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アメリカから発信! HRMトーク 人事管理ブログ by Ken Sakai

2023年6月21日

HRMトーク2023年6月号「給与に占めるボーナスの位置づけ」

昨年2022年エンドにサンフランシスコにある、Zippia Researchという人材コンサルティングおよびキャリア開発会社が全米の企業にアンケート調査を実施して得ることのできた年間の給与額に占めるボーナスに関する包括的なデータが有り難いことに下記のサイトで公開されています。

www.zippia.com/advice/average-bonus-statistics/

この調査データを見てみますと、アメリカの企業で支払われた平均的ボーナス額は、サラリー(固定)給であるエクゼンプト従業員の場合には年間総給与額の11%分、時間給であるノンエクゼンプト従業員の場合には同じく年間総給与額の5.6%分がそれぞれ該当するという結論を導き出してくれています。そしてそれらボーナスの支払いに関しては、企業の33%が年末(Year-End)ボーナスとして支給しているということです(つまり12月)。他にボーナスを支給するタイミングあるいは名目としては、ホリディボーナスやプロフィットシェアリングボーナス、そして従業員の紹介および採用で功を奏した場合のリファーラルボーナスなどがあるようです。

2022年度のボーナス支給額は、61%の企業で前年度の2021年に比べて増額されているということで、この傾向はパンデミックに突入した2020年からの明確な傾向となっています。これは明らかにパンデミック突入直後からパンデミック収束時期にかけて多くの企業が労働力不足に陥ったこと、さらには企業が想定した年間昇給率を大幅に上回る高インフレ率と物価上昇率の急騰などによって、新規従業員の争奪戦が起こり、そのために多くの企業では固定費として給与を年度途中で改定させる代わりとして、年末のボーナス支払いを駆使させてインフレ率や物価上昇率とのせめぎ合いの中での帳尻あわせを行ったとみるのが妥当な解釈になるだろうと考えられます。

一度、給与を同じ年度内で改定して上げてしまうことになると、それは次回の給与改定時でも当然のことながら、ベース給与額として改定の俎上に上ってしまいます。一度決まった給与を下げるということはアメリカではよほどのことでもない限り基本的に出来ないと考えたほうがよく、やはり期内途中で給与を上げるようなことは極力したくないというのが企業マネジメント側の本音だといってもよいでしょう。それで、今いる従業員を社内でつなぎ止めておくためにも、何とか辻つまあわせをさせたいとしてあえて登場させているのがこのボーナスによる調整ということになります。

一昔前までのアメリカでのボーナス支給の一般的な考え方というのは、企業は利益を出したからこそ、その利益分を従業員にもお裾分けできるという、プロフィットシェアリングとしての位置づけであったわけです。ですから、利益が出ていない企業ではボーナスが出るとは従業員も鼻から期待もしないことでした。ボーナスが出たら、それは超ラッキーというのが従業員側の偽らざる感覚でもありました。ですが、この世の中、労働力不足と高インフレ率にあえぐ環境下においてはボーナスは企業の持つ頼みの綱としてより一般化しつつあるのだと申し上げることが出来ます。

とはいいましても、ボーナスの支給は決して全社一律なものではなく、そこには企業の従業員数、そして業界や業種によるところの違いが目立って存在しているのも事実です。従業員数サイズが100名を超える企業のボーナス支給率は、年間給与額の2.7%であるのに対して、100名未満の企業では、それが1.7%と1%の開きがそこにはあります。またIT業界で働く従業員の69%にはボーナス支給があったとされているいっぽうで、観光業や接待業ではそれが22%と、業界や業種によっての隔たりが顕著にあることがわかります。

ボーナスの出し方についても47%の企業がインセンティブボーナスとしての位置づけでボーナス支給を行っているということがわかっています。つまり、ボーナスの支給額自体も全従業員一律的なものではなく、従業員によるパフォーマンスやスキルの違いに結び付けて支給していることが見て取れます。そのような場合には、適正で公正なボーナスを支給するための社内評価軸や制度的なものも当然必要とされますので、それなりに試行錯誤的なプロセスはどうしてもつきまとうということになり、マネジメント側の負荷は決して軽くないことが示唆されます。

今後のボーナス支給の予想やトレンドを占うことはここでは差し控えたいと思いますが、これは景気の動向次第で触れ幅が違ってくることは大いに考えられるところではあります。景気が悪くなれば、ボーナスはカットできますが、前述しましたとおり、アメリカではいったん決めた給与をカットすることは事実上不可能に近いところがありますので、固定費として重くのしかかってくる給与は出来る限りいじらないようにして、ボーナスの支給においてその調整弁的な役割を果たしてもらうというところがますます堅調な動きとして継続するものであろうことは、ほぼ自然の流れなのではないかと察せられる次第です。


記事執筆:酒井 謙吉
This article written by Ken Sakai
President & CEO
Pacific Dreams, Inc.

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