 6 月号の記事をしたため始めているところです。
さて、先週の水曜日から今週木曜日にかけまして、アメリカ東海岸のロードアイランド州とボストンのありますマサチューセッツ州に来ています。この記事も今、ロードアイランド州のプロビデンスという瀟洒な港町にあるホテルで書いています。西海岸に長く住んでいる私にとって、これほど長く(といっても 9 日間ですが)東海岸に出張で来ていたというのは、本当に久し振り( 14 年ぶり)のことです。先週水曜日から土曜日いっぱいまで、 ALC ( Association of Language Companies )という翻訳会社の業界団体の Annual Conference (年次総会)がプロビデンスのダウンタウンにあるマリオット・ホテルを会場として開催されました。
年次総会と申し上げましても、セミナーやワークショップ、さらにレセプションやディナーなどはもちろんのこと、土曜日午後からのバスツアーでプロビデンスから 1 時間ほど南に下った、ニューポートという、格式ある高級リゾートとして有名な避暑地に参加者と一緒に繰り出す企画がありました。ニューポートは、ヨットレースの最高峰になるアメリカズ・カップ( 4 年に 1 回開催)のかつての開催地であったことやテニスの US オープンのトーナメント戦が初めて開かれた場所としても名を知られているのですが、何といってもこのニューポートでの圧巻は、アメリカ東部の有力者や大富豪たちによって 19 世紀の終わりから 20 世紀の初頭にかけて、夏の別荘(サマー・カッテージ)として建てられた大豪邸の数々(ニューポート・マンションズ)なのです。これら大豪邸の多くは、現在では一般公開されているところがほとんどで、ニューポート郡の博物館として保存され、多くの観光客を世界中から集めています。
数ある大豪邸の中でも代表格といわれているのが、 “ ブレーカーズ ” ( Breakers )と呼ばれている、 16 世紀のイタリアの宮殿を模して建てられた、コーネリアス・ヴァンダービルド 2 世夫妻が 1895 年に建造した別荘です。ブレーカーズとは、大豪邸前に広がる海岸に押し寄せる波の音がブレークするというところから由来しているそうです。ヴァンダービルド氏は、ニューヨーク鉄道会社を起業して、東部の鉄道王として巨万の富を築いた大富豪でしたが、この絢爛豪華な大豪邸に生前住むことができたのはわずか 4 年間、しかも短い夏の間( 7 月と 8 月の 8 週間)だけであったということですから、宮殿のような大豪邸を建てた割には、はかなく短い人生をあっという間に終えてしまったのだろうということが偲ばれます。
このブレーカーズを後にして、ニューポートの市内やショッピング街を散策し、ビーチの方にも行ってみました。ビーチは穏やかな入り江の中にあり、ゆったりと海水浴を楽しむ若い人たちが来ていました。
オレゴンの海岸ではこのような泳ぐことのできるビーチというものは、ひとつもなく、海水が寒流のためとても冷たいのと、波が常時荒いので、オレゴンの海で泳ぐことは禁止されています。ニューポートにいる間は、ビーチに行ってもショッピングをしていても、どこでも時間がゆっくりと自然に流れていくような独特の雰囲気があり、気がつくと数時間にわたって何マイルも歩いてしまいました。
この日は、午後 7 時からニューポートのハイアットリージェンシーホテルの波止場に面した野外レストランで、 ALC カンファレンスの最後を飾る GALA ディナーとなっていました。 GALA とは、もともと “ 祝祭 ” という意味で、催し物の最後に行われる盛大な “ 祝宴 ” という感じになるかと思います。普通、 GALA という言葉がついたディナーは正装をすることが求められるのですが、リゾート地でしかも海岸に面した屋外のレストランで開かれるとあって、主催者側からはカジュアルな服装で、 OK という通達が事前にあったため、今回は、スーツの着用なしでこの GALA ディナーを楽しむことができました。
このニューイングランド地方では、ロブスターの養殖が盛んで、まさにレッドロブスタ―を蒸して、 1 匹そのまま食します。 GALA ディナーはロブスターで、久しぶりに(やはり 14 年ぶり)丸ごとのロブスターをきれいに平らげました。カクテルやワインもそこそこたしなめましたので、すっかりよい気持ちになり、後は帰りのバスに 1 時間ゆられてプロビデンスまで戻りました。まあ、日本でいうとちょっとした豪華な社員旅行みたいではありましたが、一緒に行った人たちは、翻訳会社の経営者ならびに幹部社員の人たちがほとんどで、しかも世界中から集まってきた人たちでありましたので、それぞれのお国柄のあふれた話を聞くことができました。
私の陣取ったテーブルでは、 SDL という翻訳支援ソフトの会社の方々とご一緒になり、その中のセールスマネージャーの方が、ロブスターの本場であるメイン州から来られていて、ロブスターの上手な食べ方を親切にも私たちに指南してくれました。おかげで、私も食べられるところはすべてきれいに平らげることができました。 ALC のカンファレンスは、他のカンファレンスと比べてまさに弊社がどっぷりつかっている翻訳業界そのものの会社経営者の集まりでありますので、同業他社の経営者と話をすることによって得るものは計り知れないところがあります。また、基本的には経営者のカンファレンスということもあってか、他のカンファレンスと比べてみても企画が豪華でなかなか凝っているように思います。裏方としてボランティアでカンファレンスをアレンジしてくれたニューヨークの方の手腕によるところが非常に大きいのではなかったかと感じました。
来年は、 5 月中旬にサンフランシスコのダウンタウンにあります、日航ホテルで ALC カンファレンスがある予定です。ロードアイランドのプロビデンスと比べますと距離的にはぐっと近くなりますので、来年も間違いなく出席するつもりでいます。やはりそのためには、会社経営を健全な状態で維持し、さらに高めつつ、今回のカンファレンスで学んだ多くの実践的な翻訳会社の経営指南術を毎日の実行に移して実りのある結果を次回のサンフランシスコまで数字でたたき出してみたいという新たなチャレンジ精神を静かに燃やしているところです。
Ken Sakai
President
kenfsakai@pacificdreams.org
Pacific Dreams, Inc.
25260 SW, Parkway Avenue, Suite D
Wilsonville, OR 97070, USA
TEL : 503-783-1390
FAX : 503-783-1391
|