「翻訳トーク」 2007 年 7 月号のごあいさつ
「翻訳トーク」を始めましたのが、 2002 年の 5 月であったと記憶して
毎年 7 月中旬になりますと、きまって私は霧と坂とケーブルカーの街でありますサンフランシスコを出張で訪れます。それは、セミコンウエストという SEMI (国際半導体装置材料協会)主催の北米最大の半導体製造装置および半導体プロセス材料の国際見本展示会がサンフランシスコのダウンタウンにありますモスコーニ・センターという巨大なコンベンションセンターにて毎年この時期に開かれるためです。このセミコンウエストには、もうすでに毎年 10 年以上にわたって欠かさず私は、出かけます。今年のセミコンウエストは、 7/17 (火)から 7/19 (木)までの 3 日間ちょうど行われたところです。
セミコンウエストにまいりますと、その年と今後の業界動向を占う世界の半導体産業全般におけるビジネスの趨勢をかなり正確に見通すことが出来るものです。セミコンに来場される訪問者数や出展ブース数、製品やテクノロジーに関するプレゼンやデモンストレーション、さらに参加者皆さん方の目の輝きなどを通じて、世の半導体業界の全般的な動向を過去の経験則や経緯などからビジネスの予測をすることが可能なのです。浮き沈みの激しい半導体産業での展示会は、年々ショーとしての派手さが失われ、より堅実的で実務的な展示の色彩が色濃くなっているようにも感じています。
さて、幕を閉じたばかりの今年のセミコンウエスト、残念ながら入場者数から言えば、主催者側と出展社側からすると「失望」という言葉が最もふさわしいショーではなかったかと思います。 3 日間の中で、多くの入場者を伴って賑わったのは、中日の 7/18 (水)だけで、最初と最後の日は、内輪の出展社の人たちだけが目立つ、とても淋しいものでした。私がお話をした懇意にしております出展社の方々の多くから、セミコンウエストに 3 日間もかける必要はないのではないかというご意見をたくさんお聞きしました。 2 日間に短くして、ショーとしてもっとメリハリをつけることが問われているのではないかということでした。
今年のセミコンウエストが全般的に低調であった理由は、いくつかその要因が考えられます。まず、今年後半から来年にかけて、こちら北米では半導体デバイスメーカーでの新工場建設などの大きな投資案件がほとんどないということが強く影響しているようです。半導体デバイス大手の中でも常にベスト 3 の一角を占めてきた TI (テキサス・インスティルメンツ)社では、半導体の製造そのものからはすべて撤退して、今後は台湾にある TSMC (台湾積体電路製造)などのようなファンドリー(半導体製造受託会社)にデバイス製造を全面的に委ねるというニュースが最近あったばかりです。
また、これは私の見方かもしれないのですが、セミコンショーも国際的にそれぞれのローカルでのプレゼンスが定着し、例えば、セミコン台湾やセミコンチャイナなどもそこそこ大きなショーとして成長してきているため、なにも台湾や中国の方々がお金と時間とをかけてセミコンウエストまでわざわざ足を伸ばさなくてもすむようになってきているのかもしれません。特に今年のセミコンウエストは、毎年大挙して集団で来られていたアジア、特に台湾、韓国、そして中国からの訪問者が少なかったように思いました。
「毎年代わり映えのしないセミコンウエスト」、端的に言ってしまえばそのような表現にならざるを得ないところが確かにあるような気がいたします。他のセミコンショーでは得られない、セミコンウエストの独自性を今からでも遅くないですので、もう少しそれらを打ち出していかない限りは、アジアでのセミコンが栄える一方で、セミコンウエストの地盤沈下がますます続くような危惧を覚えます。風光明媚な活力のあるサンフランシスコの街の賑わいや美味しいレストランでの食事だけでは、世界中からの半導体業界の技術者やビジネスピープルを今後とも引きつけ続けていくのは容易なことではありません。
セミコンウエストはサンフランシスコで年間を通じて開かれるショーとしては最大規模のもので、セミコン開催期間は、夏のバケーションシーズンとも重なって、ダウンタウンにあるホテルはどこも満杯状態になります。こんなことはセミコンの期間以外はないと地元の観光関係者の知人も話していました。ホテルだけでなく、市内のレストランもタクシーもすべてがセミコンで溢れかえります。セミコンは、サンフランシスコでも一大イベントとしてすでに確立しています。ホテルが一杯で、 2 日目には違うホテルに移動をせざるを得なかった今年の私は、最初に泊まったホテルをチェックアウトするときにホテルのフロント受付嬢から、 "Sorry, we are in a small town." と言われました。地元の人にとっては、サンフランシスコは、スモールタウンだったのですね。そう言われてみると、何となく合点がいくように思えました。
Ken Sakai
President
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