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アメリカから発信! HRMトーク 人事管理ブログ by Ken Sakai

2024年11月26日

HRMトーク 2024年11月号「トランプ政権復活による職場へのインパクト」

今回の大統領選挙では予想以上にトランプ氏への支持層が強く、特に混沌としていた7つの激戦州(スィング・ステート)すべてにおける勝利がトランプ氏の当選を地滑り的なものにしました。アメリカはご存じのように共和党と民主党という二大政党が、ほぼすべての選挙戦で得票数を競い合う展開となり、大統領選をはじめ連邦上下院議員や州議員そして州知事などが選出されます。今回の大統領選のように直前までまったく予断を許さない両党の候補者が大接戦を繰り広げるといった場合(蓋を開けてみると予想以上の大差になりましたが)、州によっては投票した人々の半数近くかそれ以上の票が死票と化してしまうことになります。

とりわけ民主党が基盤である東部地域および西部地域の大都市圏を抱えた、日系企業様も多く進出なされている州(ブルー・ステイト)では、相当な数の人々の票が水泡に帰すという結果になっています。そこでは民主党に投じた人々の落胆する度合いは大きく人々の無気力感や怒り、将来への失望や恐怖、ひいては鬱などメンタル部分への深刻なインパクトが心配されるところとなります。集中力も散漫となり、職場で働く従業員の生産性や仕事の質にも看過できない負の影響が現れてくることも予想されます。これは何もブルーステイトだけの問題ではなく、共和党が支配的なレッドステートの中にありましても何らかの負の影響が出てくることが考えられ、全米の職場で起こりうる懸念材料であると申し上げることが出来ます。

さらに今までの民主党政権では肩身の狭かった共和党およびトランプ支持者の人たちは、過去4年間のうっ憤を晴らすべくして攻撃的な発言や態度がつい出てしまったり、職場での従業員同士での不用意な軋轢(あつれき)が期せずして生じてもおかしくはないでしょう。すでに二大政党制よる深い分断で世の中全体が覆いつくされているアメリカ社会の中にありましては、職場だけが分断とは無関係にそして平穏にやっていけるというのはもはや非現実的であるのかもしれません。

これらの職場での懸念は、日系企業であればおよそ無縁でスルー出来る話というわけにもまいりません。日系企業様にありましても、職場でのメンタルヘルスを含む従業員各自のウェルビーィングへの微妙な変化などについては、ここ少なくとも数ヵ月は社内で十分注視して彼らに寄り添っていく必要があるのではないかと考えます。それらをそのままにして放置しておくのであれば、従業員の度重なる遅刻や早退、会社で決められたシックリーブを超える欠勤日の増加、そして長期無給休暇や退職というシナリオにまでいきつく可能性があることは否めません。

では会社はどのようにして従業員の心の変容に気づきを持ち、従業員に寄り添っていくことが出来るのでしょうか。社内に適切なコーチングや心のケアができる人間が常駐しているわけでもなく、ましてやメンタルヘルスの専門家がどこにいるのかを知っているものでもないというのが、多くの日系企業様が置かれている状況ではないでしょうか。アメリカ企業の事例から申し上げますと、マネジャーが従業員に対して果たす役割がとても大きいということが知られています。ほぼ毎週のように行われているのがマネジャーと従業員とのOne-on-One Meetingです。この1対1におけるミーティングで肝となりますのが、仕事の話や業務内容の質問に終始するだけではなく、家族や家庭、勤務時間外や週末の過ごし方、さらにプライベートな状況までをマネジャーは従業員から話を逐次聞き出そうと努力されます。

プライベートな話を職場でするというのは適切ではないのではないかとお思いの方もきっといらっしゃることでしょう。実は優秀なマネジャーの多くは従業員の会社以外での私生活についても関心を示して、出来るだけ話をしてもらい、それに対して真摯に耳を傾けているものです。日本人のマネジャーがそこまでできるのか、あるいは果たしてそこまでする必要があるのかとお考えになることもまた理解できます。しかし、そこまで入り込んでいくことによって、初めて従業員に寄り添うことが出来るのではないかと思われます。“One-on-One Meeting”で従業員とどんな話をしたらよいのか、途方に暮れてしまうよりはまずはご家族や勤務時間外での過ごし方などについて質問を投げてみてください。

もしどうしてもOne-on-One Meetingが上手く出来ない、何から話をしてよいのか見当もつかない、いった場合には外部からのサポートを躊躇せずにお受けしてみてください。確かに暗闇の中を手探り状態でトライアンドエラーするよりも、ご自身の勉強およびトレーニングの位置づけだとお考えになって、プロの外部コンサルタントやコーチなど第三者からのサポートをお受けになってみられることをお薦めしたいと思います。すべてをご自身だけでやらなければならないというわけではありません。今後の4年間は残念ながらそのような職場状況に迫られる段階が格段に増えてくる、そんな不穏な予感がいたします。特に皆様の職場で働く女性スタッフや就労ビザで働いている外国出身者への心のケアが喫緊の課題ではないかと察せられる次第です。

Ken Sakai

President & CEO

Pacific Dreams, Inc.

kenfsakai@pacificdreams.org


記事執筆:酒井 謙吉
This article written by Ken Sakai
President & CEO
Pacific Dreams, Inc.

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